215『高校での幹太の評価は教師受けはソコソコ良いモノの、生徒には少数『実は不良では?』と思われていました。』
モジモジするジキアを離す。
名残惜しそうにすんな。
・・一応。
「後で落ち着いた辺りで話そうか」
「・・はっ、はい。
迷惑かけて済みませんでしたッス!」
取敢ず【スライム】には山柄さんが「 良し 」と言うまでソコソコ高濃度の魔力を送る。
満足し、動きが鈍くなってもなお送り続けると・・死んだ訳でもないのにウンともスンとも動かなくなった。
「研究班、急いで『B』ゲージへ。
株分けした『a』と『a´』との比較検証を忘れずにね!?」
株分け・・もう、ある程度の増量は済んでいたんだな。
だけどアレの数倍量でも【人土】全体に行き渡らせるには全然足りない。
「幹太さん、有難うね。
取敢ず今回の頼み事は終わりだよ」
「はい。
また何時でも・・は、ムリでも遠慮せず連絡して下さい」
「助かるよ」
山柄さん達と別れ、施設をでる。
部屋を出る時、何故か田坂がジキアを「 フフン 」と鼻で笑っていたけど・・あの一連の流れを見て『ジキアが俺に怒られた』とでも思ったのか?
・・ま、イイや。 放っとこ。
( 暴走した事に対しては・・まあハズレては無いし。)
施設を出た後、急にジキアが
「あっ!?
オジさん達に用事を頼まれてたッス!
失礼するッス」
「そっか、分かった。
じゃあまた後で」
───と、言い残し去ろうとする。
・・俺は出来る女だ。
だからこの後、ジキアが賢者になる事を察しても気づかないフリが出来る。
( 【人土】の御先祖様、変な所で名前を使って済みません。)
「ジキアさん、なんで『ヒョコヒョコ』歩いてるの?
さっき僕、変な風にひねっちゃった?」
「「だ、大丈夫 ( ッス ) !」」
ジキアがディッポファミリー傭兵団に宛がわれた部屋へ。
◆◆◆
「・・ふん。
で?
何を見つけたの?」
「うぇっ!?」
「バレて無いとでも思った?」
うー・・。
「・・まあ良いか。
同じ【巫女】である颯太と、いろんなアドバイスが貰える彩佳にだけは言うつもりだったし」
「だけ・・って、オジさんや源太ちゃんにも言わないの!?」
彩佳が、かなりたじろぐ。
俺が家族を頼らないなんて・・異常事態に近いからな。
「危険・・なの?」
「ああ。
ヒントはさっきのジキアの───
【人土】と俺達以外の人間が【スライム】に触ると食い尽くされる、って話だ」
「幹太姉ちゃんと僕以外?」
「アンタ達ってことは・・女体化、な訳無いしチートよね?
チート魔力・・。
チート攻撃力・・。
チート防御力・・。
チート回復・・力───ま、まさかアンタ!?」
頷く俺。
何故、俺と颯太が【スライム】に食い尽くされないのか。
可能性として一番高いのは俺達の『自己再生魔法』と『【スライム細胞】の増殖』が、釣り合っているから・・だろう。
そのバランスをわざと崩したら?
「たぶん、体内の【スライム細胞】を増やしたら・・【巫女化】を制御出来る」
「───・・っ!
・・だっ、ダメよ!?
ソレって少しでもタイミングがズレたら」
今の俺の【スライム細胞】は全身に散っている。
全身の【スライム細胞】が一気に増殖したら・・最悪、【スライム】になる。
「自己再生魔法の強弱で【スライム細胞】の量を操る。
・・山柄さん達には悪いけど。
たぶん俺は世界で唯一、本当の意味での【人土】なんだ」
伝承にある『魔王の粘土』と『賢者』が戦いの末に、混ざり生まれた【スライム】。
その【スライム】からある日這い出てきた人間。
最初の【人土】。
恐らくは、だけど・・その【人土】と同じチカラがある筈。
「でも・・」
「『スペ○ウム光線はいきなり撃て!』だよ。
【空の口】相手に切り札はいらない。
地力を上げなきゃ」
言わんとする事は分かるけど・・って顔の彩佳。
困惑、悲哀、理解、否定、いろんなモノが雑ざった顔だ。
「そ・・颯太!
アンタはどうなのよ!?
こんな危険な・・事!」
「んぅー・・。
・・僕達は傭兵だからねぇ。
イザとなったら逃げるけど・・敵を倒してお金貰うし、そのための努力は当たり前かなぁ?」
「───・・」
彩佳が絶句し・・・・・・首を『カクン』と下げる。
「・・・・。
・・はあ。
アンタ達が戦闘民族の子孫だって忘れてたわ」
「戦闘民族て」
「颯太だけじゃなく、幹太だって子供の頃から結構好戦的よね。
自分で気づいてないだろうけど」
「ええぇ?
俺、ケンカとかした事ないけど・・?」
幸い、ケンカしたくなるような『敵』が周りに居なかった。
だからコッチに来るまで『敵意』や『戦意』といった物とは無縁だったな。
「子供の頃のアンタは───
一見ノホホンとしてるけど・・アタシや颯太がイジメられてると、今みたいなチートが無いのに立ちはだかってたわよ」
「でもケンカにならなかったじゃん」
「アンタが『ケンカをしようとしなかったから』よ。
相手が生意気なアンタと『ケンカをしようと』『拳を握った』ら、アンタは『目突き』の準備を初めたのよ」
「そ、そうだっけ?」
「再構成されて0歳児の肉体になって。
『敵』にはゾッとするぐらい残酷になったけど・・再構成する為の全ての材料はアンタで出来てるって思い出したわ」
まあ家族や仲間以外に優しくする理由なんて無いしなあ。
「・・分かったわ。
アタシだって再構成されているんだし。
でも、絶対に無茶はダメよ?
【空の口】が何時きても良いように早くモノにしようとか許さないんだから!」
「分かった分かった」
俺だって生き残るために【巫女化】を制御しようとしているんだ。
自殺行為なんてする気はない。
◆◆◆
取敢ず最初は1%だけ自己再生魔法を弱めようとして───
『0.1%からよ!』
と、彩佳に怒られる。
・・で、やってみて分かったが彩佳が正解。
いきなり、ちょいグラッときた。
今までも自己再生魔法分の魔力を攻撃魔力に回した事はあったけど、アレは飽くまで腕用だけで・・無意識に、【スライム細胞】への魔力は残していたっぽい。
慣れて今では1%でも平気だけど、いきなりやっていたら気絶していたかもしれん。
「どう?」
「なんか魔力に色が付いて見える。
あと流れ? が先読み出来る・・っていうか?
なんとなく、だけど」
「もし、魔力の流れの最終地点が魔法なら・・今は出来無い『魔法を吸収』出来るのかもね」
「なるほど」
俺の直感を言語化してくれるのは助かるなあ。
制御で言えば───
【巫女化】する直前の・・あの自分が本能に飲まれる感じがしない。
本能は強くなっているけど、ソレに『飲まれる』のでは無く『飲んでる』感じか・・。




