21『逆に酷いチュートリアルだと、もうそこで積みゲーになったり。』
「また二人・・だな、颯太」
「うん、でも幹太姉ちゃんと一緒だから平気だよ!」
「ああ!」
あー・・また、前の世界でブラコンって言われ、コッチの世界でシスコンって呼ばれるな。
そんなつもり無いのに。
ただ以前から仲が良かっただけで。
感情レーダーで、御互いの絆がより固まっただけで。
「──さあてっ!
サクッと試験を受けて合格して、傭兵になって楽しみながらこの世界を巡るぞっ!」
「あ、試験は合格ですので、こちらの学園からの依頼を・・・・」
合格しちゃた。
「・・って、オイっ!?
何でイキナリ合格にしてんだよ!?
クソ売女共がっ、色仕掛けでもしやがったのか!?」
下種三人衆や他の男尊女卑の雑魚傭兵達が、俺達姉妹傭兵団合格に 「 贔屓だ 」 と騒ぎだす。
傭兵ギルドは所属傭兵の仕事結果から採点評価し、評価と依頼内容を見比べて相応しい仕事を斡旋してくれるシステムだ。
俺達はド新人。
本来なら試験として雑魚魔物の『討伐依頼』から始める。
( 死んでも自己責任ですむから。)
・・が、ディッポ団長のお墨付き、かつ、ギルド入りする時のイザコザを見て『合格』らしいけど───
堂々と、『裏口』って言われてもなあ。
無いわ~・・。
流石にコレは俺も無いわ~・・。
颯太も若干引いている。
「僕、もっと真面目に合格したいんだけど・・」
「ギルド職員にも魔法使いはいます。
素手で鉄製の籠手を曲げたり・・そんな普通の水筒( 円筒状の薄い鉄板の中を魔物の胃袋でコーティングした物 )の中に、あれだけの熱を封じ込めるようなスゴ腕に、雑魚魔物の相手をさせるヒマはありません」
『チュートリアル』とか『初心者の館』とかスキップしないというか・・・地味な作業はキライじゃないんだよなあ・・・。
( じゃなきゃ修行パートなんて地味にやってられんよ。)
試験対象になる雑魚魔物とは、この【銀星王国首都】から往復で4~5日の場所にいる僅かとはいえ犬ゴリラに劣る魔物を数匹、らしい。
時間の無駄といえば無駄だけど・・。
「そんなん認められるかよっ!?
試験は受けて貰うぞ・・・不正しないよう、俺達が監督してやるぜ・・ヒヒヒ」
ヒマか。
感情レーダー魔法を使わずとも分かる、この人数で襲えば俺達を犯れると思っているであろう下種顔。
ディッポ団長の言ってたココの男の恋愛観・・マジだな。
自分の中で、もの凄い勢いで『男』への評価が下がってるって分かる。
「ココに居る全員、俺達二人で皆殺しに出来る実力はあるんだけど?」
「え~?
僕一人でも十分だよ?」
───の、一言で皆引っ込んだ。
・・う~ん・・?
善意ある男にすぐなつき惚れるように、悪意ある人間には妙に残酷になるっぽい?
( 無論今回はただの脅しだけど、イザという時に然程、躊躇いとか起きない気がするんだよなあ。)
・・って、んな事よか。
ギルド職員に再び話しかける。
「・・騒ぎだした連中の前ではソッチを立てて、ああ ( ギルドの査定に文句を付けない ) しましたけど・・コレは───」
──バタン・・ッ──
「た、大変だ・・!
魔物の大量発生だ・・・!!」




