181『ファンタジー母親のようなロリ母ではありません。』
【銀星王国首都】に到着。
国民の殆んどに自由意思がないというだけあって、夜出歩く人間がまったく居ないな。
寄生虫探査魔法で、唯一出歩く完全洗脳者のみ注意して進む。
馬車が何台も走ることを想定されて出来た街並みだ。
車で走れない所は少ない。
ソレでも車に馴れた人から───
「コレだとコッチより二つ向こうの道のほうが走りやすい」
「馬車より切り返しが楽だし、このルートをゆけ」
「( 俺の胸を見つつ ) 馬車より揺れんな・・ぎゃあ!? ( ←彩佳のクワガタが頭に停まって爪をくい込ませた )」
「カンタの国は巨乳の国かと思っていた・・ぎゃあ!? ( ←彩佳のクワガタが頭に停まって爪をくい込ませた )」
───だといった、意見をもらう。
やがて三等区と二等区の境の門へ。
『対、村破級』たるディッポファミリー傭兵団は二等区民なので、どうしてもこの門を抜けなければいけない。
「門・・空いてんだな・・?」
「犯罪らしい犯罪なんて無いスし・・自由意思の低下した彼等には、二等三等の区別意味はあまりないッス」
「なら何であの門番はいるんだい?」
父さんが周囲を伺いつつ問う。
「身についた習性スよ。
自由意思が低下してるんで、門番の意味が無いって分かんないらしいッス」
「じゃあ野菜農家は野菜を作り続け。
八百屋は野菜を売り続け。
・・って事か?」
「ええ。
程度の差こそあれ・・オオヨソ前の【銀星王国】と変化は無いッス。
・・見た目だけは」
昼間は以前通り───何となく食材屋が食材を売り、何となく普段買っている食材を買い、何となく家で調理して食う・・。
「まあ、関係無いヤツ等が大人しくしているだけっつうなら静かでイイかなあ」
「うむ、幹太と颯太に源太ちゃんさんの敵が居なくなるのは歓迎だ」
「おぉ・・。
この姉妹家族以外にはドライな対応・・懐かしいの」
「そして親子ッスね・・」
よくこの手の展開で
『人と人が自由に愛しあったり喧嘩したりするのが良い』
とか言う主人公とか居るけど・・知らない、どうでもイイ他人の責任なんて取れないよ・・。
「コレのドアを開けてくれんかの。
音で片方の気をそらすからの」
弓矢を取りだすヒトゥデさん。
狭い車内で音も出さず ( ぶつけず ) 構える。
「窓を開けますね」
「うおっ?
勝手に ( 馬もなく ) 進むわ、窓は勝手に開くわ・・凄いの。
・・まあエエの」
三等区と二等区の壁に、門番の片方だけがギリギリ反応する絶妙な位置へ矢を射ちこむ。
「う・・? あ・・?」
「退いた・・進みます」
そして───ディッポファミリー傭兵団事務所へと辿りついた。
◆◆◆
「母さん、ただいまッス!」
「ジキア、お帰りなさ───ひっ!?」
ジキアが事務所の玄関の戸を開けると優しそうな女性がいた。
あの人がジキアの母親か・・。
野獣系のディッポ家にしてはジキアはカワイイ系の顔だなとは思っていたけど・・ジキアは母親似なんだな。
そのジキアの母親はジキアの顔を見てホッとした声ののち・・後ろのディッポファミリー傭兵団の顔を見て小さな悲鳴をあげる。
まあ・・仕方ないよなあ・・。
「母さん、兄さん達は正気に戻ったッス!」
「えっ? ええっ?」
「ジキアの言うことは本当での。
済まなんだの、リラキア」
リラキアさん、というのか。
リラキアさんは徐々に涙を浮かべ始める。
「ほ・・本当に・・?
本当なのね、ジキア!?」
「本当ッスよ、母さん。
コチラの女性のおかげッス」
「あ、どうも初めまして。
秋原 幹太といいます」
そう名乗ると、リラキアさんはパアッと表情を明るくする。
「まあ! 貴女があの・・!
話しは常々、息子と義父から聞いておりますわ!」
「ど、どうも」
名乗った瞬間、感情レーダーが爆発すんのかってぐらいの善意を向けられる。
うっ・・可愛らしい人だし、ちょいドキッとした・・。
「リラキアさん、取敢ず挨拶は後で。
まだ、街人の洗脳が斯斯然々───」
「わ・・分かりましたわ!」
俺とジキアが両肩を支え、リラキアさんを車に。
ヒトゥデさん達は寝続けるディッポ団長や他のファミリーを車に乗せる。




