186『恍惚の表情で幹太の服をナデナデして、皆がドン引きです。』
「おねーちゃんたち、ありがとー♡」
「話はウチのから兼ね兼ね聞いてたよ、色々ありがとうね」
「俺達こそ何度も何度もディッポファミリー傭兵団には助けられました。
なっ、颯太」
「うん、コレぐらいオヤスイごよーだよ!」
ヒトゥデさんの決意により、【変換機】を異世界人が異世界で使おうと問題ないと分かった。
見方によっては自分の妻を人体実験に使ったようなモノ。
父さんは 「 事情は分かるし、何も出来ない自分がとやかく言う権利は無い 」 と言いつつ、かすかに怒っていたけど───
笑顔のディッポファミリー傭兵団を見て微笑んでいた。
傭兵って仕事は・・最悪を想定して動いてなお、想定の斜め上の事態になることも多い。
一見、仲間を見捨てたりするような行動で団全体を救うのは傭兵として当たり前とは───よく言われていたからなあ・・。
「ディッポ団長の様子は?」
各々の診察を終えた後、未だ寝続けるディッポ団長の様子を診る【人土】の医者に話を聞く。
「魔力の流れは、他の【変換機】を着けた方々と同じです。
身体的には疲労でしょう、としか。
───詳しい検査は練習中ですので今はコレ以上のことは・・」
「練習中?」
「【巫女】様の汚水から超純水を取り出す魔法を拝見致しまして・・採取した血から特定の病原などを取り出せないか・・と」
「そ・・そんな事出来るんですか!?」
「理論上は。
【巫女】様に炎魔法用の油を献上された彼などは、何処かで原油を見つけた時にガソリン等を精製する練習中ですし」
あー、ソレは助かるなあ。
「カンタよ。
コレからどうするのであるか?
我等はオマエ達に付いていくのである」
「えっ?」
「【銀星王国】には居れんしの」
「す、済みません」
「気にするな。
タゥコは家だ車椅子だに、クジャラはオマエ達の服に興奮しっぱなしであるしな。
リーダーであるカンタに任す」
・・。
・・・・。
・・・・・・。
「・・はいぃ?
りいだあぁ??」
「団長が目覚めておらん以上、傭兵業も行商も出来ん。
ワシ等はオマエに任す。」
「で・・でも立場的には」
「立場的に『対、村破級』は何も言えませんぞ、『対、街破級』様」
「ましてやアナタは『対、城破級』になろうという御方・・」
「おおっ、英雄ヨランギの再来なり!」
オッサン連中がココぞとばかりにニヤニヤしながらからかってくる。
燃すぞ。
颯太やまだ傭兵をやるには幼い子供たちはキラッキラした目で見てくる。
騙されるな。
悪意なきエロ親父達の悪ふざけに。
奥さんたちは旦那の性格を知りつつ、間違ったことは言ってないという感じで。
【人土】の皆は同然だと言わんばかりに胸をはる。
父さんと彩佳は・・目をそらす。
あっ・・このッ!?
「仕方ないッスよ。
オレ達が動けないのも本当。
ココに頼るしか無いのも本当。
【空の口】をどうにかしようと思ったらカンタさんに従うのが一番手っ取り早いのも本当ッス」
「・・・・・・・・・・・・・はあ。
ジキアは俺を助けてくれよ?」
「も・・もちろんッス!
頼りにしてほしいッス!」
まあ姉妹傭兵団は結成時、ディッポファミリー傭兵団と姉妹提携したんだ。
この結果も、やむナシかあ。
「じゃあまずは・・【銀星王国首都】所属傭兵団が空っぽの今、傭兵ギルドに行くのは?」
「車なら、洗脳された奴等が帰ってくる前にケリをつけることは可能だの。
ただし救う人間は2名まで。
ついでに両傭兵団の貯金をおろすなら帰りは金でいっぱいになるからの。
強襲メンバーはジンイチロウ殿とソウタとワシだけだの」
「私なら何時でも良いぞ」
「僕も!」
「じゃあ御願いします。
俺達はまっすぐ、はぐれた仲間の居る方角へ進むんで」
源太ちゃんの魔力パスがくる方角と【銀星王国】とでは、まったく違う。
女学園の皆も何処に居るか、分からない。
流石に家土地この人数を運ぶのに、遠回りはキツい。
「その仲間はドコに居る?」
「距離が有りすぎて方角しか・・。
地図上ではコッチ───どこまでも何も無い方角なんですよね」
「・・・・」「・・・・」「・・・・」
ん?
三人が地図の俺が指差した辺りを注視する。
「なんか有るんですか?」
「・・ウエストのが遠征に行った場所と同じ方角での」
「【空の口】の手下の戦士が行く場所など、【空の口】の敵が居る場所・・であるな」
ウエスト傭兵団は『対、街破級』を目指しており、傘下傭兵団は他の街所属にも居る。
規模だけならディッポファミリー傭兵団とは比べものにならない。
個人の戦闘力は───団長のウエストさんの実力は分からないけど副団長のイーストさんは・・たぶんリャター夫人より弱い。
日本の技術者・研究施設を巻き込んで、色々怪しい植物を手にいれたビタもいる。
たぶん源太ちゃん達が負けることはないと思うけど・・。
「じゃ・・じゃあ、早速行動開始しましょう!
颯太、父さんを守ってくれ」
「うん!」
「彩佳、クワガタを何匹か頼む」
「大事にしてよね」
◆◆◆
颯太達と別れて暫く。
通り道にやや近かった【北の村】に彩佳のカメラクワガタを飛ばして貰う。
村民全員を確認出来はしないけど、弱洗脳者ばっかだ。
でも・・たぶん───
「鳴らしてくれるか」
「ええ」
カメラクワガタに追従するクワガタに、父さんが仕事で使っていたボイスレコーダーを持たせてある。
・・中身は───
『クラッゲさん、ナムァコさん、女学園のみんな、居たら合図を御願いします!』




