197『様々な視点・源太編2・⑥』
「倉庫だぁーっ!
倉庫を拠点にしろぉーっ!」
「フハハハッ!
要塞にも匹敵する壁と扉ァァ!
貴様等如きに討ち破れるモノではなァァァァいい!!!」
儂とリャター殿が完全洗脳者を気絶させ。
【人土】達が【変換機】を着け。
儂等二人に数を減らす守護者を名乗る連中は倉庫の中に逃げこみおった。
確かに奴等の言う通り、中の商品を傷付けずに倉庫の壁や扉を破壊するんは・・ちとキツそうじゃな。
「ビタさん。
彼等から取りもどした商品の中から『眠り草』を用意したからココの通気孔から蔦を入れちゃって~」
「眠り草は大丈夫なのです。
奈々さんと、色々取って造ってしたのです!」
日本におったころ・・ビタ殿は奈々ちゃんと色々山に行っては様々な植物を採取しよったり、どんな手段じゃろうか───【人土】達が、世界中から『薬草』を集めとった。
・・そういやあ日本で目覚めた後、幹太に聞いたが・・あの店でナニヤラ『取引』をしよる連中がおったとか何とか・・まあ、その辺はエエかの。
その後、ビタ殿達はヘタな国立施設よりスゴいらしい研究所でなんぞヤリよったそうじゃが・・『取って』『造った』んか・・。
「奈々さんが植物と植物を混ぜる方法を教えてくれました!
蔓の先に別種の眠り草を咲かせるのですよ?
何なら賊を全て一瞬でブチ殺せる毒草も有ります!」
「あらあら。
日本の技術ね~ " 遺伝子組み換え " と言ったかしら~。
・・毒は止めてね~?」
違うんか違わんのかよう分からんが・・違法の香りはするの。
日本で【アジ・タハーカ】と戦いよった時もビタ殿は強くなっていきよったが・・日本からの転移時、更に強うなった。
魔力の流れが綺麗じゃて。
体質的に心停止されても困るんで、意識が弱まる濃度にしてもらう。
「倉庫の中に " ガス? " は、充満したのです」
「・・ふむ、どんどん喋りよるんが減っていくの」
「防音にも自信はある倉庫なのだけどね~」
排出される眠りガスを吸わんように倉庫を開け、中の連中を対処してゆく。
コレでおおよその完全洗脳者を始末したハズじゃが・・。
「ゲンタさん、ヤマエさん、申し訳無いのだけれど・・」
「うむ」
「分かっているよ、ココはワタシ等でなんとかするさ」
リャター殿が儂等へ一礼し、商会の事務所の中へかけこむ。
ザレ殿達、女生徒も付いてゆく。
・・見た感じ、完全洗脳者の敵は儂等洗脳されとらん ( 【空の口】に逆らう ) 者だけじゃから・・無事だとは思うがの。
・・無事であればよいが。
暫くして───泣き笑いながら、やつれた一人の男性に肩を貸すリャター殿と、職員を連れ歩く生徒達が出てきたわい。
◆◆◆
「妻から話は度々聞いています。
サルキマオと申します」
リャター殿の夫という方サルキマオ殿。
リャター殿は可愛い好きと聞いとったんで、可愛い系の男性かと思うとったら・・可もなく不可もなくというか、平凡な感じじゃの。
・・じゃがリャター殿が選ぶだけあって、瞳の奥、芯は強そうじゃ。
サルキマオ殿は洗脳に耐えに耐え───チカラ尽き、気絶したトコロを完全洗脳者どもに起こされ働かされよったらしいの。
完全洗脳者は戦士のみ。
戦士には出来ん、荷物の整理・運搬指示をヤラされよったそうじゃ。
「その・・弱っとるトコ、悪いが───
【スライム】を此方で買ったらしいんだがねえ・・?」
「ああ、妻が買った奴ですな」
「あらあら~。
その言い方だと誤解が有りそうだわ~♡
・・ホホホ♡」
「こんな物が無くとも体さえ治れば♡」
「「「「???」」」」
◆◆◆
「おお・・こ、コレが【スライム】・・!
