192『様々な視点・源太編2・①』
日本から異世界へ。
異世界から日本へ。
・・そして、再び異世界へ───
儂、『秋原 源太』は今・・異世界へ再再転移への扉の前に立つ。
「父さんっ!
父さんも避難しなきゃ!」
「その前に颯太だ!
颯太と合流しなければ・・!」
「でも・・ううん、分かった。
魔力パスはコッチだよ!」
リャター殿、ザレ殿、ビタ殿達、異世界から来た者達。
山柄殿達、【人土】を代表する8人。
皆が孫を見つめ、頷く。
───もし幹太が 「日本に残る」 と言った時は ・・「残っていい」という思いを込めて。
「・・有難う御座います」
「御義父さん、また会いましょう!」
「ザレ、勝負はまだ終わってないんだからね!」
もう一人の孫、颯太から・・パスがきよった。
───とても清々しいパスじゃ。
◆◆◆
「ふむ、みんな離れて行きよるの」
周りの皆を見れば寂しそうにするも、誇り高く微笑んでおる。
ザレ殿に彩佳ちゃんの台詞を訳せば、微かに頬を染め『バカですわね・・』と笑う。
TVをチェックしていた【人土】が 「 ほう 」 と、感心したり 「 ふふっ♡ 」 と、微笑んだり。
幹太からは・・嫉妬?
颯太からは・・なんぞ爆発したような喜び?
魔力を持たんハズの仁一郎君からも、ドロドロしたんがきよった。
幹太と颯太からの共鳴とでも言うんか、引っ張られたっぽい。
皆から表現し難い感情がきよる。
なんぞ向こうは色々ある様じゃの。
「うん?
幹太と颯太から『良』の感情がきたの・・そうか、異世界へ行くと決めたんじゃなあ」
『ではワタクシ達からも御返事を・・ととっ、な・・何ですの!?
扉が───』
目の前の扉が強く発光し始めよった。
コレは・・。
「扉が・・開き始めたようだね」
「凄い数値です・・!
コレが異世界からの魔力!」
「周囲の時空震が扉の一点のみに集まってゆきます!」
山柄殿と、扉を科学的に補佐しとった人達がコーフンしつつ呟く。
「ええ~?
せっかく【巫女】様がいらっしゃる決心をなさったのに・・?」
「駄目・・絶対・・」
「“ 堕天した十二騎士 ” の仕業かっ・・!」
「どうにか成らないんですぅ?」
女の子 ( ? ) 組がワイワイと。
『あらあら~』
『御姉様・・!』
『お姉さん・・奈々さんも来れなかったのに・・』
異世界組が心底くやしそうに。
田坂殿が指示を出す。
「皆、扉に魔力を送りたまえ!
ほんの少しでも扉が開くのを遅らせるのさ!」
田坂殿の言葉に、一般の【人土】も含め、皆が扉を制御しようと魔力をおくる・・が。
くっ・・!
こん中で一番魔力量が多いんは儂じゃっつうに、魔力操作が一番苦手なんも儂じゃ。
殆んど役にたっとらん。
孫達が必死に走ってきよる・・っちゅうんにのう・・!
「・・済まん───」
≪──ブォン・・ッ──≫
強烈な光の洪水。
目が開けらん。
魔力の塊・・『扉』が迫りよる。
光の洪水が収まり目を開けると───
【人土村】と、人一人居らん魔物のみが闊歩する平原・・。
異世界じゃった・・。
◆◆◆
「源太殿、パスはどうだね?」
「・・切れてはおらん。
じゃがのう・・パスが途中でネジ曲がっておる。
・・感情も分からん。
たぶん幹太達は日本じゃろうな」
「あらあら・・。
残念だけど仕方無いわねぇ」
「おやっ?
リャターさん、アンタ今・・日本語を喋ったかね?」
「まあまあ!
ヤマエさんの言葉が分かるわ!」
うん?
幹太が言うトコロの翻訳チートっちゅう奴か。
【人土】の皆に軽く目配せする。
儂等が元男だとか言われては・・儂はともかく孫達が困ろうしの。
7人からは感情は分からねど、本意の意思とパスがきよった。
・・が、田坂殿は───キョトンとしとる。
ありゃあ分かっとらんな。
心配しとったら、女装しとった ( 男の娘?とか言うらしいが・・ ) 森本殿が 「 田坂は元男という事すら知らないんですぅ 」 との事。
なら安心か。
・・安心か?
