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189『生のトマトを食べさせたりする美食家も満足の味です。』


【ビッグボア】と【ガルーダ】×2。

久方ぶりのお肉。


( 俺と颯太以外の ) 日本人は言うに及ばず、異世界人でも何人かは上位魔物の肉は初めてという人もいる。




「わ・・私達まで、良いんですか?」


「そりゃ当然ですよ」


「何時の日か、オレ達が君達のタメに『村破級』を仕留めてみせるからね」


「危険なことはしないでねー?」




食う分以外を瞬間冷凍。




「アラ?

漫画でよく見る、血抜きって奴をしなくて良いのかしら?」


「血を抜くのは・・傷口から侵入した雑菌が繁殖しないようにするためなんだけど、血は旨味らしいしな。

本来は川なんかに沈めて冷やすんだけど」




雑菌が繁殖した血の肉がいわゆる、血生臭いとか鉄臭い肉になるそうだ。


どうせ血を一滴残らず抜きさることも不可能だし・・いや、ヤリようは有るか?


何℃が【ビッグボア】【ガルーダ】の適正保存温度か・・なんてのは温度計も研究もないので、一纏めで冷凍だけど。


食う分は解体。

コッチはある程度血抜き。

抜いた血から麗水を作ったり、【人土じんど】の皆が何かの練習に使う。


で、実食。




「何故かしら、美味しいのは美味しいけど・・美味しいっていうより、満たされる感じがするわ?」


「魔物がもつ魔力を食ってるからって説があるッス。

上位なら上位の魔物ほどッスね」


「なら『街破級』ならもっと美味しいのかしら」


「【ファフニール】は岩と泥だし、【アジ・タハーカ】は鎧だけどな。

・・あ、源太ちゃんが倒した【ニーズホッグ】は芋虫だった」


「芋虫だからって何!?」




いや、俺も食わんけど。



◆◆◆



流石にこの人数。

命に直結する水や食糧は優先して対処するも、ソレ以外・・例えば寝具等は後回しだった。


俺達家族の布団・ベッド、御客様用布団、ソファー、座布団、クッション、毛布、タオル。


父さんが異世界行きを決めた時に買った、家族と付いてくるであろう彩佳の分の寝袋。


行商人母娘家から持ちだした布団や俺達が教えたクッション。


後は使用を優先して、急いで殺虫殺菌した微妙な使い心地の魔物の毛皮。


家と道場だけで、充分みんなが泊まれはするけど ( また彩佳に睨まれた?? )・・寝具が足りない。


ので、

足りない数 = 夜営見張り番の数。


家を動かす俺だけは毎日寝ることが許されている ( というか、寝ろと命令される ) が、主に【人土じんど】達とディッポファミリー傭兵団が数人ずつ交代で見張りをしている。


「こんな快適な状況でやる夜営など ( 野外ライト、バーベキューセット等 ) 勘が鈍るぐらいでの」 との事で、子供たちが混ざって遊んでいるような夜営だけど。


ちなみに、家に入れのは男は一階まで。

俺達の部屋が有る二階まで上がれるのは女性のみ。


父さんの部屋はパソコンなどが有る ( いずれ日本に帰った時の為 ) ので立入禁止。


俺の部屋は・・本棚の裏を処分するチャンスが無かったので立入禁止。


ん? ナニ、彩佳?

気にしちゃダメ。


・・で、【北の村】を出て四日後。




「ちっちゃい家が3つある!」




颯太が宿場に気がつく。

有るのは宿屋と職員の家が二軒と倉庫のみ。


ちょい進行ルートから外れるけど・・。




「布団・・せめて布か綿が買えたらイイなあ。

ソレでなくとも、みんなココに閉じ込められててストレスだろうし」


「そうねえ」


「いや、皆『でいぶいでい観賞会』?だけでも楽しんでいるの。

『とらんぷ』や『しょうぎ』だのも人気で順番待ちだしの。

『えほん』とやらを読んどる子は『ニホン』の文字を覚え始めたのも居るの」




DVDや遊具も、父さんが幾つか買い込んだっぽい。


DVDやハードディスクに録りためていた映像は、俺の声を吹き込んだボイスレコーダーと違い日本語のままだけど・・まあ ( アン○ンマン以外 ) 楽しんでいるらしい。

( 後で内容解説したり、短いヤツなら紙芝居みたいに同時翻訳したりするし。)


ちっちゃい子供は意味も分からずリズム芸人などを耳コピして日本語を真似ていた。


遊具は、押入れや倉庫に俺や颯太が小さな子供の頃に遊んでいた知育オモチャや三輪車、ホッピング等もあったしな。

( 将棋は、皆が使うのは百均の。

持っていくつもりのなかった源太ちゃんの本格的な奴はチャンピオンのシャッコさん用。)


再現可能な幾つかの遊具は鍛冶屋のタゥコさんとかが真似て作るほどだ。

( 電動工具に息が止まりかけてたけど。)




「宿場に、行くだけは行ってみましょうよ」


「まあイイかの」



◆◆◆



「・・いらっしゃい・・」




覇気の全く無い店員が出迎えてくれた。

コッチを一瞬チラリと見ただけだ。

薄汚れた服を着て、不器用にモップ掃除をしている。




「( く・・暗いなあ )」


「( 洗脳されてるみたいだねぇ )」


「・・・・・・」


「元は立派な戦士っぽいのに・・」




小声で会話する俺達に───

店員がコチラへ、バッとギラついた目をむけ迫ってくる。




「き・・貴様等、洗脳されていないのか!?」


「わあっ!?」


「我の偉大さが一目で分かるとは・・!