我が先祖か・・。
搬送班、大急ぎで【人土村】へ!」
「せ・・先祖?」
「御免なさい、詳しい説明はちゃんとした治療をしながらね」
サルキマオ殿は数発殴られた痕はあるが、脳や内臓に不自然な異音や魔力の乱れはない。
精密検査は受けるべきじゃが、まず安心じゃろ。
「あの・・姉さん達───リャター商会職員達の治療は・・?」
「アンタ等に着けた【変換機】の数が足りないんだ・・。
まず、危険人物を大人しくさせなきゃ職員の保護・治療も満足に出来無いんだよ・・済まないね」
姉さん・・確かリャター商会職員の大半は女学園卒業生じゃったか。
心配は分かるがの。
目覚めた途端に暴れだすであろう完全洗脳者を・・縛ったままにしておいたり、閉じこめたりする余裕はないんでな。
暫くはリャター商会と【人土村】を人や物の往き来と、その行路の整備に終始する。
転移してから4日後。
洗脳された者、弱っている者の治療。
リャター商会や【人土村】のアレやコレ。
簡易中継基地の設営。
めまぐるしい時間が続くも・・ホンの僅か、落ちつきが見え始めた頃───
空の様子がオカシイという報告に、【空の口】かと焦るも・・。
「・・なんじゃ【がるうだ】の群か」
「いや・・一応『村破級』ですからね?」
取敢ず儂は、向かってくる一群に颯太がようヤリよった石蹴りで応戦。
【人土】の皆は───
【なあが】に警察の銃は効かなんだが、【がるうだ】に長物は効きよるの。
山柄殿がリャター商会側に置いた無線機へ連絡。
「いいえ~?
此方では確認されていませんわ~」
「そうかい。
【ガルーダ】は家族単位で行動することは有っても、群ることはないらしいから・・さ」
「確かに~、分かりましたわ~。
時期が時期ですし、見張りの強化と外の作業を出来るだけ減らしますわ~」
【がるうだ】・・か。
そういえば
『魔物を操る国家的犯罪組織』と一番最初に戦うたんが、【がるうだ】じゃったなあ・・。
【空の口】は人間を洗脳したりして操りよるし、【アジ・タハーカ】など魔物も操りよる。
おそらく組織と【空の口】は繋がりアリ、と・・見とるが───この組織こそ " 魔女 " ではないか?
という意見も有ったが・・末端とはいえ御粗末な盗賊を使うとったり、ソコは違うと思うがの。
ちなみに、ペリオラ傭兵団の副団長に、組織の事は国家機密レベルで口止めされとったが・・もはや国云々レベルじゃあ無いんで、儂が知っとるこたあリャター殿と山柄殿には全部言うとる。
「嫌な予感がするしの・・あの肉を確保したら立て籠るぐらいでエエんじゃないか?」
「ちっ・・。
まだまだ準備は終わって無いのにねえ・・まあ敵の準備が整う前に攻めるのは当たり前か。
・・人間臭い戦法だね、【空の口】」
コッチに来なんだ【ガルーダ】の群も退治しに行・・うん?
アッチの群も、誰ぞを襲いよるんかっ!?
死角になっとったせいで気づかなかんだわい。
慌てて救出に行く。
「どなたかは存じ上げませんが助力に感謝いたします」
「戦場で礼など要らんよ、ココから先っぽが見えよるトコへ逃げるぞ」
100人・・は居らんか。
およそ80人程・・人数が多かったんで、トランシーバーにて車を出してもらう。
「いえ、貴女様のお陰で魔物に隙が出来ました。
これで我等でも───
遠慮無くあの魔物共をブチ殺せますので」
「・・うん?」
この感じ・・何処かで聞いたような・・?




