214『後の世で『偉大なる設計士』『トイレの父』と呼ばれる男の最初の仕事。』
「あのトイレ・・【ケルピー】の居る湖畔にも幾つか建ててくれましたよね・・」
「ハハ・・捕縛用としては緊張感が無さすぎるって怒られたけどね」
完全洗脳者を捕まえているアレは『外側だけ』でトイレの機能はない。
( 所謂、便槽がない。
臭わないように後で作るけど。)
けど、皆と自分の為に作ったトイレはかなりガチで作ったなあ。
「 水源豊かな湖の水を使えないか 」と日本式の下水道を説明したら、リャター夫人がどっかの職人に図面を引かせたっけ。
図面の見方なんて分からないから、「 3m掘って~ 」「 ソコは15度角度をつけて~ 」とリャター夫人の操り人形になったお陰で、彼処のトイレだけ異様に使いやすい。
( 土魔法があれば下水道工事は片手間作業だし。)
「あっはは♡ そうそう!
トイレ一つにとんでもない大魔法をバンバン使って・・ソレを横目に呆れてたら、納得の使い心地で───
・・あの頃が一番楽しかったなあ」
女生徒達のソレより前の人生は───
男尊女卑に心を閉ざすか、復讐心を燃やすかの二択だった。
『対、村破級』『対、街破級』の称号を手に入れて・・やっとコレから───って時にこの騒動だからなあ。
「【空の口】・・ヤッてやるさ。
俺は、俺の家族や仲間や恩人を害した奴を許すつもりはない」
「あー・・魔法使いで無くても分かる気持ちのイイ魔力───カンタ先生らしいですね・・そりゃザレが惚れる訳だわ」
ソレとコレは関係無い気がするけど。
彩佳が何を察したのか、急に俺を引っ張る。
「幹太だけに頼っちゃ駄目よ?
男尊女卑野郎も【空の口】も・・アタシ達『全ての民』の敵なんだからね!?」
「・・そうですね。
大丈夫、ですよ?」
「まったく・・」
「???
何の話だ?」
「アタシも前線で戦うチカラが無いんだったら、せめてキノコ作りは頑張っていかなきゃ・・って話よ」
「???」
今までも俺達の活動を見ながら、作っていたじゃん?
・・って時に、腰の無線機に反応。
山柄さんからだ。
〔幹太さん、今イイかい?
【スライム】の事で・・ちょっと来て欲しいんだよ〕
「【スライム】ですか?
分かりました、今からソッチに行きます」
◆◆◆
んで、魔物の研究に使っている施設。
・・の、奥の奥。
厳重な管理の元に【スライム】を研究している場所にきた。
( 管理レベルがココより一段低いのが【アジ・タハーカ】や、ほんの僅か残っていた【フレズベルグ】等『街破級』を研究する所。)
「世界中のウィルスとかを研究する機関で、エイズがレベル3だった・・とかって話を思い出すわ」
「危険度がどう、っつうより【人土】としての優先順位なのかな」
俺の権限で女生徒達も入れるけど、場違い感が凄いから・・という理由で彼女達は他の女生徒達の様子を見に行った。
俺、颯太、彩佳、ジキア、ビタ、で先に進む。
( ちなみにピヒタ達【人花】とは、暫く前に野菜や薬草作りがあるからと別れている。)
「来たね」
「何か問題でも?」
「・・むっ!?
貴様、何者だっ!?」
「一目見て分かるッス!
貴方は・・『敵』ッスね!?」
【人土】の研究員と・・山柄さんを含めた代表の8人のウチの何人かが『如何にも』といった雰囲気の場所で待っていた。
居ないのは───
効率良く洗脳を治療する【変換機】を作っている【変換機】開発部門の部長。
【空の口】や【魔力体】に魔物と完全洗脳者などの接近を魔力的に監視するシステムを作っている、広域時空震探査開発部門の部長、の二人だな。
「問題って程じゃあ無いんだけどね。
【スライム】って、エサは『新鮮な肉』と『魔力』じゃないか。
肉の方は特殊保存してた魔物肉でまかなってるんだけど・・」
「食品加工工場も残ってたんですよね」
「伝統ある田坂家の華麗なる魔法を見るが良い!」
「最強の8人って言っても、普通の魔法使いレベルって聞いたッス!」
ついつい【人土】=『魔法・魔力関連』のみの企業・・って想像しがちだけど───山柄さんの中華料理屋然り、路さんのイタリアンレストラン然り、飲食事業も多く手掛けている。
女体化前、よく食ってた商品が【人土村】製品だったと知った時は驚いたなあ。
「魔力もワタシ等でチマチマやってたんだけど・・【空の口】が何時攻めてくるか考えたら、幹太さんにサパッとやってもらった方が良いだろうと・・。
忙しい中、悪いけど頼むよ」
「分かりました。
・・けどこの量の【スライム】にちょうど良い魔力量って?」
「ソレは日本に居た頃の話さ!
今のボクはスゥゥーパァァーな魔力を持っているのさ!」
「オレだって修業して実力は上げてるッス!」
・・・・・・。
中学一年生に張り合うオッサンと、田坂なんかに張り合うジキア。
君らちょっとうるさい。
「そういやあの二人・・俺の生胸見て欲情した二人だなあ」
「バカ二人じゃん」
「元・遊び人のワタシが保障するよ。
たいがいの男なんてそんなモンさ」
元・男して耳が痛ぁい。
「ボクと彼女は同じ【人土】!
余所者の介在余地など無い!」
オマエとパスは繋げて無いんだし、どっちかと言えばオマエの方が余所者だけどな。
「・・・・ぐっ!
ならオレもカンタさんと同じ方法で【人土】に為るッス!!」
突然【スライム】入り容器へダッシュする・・ジキア!?
えっ、ちょ・・待っ───
「ジキアさん、駄目だよ」
颯太が一瞬でジキアに追いつき、組みふせる。
完全に警察が犯人確保した時の体勢だけど、今のジキアは頭に血がのぼっているっぽいし丁度良いか。
「はいはいジキア。
俺が望むのはそんなんじゃないって分かるだろ?」
止めてくれた颯太に礼を言い、ジキアを優しく抱き上げる。
ちょっとだけ、胸の位置を調整しながら。
彩佳が一瞬睨んだ後・・仕方ない、とタメ息をつく。
( その分ジキアが引く程睨まれていたけど。)
「・・はいッス」
「まったく・・ヒヤヒヤしたよ。
・・たぶん、生まれつきの【人土】じゃない人間が真似ても幹太さん以外一瞬で【スライム】に食い尽くされるだけ───ってデータが録れるだけさ」
「・・そうなんスか。
まあだからこそ『村破級』なんスよね」
「俺はジキアの頑張りを知って───ん?」
「な・・なんスか?
まだ怒ってるッスか!?」
「い、いいや。
気のせいだ」
───うん、まだ言えない。
とても難しすぎるから。
・・でも・・もし・・上手くいったなら。
【巫女化】を制御出来る。




