179『トイレを挟んでの大・激・戦!』
「颯太、魔力吸収出来そうか?」
「相手に触んないと無理かな」
「わ・・我等には、この壁が分厚過ぎます」
魔力付与された、数十tの土だからなあ。
「貴様ぁぁ、我等を誰と心得るっ!?
『対、村破級・ディッポファミリー傭兵団』だぞっ!!?」
「ヒトゥデさん・・幹太と颯太です。
一緒にこの『魔物の森』で【コカトリス】とかを退治したことを覚えていますか?」
「貴様ぁ誰だぁぁぁ!
いや、誰であろうと関係なぁいいぃ!」
「我等に従えぇぇ!
秩序に従えぇぇぇっ!!」
「秩序・平穏・安寧!
秩序・平穏・安寧!
秩序・平穏・安寧!」
──・・シ・・ッ──
「世界に平和を!
我等が平和を!」
──・・ピ・シ・・ッ──
「な・・何の音ッスか・・?」
──ピシ・・ピシピシ・・──
「逆らう者に死を!
ジキアに死を!」
──ビキィッ!!──
「彼等が脱出しようと壁を破壊して・・?」
「・・違うわ、オジさん。
幹太と颯太から───
二人が触れてる部分から音がしてる」
──バギィッゴキィッ──
「み、【巫女】様!?
あの鉄板より堅い、超圧縮された土壁を───」
「か・・カンタさんはあの巨大な土壁を作った魔法より、更に巨大な魔力を・・!?
ソウタちゃんは素手であの土壁に亀裂を・・・!!?」
「逆らう者に死を!
ジキアに死を!
我等ディッポファミリー傭兵団に従わぬ者に死をっ!」
──ゴガッ! ガガンッ!!!──
「・・イラつくなあッ!」
「・・ムカつくなあッ!」
◆◆◆
「ふぁ、【ファフニール】の時とほぼ同等魔力の土壁を上回った・・!?
【ファフニール】の時より更に魔力が強く───」
「そうなのか?
幹太のやってる、ゲームの『敵を倒してレベルアップ』みたいな・・?」
「いいえ・・違うかと思われます」
「と・・言うと・・?」
「みずから生み出す魔力のみ頼りにする、魔力の無い世界から・・周囲に幾らでも魔力有る世界へと来た───
言うなれば、『高地トレーニング』をやっていたようなモノかもしれません」
「【巫女】様やソウタ様と比べ、微々たるチカラでしたので『そんなモノか』程度の認識でしたが、確かに我等も魔力を生みだす勢いが大きくなりました」
「言われてみれば・・アタシとクワガタの魔力パスが強くなってたり、クワガタが強くなってる気がするわ!」
◆◆◆
イラつくムカつくハラがたつ・・!
なんだ、なんなんだ。
何の権利で俺達の恩人を奪った。
・・。
・・・・。
・・・・・・。
目の前の・・知り合いに似た『コレ』はなんだ?
要らない。
こんなのは要らない。
◆◆◆
ディッポファミリー傭兵団のみんなをオカシくした奴。
理太郎君とのデートを邪魔した奴。
僕を操って理太郎君を怪我させた奴。
幹太姉ちゃんを・・殺させようとした奴・・。
ああ・・ヤダなあ・・。
僕の中の、『悪い僕』が暴れてるみたいだ。
父さんとケンカした時より、もっと───
もっと・・もっともっと・・。
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっとモットモットモットモット・・。
モットモ・・ワルイボク・・!
◆◆◆
「さっさと、こんな穢らわしい場所から出せぇぇぇ!」
「逆らう者に死を!
ジキアに死を!」
・・・・・・。
「・・何故ジキアを?
頑張っていたじゃないですか」
「奴は偽物の愛を騙ったああぁ!
真実の愛・忠誠・信義は我等に、【空の口】にのみ捧げればいいぃぃぃ!!!」
・・はぁ。
キッツいなあ・・。
「ちょい・・ダマレよ」
オマエらを喰うから、さ。
◆◆◆
「・・コレは・・・!」
「な、何スか?
カンタさんの、新魔法スか?
周囲の魔力が・・薄く───」
「み・・見えるぞ・・!
