221『悪ノリした人に、地球大王のタスキをかけられる所でした。』
「空が地が・・炎で一杯に・・!?」
「コレでもなあ・・炎量は少ないんだけどな。
せめて溶岩地帯とかならともかく・・石油コンビーナートなみの燃料が無いと魔力の大半を『増燃』に使っちゃうよ」
そんぐらい、『無』から『有《ほのお等》』を産むのは魔力を使う。
ジキアやザレが主に土魔法や風魔法を好んで使うのは材料がいくらでも在るから。
( 燃料を加熱させる一工程が必要無くて楽、というのもある。)
ただ・・俺がこのレベルの風魔法を使えば、【人土村】全てを真空にするぐらいの空気が必要になる。
土魔法だと生態系を狂わせうる程度には地形を変える。
ので、俺は大魔力さえあれば補填出来る炎魔法を好んで使う。
「だから今回は余った魔力を『炎量増加』より『追尾』に付属する新機能を付けてみた」
「あ、余った・・スか。
この威力で・・」
日本から再再転移した際、源太ちゃん達と離れすぎて魔力パスが正常に働かなくなった。
アレを組み込んである。
今までの大小自動追尾型魔法は、大火球が無造作に小火球を産みだし小火球は無造作に結ばれたパスへと飛んでいった。
今回のは岩場上空で浮遊しているだけの大火球が幾つかあり、岩場の穴から【ソニックラビット】が出てきて近づいた瞬間に小火球を産むようしてある。
「うわぁ~・・す、凄いッスね~・・」
「・・ピーマン食った時の顔してるぞ」
まあ・・自分で見て、かなりエゲツナイ魔法になった。
比較的、想像通りの魔法になった結果・・( 敵にとって ) 絶望的な風景が広がっている。
地形や木々茂み等をほぼ破壊せず、全滅させていった。
「【ソニックラビット】は『破級外』だから使える魔法だな。
『村破級』になると今まで通りの運用の方が良いかも」
「我等もだいぶ、廃油などから高燃性の油を精製する魔法の腕を上げたのですが」
「必要最低限の油 ( 手足の樹脂油水筒に入れて歩ける量 ) は必要ですけど・・まずは【人土村】を動かす事に優先して下さい」
「「「はいっ!
【巫女】様の御心のままに!」」」
魔物が襲来するたんびに、【人土村】の全燃料を消費する訳にもいかないからな。
「【空の口】の手勢はまだまだ・・こんなにも居るッスからね」
「たぶんアレ・・異世界 ( 地球 ) 侵攻用に集められていた魔物じゃないかな?」
「なるほど、あの魔物達が【歪み】から日本等へ転移していた魔物だった可能性は有りますな・・。
という事は───」
もし、アレが異世界侵攻用なら。
『切り札をきった』んじゃ無くて『残すべき奥の手を捨てた』に近い。
【空の口】の真の目標である『異世界侵攻』が止まった事になるから。
「逆に言えば・・もしあの時、コッチへ来ないと決めていたら───」
「魔法が満足に使えない、戦う許可が下りない、仲間の助けが無い、そんな状況でアレと戦わされていたんだなあ・・」
【アジ・タハーカ】の被害があってなお、俺達が【アジ・タハーカ】を倒した事を攻められた。
自衛隊は俺達に好意的だったけど、上の政治家とかは微妙だった。
( 政治利用だな。)
おそらく・・長い時間の後、かなり被害が出てやっと俺達の活動が認められたんじゃないかな?
( しかもその間、監禁・魔法の秘密を得る為のアレコレはあるはず。)
「日本って良い国っぽいッスけど?
人も良いし便利な道具もあるッス」
「生態系・食物連鎖の頂点が人間だと信じて疑わないからな。
自分の手足が魔物に食われてんのに『悪い夢だ』とか言いだすんだよ」
「戦うチカラも便利な道具で、ですからね。
自分が持ち得ない魔法を認める頃には・・我等が居なければ国を維持出来無い───あれ?」
「それ、良くないか?」
「ああ、【人土】でも無い連中が全て【巫女】様の偉大さを理解する世界だろ?」
「【空の口】特番の放送時、苦情を言ってくる連中を何度○○○してやろうかと・・!」
あの時、こうなるのは分かっていたから【人土】の皆には動くなって言ってたんだよ。
目付きが妖しくなってきた【人土】の皆に引き、ジキアに謝ろうとすると。
「傭兵の理屈から言っても、仲間を売る奴は最低のクソッス!
見せしめに、死より苦しい拷問すら有りッスよ!」
「「「そうだそうだ!」」」
うーん、取敢ず今は有りじゃない。




