211『後に、一日200食限定【幹太定食】が即完売しています。』
〔御姉様っ!?
本当に御姉様なのですのねっ!?〕
「ああ」
〔こちらの世界を・・ワタクシを選らんで───〕
「当然、アタシも居るわよ♡」
〔・・・ハァ。
でしょうね、アヤカ〕
最大の問題である洗脳は、どうにかなる部分と、どうにもならない部分が出てきたので一旦保留。
リャター商会に、ザレとリャター夫人と残りの女生徒達が居るとの事。
しかも無線機が使える状態らしいので連絡。
リャター商会には、今回の大規模侵攻の兵は送られなかったらしい。
「斯々然々・・『男尊女卑』は、【人茸化】したって問題無いんだけどな。
ソレ以外・・女生徒やウェスト傭兵団なんかは完璧な状態で洗脳を解いてあげたいし」
〔そうですわね〕
「今のところ完全完璧に洗脳が解けているのって、【巫女化】して洗脳魔法そのものを食ったディッポファミリー傭兵団だけみたいなんだ」
次いで、彩佳と【モスマン】の共同治療室。
【変換機】は・・一見完治したように見えて、外した途端に洗脳が振り返す。
( 少しずつ洗脳魔法の効果は弱まっているけど。)
【変換機】のみで完治させようとすると・・一カ月、半年、一年、あるいは・・ってトコロだ。
なので希望者はタマに【変換機】を外し、繭の中に入る治療を受けている。
足りない【変換機】を使い回ししている感じだな。
〔しかし・・以前、ゲンタ様が学園長に聞いたように───そのザラクスとやらの子を、『孤児』というだけで捜すのは大変ですわよ?〕
まあなあ・・。
源太ちゃんは極限状態だったあの時、聞いた事の全てを覚えているか自信は無いらしい。
覚えている手掛かりは【銀星王国】の孤児ってだけ。
ザレを含め、女生徒達や女学園卒業生の中のリャター夫人が経営する孤児院出身だけでも100人は軽く超える。
戦争終結直後の【銀星王国】孤児全員なんて、何千人になることか。
一万を超えるかも知れん。
「その中から、アンタ達全員と接触した事のあるヤツでしょ?」
「可能性としては───
①君たちの誰か。
②リャター商会関係者の誰か。
③【デロスファフニール】退治直後に会った傭兵団の誰か。
④【北の村】の誰か。
───ってトコロか」
「カンタ先生、④の【北の村】は無いと思うわ。
私と彼女、村で完全に別行動だったんだけど・・」
「二人とも、ビタに洗脳解いてもらったしね」
なるほど。
【北の村】はある意味、進路指導の場だったから結構みんなバラバラに活動してたんだよな。
「面倒なのは③の傭兵達かあ。
この人達も、( 例外もいるけど ) 男尊女卑を止めた人達だから出来るだけ完全な状態で洗脳を解きたいんだ」
〔①の私達の場合も、ですわね。
今も暴れている娘の中にいたら・・〕
洗脳が弱い『声』や『一番大切な人』を忘れた人は、後で『最後の【巫女】』が触るやり方で問題無いけど───
洗脳が強い『完全洗脳者』と『自失者』は【三種族の巫女】と同時に触らないとイケないみたいだし。
『完全洗脳者』を『自失者』に触らせる ( あるいはその逆 ) なんて、考えるだけで恐いなあ。
「取敢ず私たちと自失者で試して、上手くいく事を祈りましょうか」
「───居たら居たで・・あんなのがお爺ちゃんかあ・・。
( 半分人間じゃないって事よりショックかも )」
〔もう暫くしたら、ワタクシもそちらへ合流出来ますので〕
◆◆◆
≪チャー♡≫
「はうぅぅ♡
マッタリこってり芳醇な・・♡
【人花】一同、最大限の感謝を【人土の巫女】に」
取敢ずこの場で出来るザラクスさんの子捜し。
数人ずつ交代で自失者に触る・・けど、意識のある娘の中には居なかった。
次に自失者同士で試す間・・特にする事のない【モスマン】に、魔力を付与した食用繭を渡す。
旨そうに【モスマン】が繭を食うサマを・・同じく特にする事のない、ビタ以外の【人花】達が羨ましそうに見る。
「【巫女】がいるから仕方無しにココに居るけど・・オレ等、要らんくね?」
「腹減ったな~」
「あっ!?
あいつ等だけズリィ」
・・って感じ。
飽くまで俺の妄想だけど───
お腹なっている。
ヨダレを垂らしている。
血走った目で【モスマン】の食事を見ている。
なのでピヒタに野菜を出してもらい、魔力付与して渡したら・・恍惚の表情で下手な食レポを始めた。
・・まあ、ソレだけで『街破級』扱いされる程にビビられていた態度が軟化したんだ。
善しとしておこう。
( ちょっとこの天然さは不安になるけど。)
ちなみに【人花】に洗脳魔法が効かないのは【モスマンの繭】とほぼ同じ効果の花粉を纏っているからだそうだ。
彩佳の菌糸と【モスマン】の繭の部屋に、【人花】の花も飾ってもらう。
・・中々にカオスな部屋になった。
「ふぅー・・。
カンタ先生、この治療室の娘達だけでこんなに大変なら・・」
「ああ。
【人狼の巫女】捜しは諦めて、大元たる【空の口】退治に専念した方が早いかもしれん」
その日は一日がかりで自失した女生徒同士で試すも・・何も反応はなかったしな。
◆◆◆
次の日。
源太ちゃんが目覚め、体調も戻ったようだ。
・・パラヤンさんの手伝いが終わり、スッ飛んできたポロヤンさんと父さんが『どっちがより善い世話係に為れるか勝負』みたいなんを視界の端ッコでやっているけど・・まあイイや。
「まず、彼女達とウエスト傭兵団全員を保護してくれて有難う」
「うん? 全員?
ウエスト傭兵団は自信がなかったんじゃがのう・・団長らの近くで似たような印を持つモンを適当に拐ってきたんじゃ」
「下部傭兵団は分からないけど・・コレ以上を望むと、後手に回るから」
源太ちゃんと父さんが頷く。
『コレ以上』というのは、俺や颯太、家族と仲間に危険が生じるあたりだしな。
此処へくる途中、『一番大切な人を忘れていた』傭兵ギルド受付の職員さんと会ったんだけど・・ウエスト傭兵団団長を見た時、全てを思い出したとの事。
・・ああ、うん、そういう事ね。
まあ、ソレはさておき。
「父さんからどの程度、話を聞いたか分かんないけど・・俺達はあの【人狼】に襲われた」
「・・うむ。
そこまでは仁一郎君に聞いたわい。
後は皆が揃ってから、とな」
「分かった。
・・じゃあ入ってきて」
源太ちゃんの部屋の外に待機させていた人物達───水色ジジイと戦闘能力NO.1・2を、本人達の了承の元に手足を拘束させて室内へ招き入れた。




