195『様々な視点・源太編2・④』
「【空の口】を倒す・・第二の英雄ヨランギとなる、おつもりですか?」
「幹太と颯太が居らん以上、必要ならの。
じゃが儂のチカラなんぞ、相性のエエ『街破級』を数日かけて倒すんが精々じゃし・・仲間はいる」
「じ・・十分、英雄的チカラだと思いますが」
再再転移により強くなってはおるが・・『街破級』を超える『城破級』には敵わんじゃろう。
「日本へ行く前に言っていた、『三種族』の【人狼】 ( かもしれない種族 ) に会いに行くのね~?」
「うむ」
「【人花】!
【人花】も魔女を・・【空の口】を倒す使命があります!」
ビタ殿がシュタッと手をあげる。
うむ、人類全ての敵のようじゃからのう。
「リャター殿とあろう方が『三種族』を知らんかったからのう・・。
『三種族』の記録はこの千年で消失したと見るべきじゃろうか?」
「千年前の記録より、( 真実かはともかく ) 二千年前の記録の方が残っているわ~」
「【人土】は異世界転移した事で『三種族』の記録が残ったんだね」
千年前。
通説には人類が共に【空の口】と戦った・・とある。
・・ソコに『三種族』の名など無い。
ビタ殿の住む村は200人程しか居らんらしい。
「 古い空き家は在るか 」、と、問えば 「 たくさん 」 との事。
過疎化が進みよる証拠じゃろう。
別の集落もさして変わるまい。
【人狼】もザラクス殿が少数民族出身と言っとったし、奥方の話を考えれば排他的・・数は減っとるハズじゃ。
「アタシ等【人土】は血が薄まってチカラが弱わまった上、全員で来れた訳じゃないしねえ」
【人土村】の現【人土】は270人程で、その魔力は最強の8人ですら、普通の魔法使い程度。
・・いかな【人土】の真価は魔力吸収にあるとはいえ、戦場に立つチカラが無いのは、の。
「当座の目的は───
儂は【人狼】達に会う。
リャター殿は女生徒とリャター商会の保護。
ビタ殿は帰郷。
山柄殿は・・」
「【スライム】に会いたいね」
「す、【スライム】?
そ・・その・・この世界の人間は【スライム】を・・・・」
「ああ、御先祖様だとかそういうのはイイよ。
幹太さんにも言ったがね、人食いの怪物を殺そうが素材扱いしようが構わないし」
「では?」
「幹太さんと颯太さんが【スライム】に食われ、【人土】となったように───
ワタシらも体内の【スライム細胞】を増やしたいんだよ」
「増やせるん・・ですか?」
「幸い医療・薬品・生体検査施設は生きてるし、研究はするさ」
この辺は・・違う価値観、違う民族だの・・と思うわい。
【人土】の皆は
「 食うの? 」 「 食われるんじゃない? 」 と平常で言いよるが、他の者・・特に女生徒達は青ざめとる。
≪チャー≫
「気にするな」と言わんばかりで果実ジュースを飲む【モスマン】。
あの手で器用にプルトップを開けよるの。
( 桃がお気に入りのようじゃ。)
「幹太達を食って幹太に大人しゅうされた【スライム】を回収した時、素材回収班に聞いたが・・【スライム】は『村破級』の中でも特に回収しづらいらしいの」
「私たちも傭兵さんに聞きました。
【スライム】を殺す方法は焼き尽くすしかなく、【スライムプール】を満足させられる魔力量はカンタ先生以外は大量の魔物を放りこむしか無い、と」
ソレでも魔物を投げる時に【スライム】に捕まり、掬う時にエサ切れになって【スライム】に捕まるそうじゃ。
【デロスファフニール】は儂一人で倒す自信はあるが・・剣も拳も効かん、ほぼ液体である【スライム】は倒せまいな。
しかも何故か【スライム】は、ほぼほぼ貴族に買いシメられるらしいしの。
「あの【スライム】は・・カンタさん達と共に回収した縁で一部、我がリャター商会で買いとる事が出来はしましたわ~」
「本当かい!?
まだ残ってるのかいっ!?」
「そ・・その直後に転移して、ソレから4日ですから・・。
夫が・・どう洗脳されているかにもよりますわね~」
なるほど。
コレでリャター殿達と山柄殿達の目的は一致したかの。




