177『ひと風呂覗きに行こうぜ!』
「コッチのレモンは結構美味しいわ」
「じ・・ジキアならもっと沢山の食材を知っているんだけどなあ・・?」
「アタシ、クワガタが見極めてくれるもん」
「・・でもコレ以外だと、ソックリな毒の奴あるから気をつけなきゃなー・・?」
「完全栄養食なら皆と合流するまでコレだけでイケるな!」
ついつい【人土】の本能に従って【スライムプール】で微睡んでいた間に、彩佳と父さんが・・ジキアにある誓約をさせた。
『事情が事情だし、ウチには置く。
しかし道場まで!』・・と言うのだ。
「今の幹太は女・・しかも母さんソックリの美人なんだぞ!?
男なんか・・男なんか危険すぎる!」
父さん、母さんに何したの・・。
「ジキアは信用出来るって。
旅の修行時代、一緒に寝てても手ェ出さなかったんだから!」
父さんと彩佳が真顔になる。
・・チャンスかっ!?
「あまりに襲ってこないから同性愛を疑って、ちょっと露出度の高い服を着"て"・・っ!?」
彩佳にフライングクロスチョップを食らう。
何故に!?
「アンタねえ・・いっぺん死んどく?」
「・・死にたくは無いです」
「い・・いや・・幹太が気づいて無いだけで、お風呂を覗くぐらいしたかも───」
「えっ!?
いやアレは覗こうとして覗いた訳じゃなく・・!?
・・そりゃまあ男達が風呂の時間ってのは知ってたし!?
風呂場の位置は知っていたけど・・!?
用があったのはその先だから!?
いや、ホントに!?」
「死ねっ!」
彩佳のハイキックが顔面にクリーンヒットする。
理不尽なり。
◆◆◆
せめて食事だけはジキアも居間でとる許可が出た。
「い、いや・・御父様は家に入ること以外は凄くイイ食事や布団やお医者様まで・・好くして貰ってるッス!」
確かに食事は貴重な食材を使った病人食。
布団は御客様用のキレイなやつだ。
「で、ジキアの状態は?」
「最初の見立て通り、軽い栄養失調ですね。
数日安静にしていたら完治しますよ」
「そうですか。
良かった」
という訳でジキアを家に。
「ら、ランプを壁や天井に埋めてんスかっ!?」
「い、板ん中で絵が動いてるッス!?」
良い反応するなあ。
ビタより子供っぽいトコがある。
この辺、中一男子って感じだ。
「蓄電率ってどんなモン?
日本だと、家のまわりにソーラーパネルを邪魔する高いモノってなかったけど・・」
コッチに落ちてきた時、周りの木々は薙ぎ倒した。
ソレでも日影になる場所はある。
「今日ぐらいの天気なら問題は無いがな。
父さんも仕事でパソコンを使ったりしていないし、日本より過ごしやすい気候だからエアコンも必要ないし・・。
ただ、酷く曇ったり雨だと発電機がいる」
「えっ?
ウチにそんなん有るの?」
「颯太しだいで異世界へ行くと決めた時に買った。
リャター夫人と同じ、車に積んで行くつもりだったが・・まさか家ごと来ることになるとは」
「ああ転移する前・・ウチと【人土村】までを往復した時、やたら車内の荷物が多いと思ったら・・」
「水道は彼 ( 【人土】の水道工事業者 ) が、昔買ってあった貯水槽と繋げて下さるそうなので水さえ確保出来れば使える」
「 魔物の森は水源豊かなんで大丈夫ッス 」 と、ジキアが恐る恐る発言すると父さんは若干照れくさそうに 「 うむ 」 と返答する。
ほら、ジキアは便りになるんだって!
「ああ、後は下水道はアウトだから、トイレは使わないように」
「なら後でその辺に土魔法で仮設トイレを数ヵ所作っておくよ」
転移して間もない頃、ディッポファミリー傭兵団と旅をしていた時・・野営地や水源のある場所で休憩する毎に作っていた。
後のウワサで、トイレ以上に魔物や盗賊からの避難場所としての価値がでたと聞いた程に安全性には自信がある。
「暫く立て籠りするのに必要なのは後は食糧だな・・。
魔物の森で旨いヤツは【アルラウネ】と【ビッグボア】か」
「【アルラウネ】はたぶんもう居ないッス。
【ビッグボア】は今の時期、群れてるんで危険スよ」
「群れてんなら食糧不足の心配ないねぇ」
「ああ、そのウチひと狩りしに行こう」
「そういや、こういう人達だったッス・・」
「こういう人達とはどういう意味だね!?」
さあ、ディッポファミリー傭兵団はどう出るか・・?