幹太、颯太───
コレはパスを喰っているのか・・?」
「み・・【巫女・・化】!?
───大丈夫なのっ!??」
「【巫女】様っ!?
我等も共にッ!」
◆◆◆
「我等に逆らう者・・に・・死───
なんだ!?」
うーん、不純物は無いなあ。
そうだねぇ。
「が・・がが・・・・かっ!?」
ご飯無いなあ。
精々コレか?
素麺かな?
あんまり美味しそうじゃないねぇ。
まあイイや。
頂きます。
ご馳走───でも全然ないけど・・さま。
足りないなあ。
足りないねぇ。
中身の方は、美味しそうなんだよなあ。
ヨダレが出ちゃうねぇ。
うーん・・喰いたい───いや食いたいなあ・・。
僕は・・喰うだけでイイや。
食うのは・・向こうのだけで♡
じゃあ俺が頂きまァーーーぎにゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!?」
◆◆◆
「ほら、オジさんも颯太のおっぱい揉んで!」
「いやいやいや!?
いかな正気に戻す為だからって、父親が娘の胸を揉むのはどうだろうか!?」
「えっ・・?
じゃ、じゃあオレッス───」
「「ぁ"あ"ん"っ!?」」
「ゴメンなさいッス!」
「オッサン達が揉んでヤろうかの?」
「黙れエロ親父!
正気に戻ったんなら大人しくしてなさい!
───なんでこんな揃いも揃って幹太達の恩人ってエロ親父にエロガキばっかなの・・?」
「お、オレはエロじゃ無いッス!」
「うっさい!
アンタが一番危険なのよ!」
◆◆◆
「いやはや、面目無いの」
───どうやら颯太と深く同調しすぎた為、知らぬ間に【巫女化】していたらしい。
目覚めると、微笑む彩佳の膝枕。
恐怖の時間が脳裏を掠めると・・「 今回はやむ無し 」 との事になり、1ぎにゃあで許してくれた。
1ぎにゃあって何?
「カンタ達にもジキアにも本当に済まんことをしたの」
「ヒトゥデさん、覚えているんですか」
颯太の1ぎにゃあが終わったころ、ディッポファミリー傭兵団がやってくる。
良かった、正気の目だ。
「紛れもない本心だったからの」
「えっ?」
「カンタも知っての通り、嘘をついたり感情が動けば魔法使いで無くとも周囲の魔力が動く」
「そうですね、イェカさん」
「なら、周囲の魔力を完全にトレース出来たなら・・どうなると思う?
例えば・・楽しい時に怒りの魔力をトレースしたなら?」
「───・・シャッコさん!?
た・・確かに『魔力=感情=魂』といったトコは有ります!
相手の魔力を操れるなら魂すらも───」
あ、いや、でも・・そんな・・!?
「相手の魔力を操るのがどんなに難しいか・・今でこそ【ワーム】を爆散させずに倒せますけど」
「倒せるんだの・・」
「でも感情をどうこうなんて───」
濁流の川の水分子の動きをすべて、計算しつくすようなモノだ。
カオス理論だよ。
「ソレをやるのが【空の口】って事さ」
「ウーニさん・・」
「今。
カンタとソウタが『操り糸』を切ってくれなければ・・【空の口】の魔法の形に魂が定着していた頃であろう」
「アナナゴさん・・」
「だからの。
詫びという訳じゃないが・・膝枕をやらせてヤろうかの」
「分かりました。
ではコッチに───」
「ってえぇ・・違うでしょうがっ!
なんで乙女に膝枕させて、詫びになんのよ!?」
詫び代わりに、俺の膝へ頭を乗せようとしたヒトゥデさんの頭をサッカーキックで蹴りぬく彩佳。
彩佳の攻撃をヒトゥデさんが完全に見切っていたから問題無いけど・・今の、滅茶苦茶エゲツナイ技だぞ。
「こんなエロ集団、詫びるってんなら顔面踏みぬきゃあイイのよ!」
「うむ・・ソレ、よいな♡」
「死ねっ!」
まあとにかく・・残りのディッポファミリー傭兵団はクラッゲさん、ナムァコさん、タゥコさん、クジャラさん、ディッポ団長か。




