225『魔力が見えない人にとって、幹太が叫んだ後の光景は───』
「で?
我らに頼る所の大きい手段とは?」
「ペリオラ傭兵団団員を探した魔法・・アレは『ペリオラさん』から『ペリオラ傭兵団』へと伸びかけていた『パス』に俺の魔力を付与。
魔力を無差別広範囲に伸ばして反応があった人間にパスを繋げました」
「カンタ先生、ソレって───
トンでもナイ量のパスを、誰彼構わず繋げまくったって事?」
「んー?
そうとも言えるか」
ペリオラさんとペリオラ傭兵団、だから、誰彼構わずではないけど。
やろうと思えばヤレる。
何ヤラ小声でブツクサ言う女生徒達。
颯太や源太ちゃん程じゃなくとも、ソレなりに良くなった耳に「 ・・ナンパ・・使え・・ 」とか聞こえた気がするけど、たぶん気のせい。
今、この国の善人男ほぼ全てが【人土村】にいるハズだから後で合コンをセッティングして上げるよ。
「さっき、皆さんが戦って貰っている間に彼女達を治療していた時・・俺を通った『仲間の想い』が洗脳魔法を削りとっていました」
「仲間の想い・・」
【人土の巫女化】の究極能力は無差別に他人の魂を食う。
まあ、普通に死神みたいな能力だな。
今回は弱い【巫女化】により、魂では無く魔力とパスを集めてイッキに洗脳魔法を食う。
「【空の口】と共に戦う仲間を助けたい・・と、想えばソレでいいのか?」
「ええ」
俺が静かに、然れど力強く魔力を上げてゆくと皆も瞑目してゆく。
左隣には颯太と父さん。
俺の魔力を律する目を持つ二人。
右隣には彩佳と源太ちゃん。
今、【人土村】の警備は広域時空震探査関係といった機械以外は、『他人を想う』といった事の出来ない彩佳のクワガタや【人茸】部隊に任せてある。
源太ちゃんは、【人茸】では対応出来無さそうな時、彩佳から報告を受けて向かう役。
『貴様等ァァ・・!
出せェェ、魔女に従わぬ愚か者共ォォォォ!』
「・・・・」
【人土村】の広場全体に魔力を拡げてゆく。
俺を、彼女達を助けてくれ。
俺が、彼女達が助けるから。
魔力の動きは感情の動き。
悪しき想いを乗せたなら魔力汚染を起こすレベルの濃い魔力で皆を包む。
【人土】達は涙を流し。
女生徒達は歯をくいしばり。
ペリオラさんは・・破顔し、「 うひひっ 」と笑い。
皆の、彼女達へ生え始めたパスを捕まえ収束させつつ徐々に【スライム細胞】を増やしてゆく。
一度は制御したレベルまでは問題無い。
意識を保ったまま、颯太と顔を見合わせ頷きあう。
「父さん」
「ああ、しっかり見ているからな。
幹太は幹太のままだ」
「うん。
───いくぞっ!」
束ねたパスを一振の剣に見立てて彼女達へ、彼女達と【空の口】を繋ぐパスへ、振り下ろす!
「【空の口】、お前なんかに俺の仲間をヤるかあああぁぁぁぁっ!!!」
洗脳魔法に俺達の収束したパスが食い込んだ瞬間、『魔法』から『魔力』が流れ出る。
全力で魔力吸収。
前回はたった一人の魔法から魔力吸収しても、ダムの水を注射器で吸う感触しかなかったけど・・コレなら!
『あっ!? ああっ!? ひゃああっ!?
な・・中で暴れひぇるううう・・!?』
始めて女学園に行った時、ザレに魔力吸収をしたのと同じ感覚だ。
俺もムズムズするけど・・無視!
「千ぃ切れぇぇろおおぉぉぉぉっ!!!」
≪──バツンッッ!──≫
・・手の中の弾ける感触。
完全洗脳を受けた彼女達を操る『操り糸』が切れたかの如く、崩れ落ちる。
見れば・・彼女達と【空の口】を繋ぐ洗脳魔法は、無い。
・・良かった。
「み・・みんな・・!
みんなのお陰で成功し───あれ?」
・・なんだ?
みんな・・前屈みになったりして息が荒い。
特にジキアなんか様子がおかしい!?
・・しかも全員、俺と目が合うと反らしてくる。
そ、颯太は・・良かった。
颯太は平然として、皆の異変に首をかしげていた。
父さんは・・前屈みではないけど目を反らす。
彩佳は・・彩佳の方を向くと、いきなりシバかれた。
・・なんなん!??
◆◆◆
「え・・えっと───
魔物の森で、空から声がしたかと思ったら学園長やカンタ先生達が光に溶けて・・パニクっていたら【空の口】が偉大に思えてきて」
洗脳が解けた女生徒達は全て即座に【人土】の病院に搬送され。
あらゆる検査を受けさせる。
途中で目覚めた女生徒達には他の女生徒達が事情説明。
( MRIとか真っ先にヤらせたいけど、途中で目覚めて一番ビビる検査だろうからコレは後で。)
現状、異変のある娘は一人も居ない。
・・俺も含めて。
体内の【スライム細胞】を増やすとか、【空の口】の大魔法の魔力を吸収したとか・・「 どうか治療を受けてくれ 」と【人土】に土下座された。




