193『様々な視点・源太編2・②』
「何処へ行くか・・じゃの。
日本へ転移した時は・・女生徒さんは大多数が【魔物の森】に、残りは【北の村】におったんじゃよな」
「そうですわ。
そして万一の時は森の外側を歩いて避難せよ、との取り決めでしたわね」
「そうねえ・・。
けれど、カンタさんとソウタさんと・・ゲンタさんは同日に転移して半月の差があったのよね~」
つまり女生徒達の居場所候補は───
【魔物の森】( 居る条件 ) 再転移直後なら。
【北の村】再転移から1日2日ぐらい?
【女学園】再転移から間が有れば。
【リャター商会】再転移から相当、間が有れば。
───じゃろうな。
「今が『あの瞬間』からどれぐらい経ったのかが分からないのが痛いわ~・・」
「ちなみに、一番近いのは何処だい?」
「距離は、あまり変わりませんね~・・。
ただ其々別の方角なので、あの娘達なら安全な【魔物の森・北の村】は後回しすべきだわ~」
【魔物の森】ちゅうても、『あん時』居ったんは西側の果て。
森の外へは、すぐに出れるわい。
『対、村破級』にして、限定的には『対、街破級』でもあるしのう。
【魔物の森・北の村】に居るんなら、心配はあまり要らんじゃろ。
「ココから【北の村】【女学園】へは同じ距離でも───
【北の村】から【女学園】へは、大きく迂回せねばなりませんので・・」
「直近で危険なんは【女学園】への行路・・じゃな」
◆◆◆
食後、リャター殿・ザレ殿がトラックに。
儂・ビタ殿・山柄殿・河村殿・森本殿が【人土村】所有のキャンピングカーで、【女学園】へと行く。
昼夜を問わず走るつもりじゃから、河村殿と森本殿は運転交代要員として・・じゃな。
「ゲンタさん、車の運転は?」
「大昔に数度・・の」
20ウン歳の頃じゃから、60年ぐらい前・・ホンマの大昔の話じゃわい。
死んだ妻の方が、まだ運転は巧かったのう。
運転を交替しつつ、女学園へ向かう途中───
「うんっ・・!?
居たぞ・・向こうの麓、4km先に2人!」
「4・・源太様、我等には分かりません」
「済まん、付いてきてくれ!」
儂は車から飛びおり、超速歩魔法で二人の元へ、リャター殿はオフロードバイクに飛びのり付いてくる。
「お~い、二人共無事かのぉ~!?」
「私達よぉ!」
「げ・・ゲンタさん!?
学園長!?」
二人は・・多少やつれた感じじゃが───無事の様じゃ。
「他の皆は?
アレから何日たった?
アレから何があった?」
「え? ええっ!?
えーっと・・」
「あー・・う?」
うん?
一人は・・突然の儂等に混乱しつつも普通なんじゃが、もう一人は───心ココに在らずといった感じじゃの・・。
追いついてきた車二台に、女生徒は恐怖するも・・リャター殿がなだめ、車内からザレ殿が出てきたことから安心したようじゃ。
キャンピングカーの中に入れ、栄養ドリンクを飲ます。
その間ずっと───
リャター殿が泣きながら謝っとったのが・・見てて、キツかったわい。
「あの日【魔物の森】で・・学園長達が光って消えたかと思ったら、目眩がしてみんなもオカシくなって・・」
気づいたら全女生徒の六割が整列して何処かへ立ちさり、三割が自失し、残りがリャター殿やザレ殿の事を忘れたりしとるらしいの。
「学園長達が消えて今日は3・・4日目です。
自失した生徒と共に【北の村】の生徒 ( 全員、自失していたらしい ) と待っていたんですけど・・女学園に帰りたいと残った生徒の中からも自失し始めたコがいて───」
ソレで無茶をおして【北の村】から【女学園】へ帰る途中だったらしいの。
「貴女達以外のコは・・!?
ま・・まさか・・・・!?」
「大丈夫よ、ザレ。
途中、助けてくれたコが居るの。
みんなはソコに居るわ。
私達は女学園への行路のチェックにきてたの」
「助けてくれたコ・・?」
「ヒントはあの山よ」
数百m離れた先の山。
この辺でも屈指の安全な場所。
人を襲う魔物の空白地帯。
女生徒が指差したんは・・【北の村】から【女学園】の間程にある小さな山。
案内され進む。
「【ファフニール】の居った山・・ちうこたぁ『助けてくれたコ』いうんは」
「はい」
≪チャ?
チャチャチャー!≫
「【モスマン】!」
体長30cm、羽が退化した代わりに手足が進化した人型の蛾【モスマン】。
出ていっとった女生徒を心配しつつ・・新参者を警戒するも、ソレが儂やザレ殿やリャター殿と気づき警戒心を解く。
そりゃあエエんじゃがのう・・なんで儂にやたらまとわりつく?
御主等には悪いが・・その・・儂は、蛾が───
「ああ!
匂いか何かで御姉様を探してらっしゃるのでは?」
「家族だし同じような体臭なのかしら~?」
成程のう。
幹太ほどの魔力パスは繋げられんが、意識しつつ今回の騒ぎではぐれたんじゃ・・って通じとるんか?
皆で説明すると、どうやら理解したらしくションボリしよる。
済まんのう。
( ちうか、よう懐かれとるな。)
【モスマン】の里? に到着。
女生徒達は繭にくるまれ───
み、見た目はエサの保存にしか見えんが違うハズじゃ。
・・たぶん。
会合した女生徒達とリャター夫人殿とザレ殿は再び手を取り合い、喜びと謝罪の涙を流しよるな。
皆の話を纏めると、空から声がした後の人間は───
転移した者 ( 儂等じゃの )
整列し、去った者 ( 戦闘上位ばかり )
自失した者 ( コレが一番多い )
声を聞いた事を覚えてない者
一番大切な人間を忘れた者
───といった感じじゃ。
一番大切な者を忘れたいう娘は大概、リャター夫人殿とザレ殿と出会い思いだしよった。
自失しとる生徒等は、魔力吸収能力のある繭にくるまれとると・・徐々に、ではあるが回復しよるらしい。
「あの声が・・お伽噺の【空の口】の声だったなんて・・」
「幹太と颯太とは異世界にてはぐれてしもたしのう・・。
儂等は千年前、【空の口】を倒した『三種族』を集める旅に出る」
「魔力吸収なら【人土村】にての方が効率が良いね。
意識ある御嬢チャン等も、皆やつれてるし・・取敢ず皆を運ぼう」
との事で数人ずつ、女生徒達 ( と、幹太と特に仲の良かった【モスマン】達 ) を【人土村】へと連れてゆく。




