191『朝の占い番組で 「 失敗ばかり、頑張りましょう 」 と言われた日・・午前に十数tの鉄塊が、午後に数百kgの鉄板が『他人の』失敗で倒れこんできました。』
颯太は一番デカイ【人狼】・・の、斜め後ろに位置どる中肉中背の【人狼】へと真っすぐ進む。
人間が地球の寄生生物だった・・ってマンガで、主人公に絡んできた不良のボスみたいな位置にいるな。
「パシッて掴んで終わりかしら」
「そのネタ・・誰が分かるんだよ?」
「あら、子供達に分かるコが居るかもよ」
「へ?」
「子供達・・こっそりアンタの部屋のマンガを回し読みしてるから」
「あっ、アイツら~・・後で怒っておかなきゃ」
「本棚の裏の本は、子供達がページを開く前に没収してあげたから感謝してね♡」
・・・・へ?
「感謝してね♡」
・・・・・・・・・・・・。
───逃げなきゃならない。
逃げる・・?
微笑んでいる彩佳から?
2はつか3ぱつシバかれ・・いや顔面グーパンだ、それどころか乳をもがれるかもしれない。
なんだ・・ほとんど ( 逃げれる ) 可能性ゼロに近いじゃないか。
でも逃げなけりゃ確実なゼロだ!!
◆◆◆
「ソレ、本気のスピード?」
「があっ!?
があぁっ・・がっ・・くそがあぁぁっ!!?」
鈍いパンチだなぁ。
せっかく一番強い人を選らんだのにねぇ。
「うーん・・同じ犬だし、レッサーハウンドと一緒だね♡」
「が・・がかっ・・!?
俺が・・俺があの糞共と同───!?」
両腕の爪を大振りするか、噛みつくだけ・・ツマンナイなぁ。
「苦戦したのはレッサーハウンドの方だけど」
「フ"チこ""ろォォす"っっっ!」
「どけっ、プッチ!
スバシッコイってだけでNo.1の時代は終わったんだ!」
あ、やっと後ろのデカイ人がきたよ。
ちゃんと狙いやすい位置にいてあげたのにねぇ。
パワーはあっても一番強い人よりスピードは無いから、ゆっくり防御してあげて・・っと。
「鉄塊のボチとは俺のこ───ぎゃああぁぁぁっ!?」
「あ、御免なさい。
ゆっくり過ぎて、しっかり防御しすぎちゃった」
でもまあ、そんな鉄塊ていどの弱い骨で僕を殴っちゃったらそうなるのも分かんない方が悪いのかなぁ?
「み"んな"っ"、取"りかこ"めっっ!
一斉"にぃかか"れぇ"───」
「・・っと。
次は俺だな」
「あ"あ"ん!?
誰───お・・オマエはさっきの女・・!」
あっ、もう幹太姉ちゃんの番かぁ・・。
アレ?
凄い闘志だ。
・・何でこんぐらいの相手で?
◆◆◆
「おい、白色ジジイ」
「あ?
お・・長のことか・・?
何たる無礼を・・!?」
怒り狂う【人狼】達の中、一番偉いであろう白色ジジイが出てくる。
全身の血管が浮き出んばかりに怒りに震えているが。
「何だ」
「英雄ヨランギは知ってんのか?」
「知らぬ者などおらぬ」
「英雄ヨランギにつき従っていた三人の乙女は?」
「当然、知っておる!」
「その三人の乙女の一人・・『覇者』と呼ばれる、英雄の敵を倒した乙女の子孫が【人狼】という種族」
「あ・・ああ」
「あそこで並んでいる人達は三人の乙女の一人『賢者』と呼ばれ、英雄を護った乙女の子孫【人土】」
「な・・何!?」
周囲の水色ジジイや他の【人狼】達もバッと【人土】の皆を見る。
本気で初耳っぽいな・・。
動揺が広まってゆく。
「異形の地で戦う【人土】仲間達の元には・・三人の乙女の一人『聖者』の子孫、【人花】もいる」
嘘だ、いや・・覇者以外の子孫だって何かやっていても・・といった声が聞こえる。
「オマエたちだ」
「は?」
「オマエたちだけが他の誰かを戦わせ、その後ろでプルプル震えている。
【人土】と【人花】が。
その他の民が。
千年前から『共に』戦っているとも知らずにな。
───愚者はオマエ達だ」
「こ・・小娘如きが・・!
ええい、戯言だ・・!
戦場にたった二人で出てきたことを後悔させよ!」
白色ジジイが、狼化した【人狼】へ号令をかける。
・・けど、誰も動かない。
精々、身動ぎか・・白色ジジイに説明を求める視線を送るぐらい。
颯太にNo.1と ( たぶん ) No.2をヤられたのと───
『『三者』を知っておいて『三種族』にまでは考えが及んでいませんでした』・・なんて言い訳が───少なくとも一族の長には通用しないだろうしな。
「サッサと、オマエ等を何とかしないとシバかれ───あ、いや、仲間の下へと行けないからな・・」
両腕をあげる。
一瞬【人狼】達が身構えるも、包帯を巻かれた俺の腕に首をかしげる。
注目が集まったトコで火球を生成。
【人狼】は魔力が見えるのか分かんないけどウチのは見えない人も多い。
なので、分かりやすく大きさに魔力を込めてゆく。
「な・・何だ、あの馬鹿げた巨大火球は・・!?」
「ま・・まさか、あの生きた家みたいな魔法・・一人で動かしてたんじゃ!?」
「こ、こんな時に冗談言うな・・冗・・談」
熱を封じているので、見た目程には熱くない。
ある程度大きくなったら一気に火球を圧縮。
光も封じているんで、ソコまで眩しくは無いけど真っ昼間みたいにはなっている。
「颯太、すまん。
頼めるか?」
「大丈夫だよ!
真上で良いの?」
「アッチにも見えるのが良いんだけど。
あと、ちっちゃい子も見てるし風が少ない方が」
「分かった!」
火球などを『飛ばす』ってのは、意外と魔力を使う。
ピッチャーや砲丸投げ選手の筋力が凄いように、ロケットにトンでもない燃料がいるように。
コレに『長距離』『高速化』『追尾』なんて能力を付けたら『威力』はダダ下がりになる。
なので『威力』重視のこの魔法は───
俺が作って、颯太が投げる。
こうしないと唯の自爆技にしかならない欠陥魔法だ。
「「せーのっ・・極大爆発魔法っっ!!!」」
颯太が勢いづけて投げた小さな火球は・・はるか、はるか、彼方の果ての───よく分からん場所まで上昇し・・上空で光の塊になる。
・・ばくは・・うわ、熱風がまだ凄いな。
自分の上がった魔力のことを考えて、威力は抑えめなんだけど・・。
───でもコレで、魔女の守護者とやらの目に入らない訳が無い。
ココに敵がいると、気づかない訳が無い。
ココが戦場になる。
【人狼】も戦わざるを得ない。