「ザレ、貴女の方は他の生徒達とパスが繋がっているかしら?」
「いいえ、学園長。
おそらくですが、一度千切れたパスは再び出会うまで繋ぎ直せないようですわ」
「そうなのね~・・。
なら出来るだけ早く生徒達と合流しなければね~」
確かに心配じゃの。
そんなに付き合いはないが、幹太と颯太が世話んなった方々じゃし。
「・・でも、【人土村】ごと来れるんだったらもっと色んな物を周囲に置いておけば良かったわ~」
「リャターさん、ココが何処か分かるかい?」
周囲を見渡す。
薄暗いの。
日本の、転移した時間とあまり変わらん感じじゃが。
「コレだけの平原となると・・【銀星王国】だけでも【ヨンギロ高原】【ゴェドー平原】【シチルォ地方】───
幾つか候補がありますね~」
「ワタシ等は転移した【人土】達と【人土村】の残存機能を調べてくる。
リャターさんは周囲を調べてくれんかね?」
電池式でない、『百年動く』が謳い文句の腕時計を確認するリャター殿。
「分かりました~。
えっと、今19・・もうすぐ20時だから22時には戻ってきますね~」
「済まんね」
『【空の口】の驚異を伝える番組』が17時から始まり、2時間録画放送の後、19時から生放送。
颯太にとり憑いた魔力体やらで役1時間っちゅうトコか。
リャター殿はザレ殿と共にトラックで平原を進む。
まあ見た感じほぼ『破級外』、たまに『道破級』ぐらいしかおらんし、二人なら大丈夫じゃろ。
( 儂も同乗したことはあるんで、分かるが・・ザレ殿は再び乗るトラックにウンザリしておったの。)
「そうか・・御主等も突然仲間の半数以上が居らんようなったんじゃなあ」
「全国の【人土】全体から言えば、もっとなんですぅ。
【人土村】にいたのは私達の側近以外は山柄代表関連企業の人員ですのでぇ」
ふむ。
なら向こうに残した【人土】が、どうにも成らんようなるっちゅうんはないか。
儂は土地勘が無いんでリャター殿の役に立たんし、【人土】全体を知らんゆえに山柄殿の役にも立てん。
しょうが無いんで、さっき悔いた魔力操作の練習でもするかの。
周りの手持ち無沙汰な【人土】やビタ殿と共に剣の素振りをする。
・・うん?
「の・・のう、魔力の上限が増えた気がするんじゃが───気のせいかの?」
「我・・同感」
「大気中に魔力のある世界だからこんな物かと思っていたんですけどぉ・・やっぱりぃ?」
「ククク・・遂に我が “ 正義執行 ” の真のチカラが解放されたようだな・・」
「より遠くの植物の声も聞こえます!」
魔力の無い世界で鍛えられた・・とかかの?
◆◆◆
22時ちょい過ぎ。
互いの報告会。
リャター殿からは【銀星王国シチルォ地方】で、まず間違いないとの事。
国の端ッコで周囲に何もなく、女学園やリャター商会へ行くには不便じゃが【人土村】のビル群を隠すにはちょうど良いかも・・らしい。
山柄殿からは・・【人土】達に問題はなく、村としての機能は維持されており、各施設の生産修繕機能にも問題は無いとの事。
・・資材等が残っている間は。
「ソレなら我がリャター商会が何とか出来ますわ~♡」
「アンタとはコッチの話もしたかったんだ♡」
握手をしよる二人。
まあ異世界の仲間同士、色々協力出来るならソレでエエじゃろ。
「儂からは・・気づいておるかもしれんが───日本人異世界人の差なく、魔力量が増えとるようなんじゃが」
「おっ?
言われてみりゃ確かに・・」
「魔法使いでない、私もそうだわ~」
山柄殿の手伝いをしとった各【人土】も、己のが魔力を確認しよるの。
───片方残っとったコンビニにあった幹太のブロマイドを、簡易的に造った祭壇みたいなんに奉りながら。