我以外に洗脳されていない人間が居たのか・・」




・・ああ、びっくりした。

てっきり元戦士の従業員が弱洗脳され、仕事を再現しているのかと思った・・。




「貴方は洗脳されていないんですか?

【空の口】の声を忘れた・・とか。

一番大切な人を忘れた・・とか」


「我は洗脳されてな───そ、【空の口】だと・・!?

あの『女』の声が!?」


「ソレが分かるって事は、マジで洗脳されて無いんだ・・?

あ・・貴方は一体───」




衰弱し、弱りきった体でミエをきりだす。

・・大丈夫か、このオッサン。




「我が名はペリオラ!

『対、街破級』ペリオラ傭兵団、団長なりっっ!!!」


「『対、街破級』ぅ・・!?」




なんでそんなんが、こんな小さな宿場で・・?

嘘───じゃない、けど・・。




「さあっ、次は貴様等の番だ!

名乗れ!

事情を説明せよ!」



◆◆◆



「うむむ・・。

【空の口】・・異世界・・『三種族』・・ええい、副団長まほうつかいが居らんと真偽が分からん!

・・しかしこんな訳の分からん家を本拠地にする者が、こんな突拍子もないウソをつくか・・?」




取敢ず家の前まで戻り、非戦闘員は建物の中へ。


ヒトゥデさん達弓矢隊と、父さんは日本で買ったボウガンとスタンガンを装備して8m上から狙っている。

( 練習はしていて、スジは良いらしいけど・・父さんはまだ引き金に指をかけてはイケないらしい。)


剣隊はペリオラさんを取り囲みつつコチラの事情説明。




「嘘は言って無いんだの?」


「はい」


「話しには聞いたことがある。

たったの1800人で【ニーズホッグ】を倒したペリオラ傭兵団・・」




ペリオラさんは、あの日団員が次々と洗脳され───


立ち去る者 ( 完全洗脳者 )、自失する者 ( 弱洗脳者 )、混乱する者 ( 声、大切な者を忘れた者 ) の中で一人、洗脳に抗っていたら・・何時の間にか、気絶していたそうだ。


やがて・・見知らぬ植物に包まれ、見知らぬ土地で目覚め、ひたすら歩いてたどり着いたのがあの宿場で、仕方なく彼処で体制を整えるなり金を作るなりし始めるとこだったとの事。


ココが【銀星王国】だという事すら知らなかったらしい。




「ディッポ団長と同じ症状か・・。

───見知らぬ植物、ね」


「うむ、こう成っては仕方ない!

御主等の言葉を信じよう。

ともに我がペリオラ傭兵団にて【空の口】を倒そうぞ!」


「え? イヤですけど。

俺達、姉妹傭兵団なんで」




ポカンとするペリオラさん。

まあ傭兵団の憧れといえば『対、街破級』といった所はあり、異世界旅行を楽しんでいた頃は憧れもあったけど・・。




「なっ・・なな何を言う!?

世界に10無い『対、街破級傭兵団』!

しかも【ニーズホッグ】を1800人で倒したペリオラ傭兵団で───」


「この姉妹傭兵団も【ファフニール】を1000人で倒した『対、街破級傭兵団』である。

しかも【アジ・───これは分からんか」


「は?

言うにことかいて───」




怪訝そうな顔をする ( ちょい泣いてる? ) ペリオラさん。

とにかく、俺達は姉妹傭兵団を辞めるつもりは無い。




「・・そんな事より、宿名が書かれた服を着た・・たぶん宿の主が、椅子に行儀よく座ったまま死んでいまして」


「弱洗脳者が自分の飢えに気づかずに・・といった所かの」


「ギルドではココを把握していませんでしたから、違法営業でしょう。

私財はギルド権限なら接収できたんですが・・ああ、『対、街破級』権限でも大丈夫です ( ギルド以上、高位貴族に並ぶ権限を持つため。)」


「ならこの非常時だし、お金や宝飾品以外で必要な物だけ持っていきますか」


「まあ妥当な線であるな」


「お・・おい!?

我を無視するな・・なな・な・・!?

い、家ええぇぇーーー!??!?」


「イエーイ!」




家を動かすと、再度ポカンとするペリオラさん。

何か勘違いしている颯太。


宿場へとむかい、皆が銘々行動する。


最後に犯罪者とはいえ、宿の主を埋めて略式の墓を建てる。


俺達が・・何人か子供までもがテキパキと動く中───茫然としたまま動かなかったペリオラさん。




「どうします、ペリオラさん?

付いてくるなら・・コッチの指示には従ってもらいますが」


「・・はっ?

あ・・うむ・・・・」




俺の質問に、やっと起動したペリオラさんがオタオタしつつ・・。




「ぐううぅっ・・し、仕方ない。

ペリオラ傭兵団メンバーの洗脳を解くためには・・貴様等の世話になる」


「ならこのスコップ仕舞っておいて」


「・・・・」




そして宿場出発より二日後。

・・遠くにこの世界には無いはずの物、ビル群が見え始めた頃───変なジジイ共が、立ちふさがってきた。


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