217『動物園の檻と、その周りを囲む柵のイメージです。』
「た・・体内の【スライム細胞】に食われいる部分の自己再生魔法を───弱める!?
そ・・そんな危険な事、オレに黙って・・」
「ソレより無茶な事をしようとしたの、ダーレだ?」
「うっ・・」
ジキアは、田坂とのクチ喧嘩に逆上して【スライム】に突っ込もうとした。
アレはホントにヤバかった。
「冷静な今なら、アレは唯の自殺行為だった・・って分かっているんだろ?」
「・・はい」
「ホントはアレ・・俺、ブン殴りたいぐらい怒っているんだからな?」
「・・す、済みませんッス」
『好きな女が暫く離れていたら、知らない男を連れて帰ってきた』
『しかも自分には無い絶対的な絆を見せつけられた』
───そんな風にジキアの目には写ったんだろうけど。
「田坂とは何も無いよ。
・・ガチのマジで」
「そ・・そッスか」
俺が田坂を本気でキモがっている様子は魔法使いの目で分かってくれる筈。
( 生胸を見られた事は・・まあジキアにも見られているんだし、ワザに言わなくてもイイだろう。)
「兎に角、冷静じゃなかったジキアには訓練の事は言えなかったんだ」
「冷静じゃなかった云々は認めるッスけど・・【巫女化】訓練が危険なことには違いないッスよ!」
「その辺は・・まあ、颯太と彩佳がペースメーカーになってくれるからな」
0.1%ずつ自己再生魔法を弱めていくタイミングは、僅かでもズレたら颯太が忠告してくれる。
弱めた自己再生魔法を留める瞬間は、俺自身が気づけない俺の異変を彩佳が察知してくれる。
「・・ふんっ!
その影響が『エロくなる』なんてねっ!?」
「んぅ・・ちょっと幹太姉ちゃんが【スライム】っぽくなるだけだよう」
うう・・。
さっき程じゃないけど、まだ怒っているなあ・・。
野性の肉食生物なんて、基本的に『如何に補食するか』ばかり考えている。
そして【スライム】の『食事』と『繁殖』は、ほぼ同一だ。
なので、どうしても俺の意思で【巫女化】を引き出そうとすると・・その、エロくなる。
「・・ま、まあ徐々に慣れてゆくさ」
「どうするんスか?」
ジキアを追って、完全洗脳されたディッポファミリー傭兵団戦闘部隊が俺達の居る魔物の森へ攻めこんできた時───尊敬する人達が操られる怒りに・・俺達は【巫女化】した。
その時は、5人の洗脳魔法を数十秒で吸い尽くした・・らしい。
「純粋にあの時の4%のチカラが出せる訳じゃない ( たぶん、本来のチカラが発揮出来るのはある程度纏まってなきゃイケないと思う。) けど、今なら『魔法化』した魔力を、極僅かながら吸収出来るハズだ」
「ソレって・・」
「ココからは実践練習をしようと思う」
◆◆◆
【人土村】にて意識のある女生徒達と合流し、共に完全洗脳された女生徒の下へ。
「貴様等ァァァ!
魔女を裏切っておいてェェェェ!」
「魔女は味方じゃないっ!
みんなは騙されているのよ!?」
「出ァせェェ!
我等こそ真の魔女の戦乙女なりィィィィ!」
彼女達を閉じ込める魔物の檻。
その外側、彼女達の手の届かない位置にとび職の人達などが使う足場とネットを組んである。
その足場やネットに【モスマン】の繭、【人花】の花、彩佳の菌糸の『三重結界』とでも言うべき物を張ってはいるんだけど・・規模が規模だけに、約10人分ぐらいのスペースしか無い。
つまり、大人しく【変換機】と治療室で治療を受けてくれる『自失者』や『忘れた者』以外の『完全洗脳者』が唯一治療出来るのはココだけ。
治療を受けているのは女学園の女生徒だけ、だ。
「みんな・・行くよ」
「・・お願い、カンタ先生」
足場に作った唯一の扉から中へ入る。
「出ァァせェェェ!」
「・・・・・・っ」
「幹太、自己再生魔法を弱めるペースが早いわ」
「ディッポファミリー傭兵団が攻めてきた時の事を思い出しているんだろうけど・・僕達が付いているからね!」
「・・・・。
・・ん、二人共ありがと。
落ちついたよ」
【空の口】め・・。
彼女達はオマエの物じゃない・・!
・・みんなと彼女達自身の物だ!!
「こ・・こぉぉぉぉ・・!?」
「き・・効いているんスか?」
「うん、極僅かだけど・・悪いパスが千切れていってる・・!」




