220『" 死に台詞 " の概念を異文化の人には説明しようが有りません。』
この『線』を斬る作業はなんと喩えれば良いのか・・。
ヌルヌルした鰻を、物差しで捌く感じ・・かなあ?
「でも・・彼女達の『ヌルヌル』がどんどん取れていってる」
─・・彼女・のヌルヌ・・幹・・!?─
─・彩・姉ち・・そうい・喩え・・─
だいぶ周囲の声が聞こえづらくなってきた。
【巫女化】の、『自分だけの世界』と『ソレ以外』に別たれる感じか。
日本で【巫女化】により彩佳達を食ってしまった時は『青い世界』に居たらしいけど・・そういうんじゃ無い。
今までは『青い世界』の最奥まで一瞬で突入していた。
今は一歩ずつノロノロ歩き、『入口』の前に立っているっぽい。
「で、『彼女達のヌルヌル』が取れている感じは・・女生徒達か?」
『彼女達と女生徒達』のパスが
『彼女達と【空の口】』とのパスを僅かとは言え、脆くしているようだ。
「でも皆のパスが安定していないな・・」
どうも戦っているらしい。
颯太と彩佳とジキアとのパスは・・激しいモノじゃないけど焦っている。
魔物の襲来か?
源太ちゃんもまだ軽いけど・・焦りを感じる。
くっ・・。
俺のチカラが足りないばかりに───
「・・・クソっ!」
『ガッハッハッ!
御姉チャンから、ンな台詞を久々に聞いたな』
「───え?」
その笑い方・・!
「ディッポ団長っ!?
死んだんですかっ!?」
「殺すなっ、バカ野郎!?
まったく・・。
応援に来てやったらイキナリ殺すとか、どういう神経してやがんだ?」
「お・・応援?」
───夢?
そこには、パッと見60代のジイサンが・・ディッポ団長が立っていた。
世界は・・・・あー、青いなあ・・。
【巫女化】した訳じゃ無いけど、魂の世界に一歩だけ入り込んだようだな。
「バーカ、泣くヤツが居るか」
「だって・・だって俺のチカラが足りないせいで皆を助けられなくて・・!」
「・・ハッ? チカラが足りない?
今まで御姉チャン一人で出来た事って、なんか有ったのか?」
俺一人で・・?
・・そうだ。
犬ゴリラから救ってくれたのは、傭兵としての生き方を教えてくれたのは、ディッポファミリー傭兵団が。
【銀星王国】で過ごせるようしてくれたのは、様々な生活支援をしてくれたのは、所属傭兵団と【北の村】の人達が。
この国の闇を身を持って教えてくれたのは、女学園の皆が。
ビタが、木嶋さんが、奈々が、理太郎君が、自衛隊が、TVクルーが、【人土】が、【人花】が、 ( 一応 )【人狼】が・・。
・・もっと前からは、颯太が、源太ちゃんが、父さんが、母さんが、彩佳が、助けてくれなきゃ生きてゆけなかった。
「『助けてくれなきゃ生きてゆけなかった』じゃ無ぇよ」
「えっ?」
「『俺のチカラが足りないせいで皆を助けられない』?
・・なら、皆のチカラを借りンだよ」
「・・・・」
「『助けてくれなきゃ生きてゆけなかった』んじゃ無くて、皆が御姉チャンを助けたいって思ったンだ」
女生徒達の『彼女達を俺を助けたい』という想い・・心の動きが、俺を通して完全洗脳された彼女達の悪意ある『【空の口】の魔法』を削り取っている。
魔法の極意は想像力。
想像力の強さは想いの強さ。
「そう・・なんですかね?」
「・・最後に会ったときゃあ───
伝承よか遥かに弱い【ファフニール】を、皆で協力して倒してやっとこさ倒したンだろ?」
「済みません。
この間【アジ・タハーカ】を喰ったら【フレズベルグ】を一撃で仕留めるぐらいになっちゃいました」
「そーゆーこっちゃ無え」
痛てっ。
・・あー、日本だと問題在りそうなこの拳骨・・ディッポ団長だなあ。
「・・今のセリフ───
ツッ込み所しか無ぇが・・」
ディッポ団長が腰に手を当てる。
笑う時の・・クセ。
「ガッハッハッ!
まあ、御姉チャンらしくて良い。
───そんだけ強けれりゃアみんなから助けを得られる筈だゼ」
「はい」
「助け、助けられて。
その礼にまた助け、助けられてりゃア良いンだ。
御姉チャンには人と人を繋ぐ、『縁』みたいなんがあるンだからな」
「はいっ!」
人と人を繋ぐ『縁』・・。
・・うん。
助けられる事には自信がある。
助ける事に躊躇いはない。
・・なんだ、簡単な事だ。
「行ってきます」
の、前に───
「・・もう一回聞きますけど、ホントに死んで無いんですよねっ!?
なんか死亡フラグ一杯立てまくっていますけど大丈夫なんですよねっ!?」
「もはや、よっぽど死んでて欲しいようにしか聞こえンぞ。
大丈夫だからサッサと行ってこい」
「はいっ!」
助け、助けられに。
◆◆◆
「【アローバード】、右から10!
左から・・30っ!?」
「さ・・流石にそろそろヤバいッス」
「彩佳姉ちゃん・・!
幹太姉ちゃんはまだかな・・!?」
「暫く前から全く変化が無───」
『全力・防壁魔法っ!!!』
「わあっ!?
ビックリしたぁっ!??」
「か───」
「幹太姉ちゃん!」
「カンタさん!」
「カンタ先生!」
「【巫女】様!」
「済まん、待たせた!」
やっぱ、戦闘中だったみたいだな。
確認もせず、防壁魔法を仲間達に ( 建物とかは破壊しないよう ) 付けたけど・・正解だった。
「あっ・・アンタねえ・・!?
戻る時は、合図ぐらい出しなさいよ!」
「せ、戦闘中っぽかったから」
周囲には女生徒達の剣で、ジキアの魔法で、彩佳のクワガタで、殺った・・【アローバード】か?
鳥の魔物が大量に倒されていた。
「カンタ先生、彼女達は・・?」
「まだだ。
方法が間違っていた」
「方法?」
「君達の想いが【空の口】のパスを削っていたんだ」
「「「・・・・・・」」」
青い世界で【人土】の皆や颯太や彩佳達と会話した。
同じ種族だから。
喰う・喰われた関係だから。
・・ソレだけじゃ無い。
魔法を喰う・・ってのは───俺の中に纏めるとも言える・・はず。
同じ場所に、集まれたんだ。
皆の想いも、集められる。
ソレを想像するから制御って言うんだ。
「【巫女化】を制御するんなら───
見境無い俺がヤった『一人で魔法を喰う』方法をマネるんじゃなく。
『皆の想いの一体化』をマネるべきだったんだ」
「皆の・・想い・・」
「取敢ず魔物から彼女達を、君達を。
皆を助ける!」
「・・・・はいっ!」
女生徒達も、皆を戦わせてまで洗脳された彼女達を優先する事を心苦しがっていたっぽいな。
「俺達がココを離れても、魔物はまだ同属である彼女達は襲わない。
ネットは少々傷むのは覚悟して、破壊される前に魔物を全滅させる」
「分かりました」
「彩佳、戦況は?」
「今は足の早い魔物が第一波として攻め込んで来てるわ。
皆のお陰で総数は減ったけど・・北、岩場側と南、河側は魔物が優勢みたいね」
岩場は小さな隙間にも潜りこめる【ソニックラビット】が。
河は空を飛べる【アローバード】が有利か。
とは言っても、渡河するまで手が出せないってだけで河側は時間はかかっても危険は薄いはず。
「颯太とみんなは河側の援軍に行ってくれるか?」
「分かった!
幹太姉ちゃんは?」
「岩場なんて【ソニックラビット】は不意打ちし放題だからな。
ソコで戦っている皆を遠ざけて下さい」
岩場は、水辺では本領発揮出来無い【人花】を中心に戦っていた。
ビタに連絡 ( 一カ月日本に居たビタと比べても姉ピヒタは機械が苦手らしい。) して、別の方角へ。
「幹太!」
「父さん!」
俺が【巫女化】訓練を終えた事を、パスで感じとったらしいな。
「御前達が、源太ちゃんさんが戦っているのに私は・・せめて生活の場は守るからな」
「ああ。
【ソニックラビット】の肉なんかはクセが無くて・・寧ろ日本人のクチに合うと思うんだ」
「分かった。
準備をして皆の帰りを待っている」
皆と別れ、【人土】の運転する車で岩場へ。
◆◆◆
「えっ?
団長と会ったッスか?」
魔力が枯渇仕掛かっていたジキアは俺のバックアップに回りたいとの事。
数人の【人土】 ( 日本から共に転移してきた人達。) と共に行動する。
「もう、何時
『腹いっぱいだ』とか『生涯に悔いなし』とか言い始めるかヒヤヒヤだったよ」
「はあ?
( また『お約束』って奴ッスかね? )」
「行くぞ・・!
全力・大小自動追尾型魔法!
威力押さえめ、弾数増加バージョン!」
「なっ・・!??」
数万発の火球・・避けられるモンなら避けてみろ・・!




