173『転移。( やっと。)』
「異世界へ行く手段───
ソレは我等【人土】の最奥の秘です・・!
も、モチロン【巫女】様に秘するつもりは有りませんが長年の修行の果てに会得する───」
スーツ姿の【人土】代表代理・・実質的に現、最高責任者達があたふたする。
まあ、幼い頃より魔法訓練を重ねる彼等からすれば・・適当こいている小娘にしか見えないだろうなあ。
しかも手ぇ出そうとしてんのが、超絶難度・・失敗すりゃあ『死』って魔法だ。
「無論、言わんとするのは分かります。
今回の『8人がやった転移』の魔法・・実験時から見学してますけど、六割程度しか分からなかったですから」
「六割・・我等数百年の研鑽が・・魔法を覚えて半年足らずの───い・・いえ、流石【巫女】様ですね」
転移の魔法。
最初は、魔力を消滅させる『世界の何某』をどうにかする所から始まったらしい。
原因は・・今となっては定かではないけど、何人もの ( 地球人の血が入る前の ) 【原人土】が死んだらしい。
( 日本に再転移した日、源太ちゃんの体にヒビいったアレか? )
生き残るため、『世界の何某』と付きあうウチに世界の壁そのものに干渉する術に近づいていった・・との事。
やがて、世界の向こう側から綻びが広がり初めた時に『封印魔法』となり・・今回の『転移魔法』となったワケだな。
「俺も疑似的な『世界の何某』に対処する魔法や『封印魔法』は研究したんで。
後は・・記憶にはないけど二回転移しているし」
「はぁー・・」
「後はコッチから『扉を開ける』部分と『向こうへの道標』辺りが一番問題だったんですけど」
「分かった!
『向こうへの道標』ってのは源太ちゃん達のパスを使うんだね、幹太姉ちゃん!」
「ああ。
流石は颯太だ!」
「扉を開ける方はどうすんのよ?」
「すでに『開いた扉』を使うつもりだ」
「すでに・・って、幹太!
まさか───」
「うん。
源太ちゃんのは山柄さんが封印したけど・・俺達のは、封印の必要無いぐらい安定してて実は手付かずなんだよね」
───というワケで我が家へ。
◆◆◆
〔 A班、異常なし 〕
〔 B班、不審者発見。
排除する。
【巫女】様、命は? 〕
「んー・・問わな───」
「問いなさい!
済みません、穏便に・・!」
「父さん。
【人土】ジョークだって♡」
〔 そうですよー 〕
「えっ? そうだったの??
邪魔じゃないかなあ?」
「颯太?」
〔 B班、排除完了。
やはりマスコミですね 〕
【人土】のサポート部隊の方々に先行してもらい、自宅付近を偵察。
無人の家に無人って分かってて取材するアレ、何なんだ?
視聴者は家が見たとでも思ってんのか?
「ハイハイ、親子漫才は終わり。
やっぱ、有名人になってんのね。
───はあ」
「・・彩佳ちゃん、やっぱりお家に・・」
「うーん、ごめんなさい。
やっぱチョットねー・・」
彩佳ん家は、なあ───
奈々とは挨拶したかったかも・・ん?
彩佳ん家から、誰か・・って奈々か?
「あ・・アンタ達、異世界行きに失敗したの!?」
ああ、そういや彩佳は奈々と魔力パスが繋がっているんだっけ。
彩佳が異世界へ行くつもりだったのは知ってたんだろうし、その彩佳が異世界へ行かず家に近づいてきたら不審がるのも当然か。
「斯く斯く然々で・・」
「ふーん・・まあ、早く幹太ん家に入った方が良いわ。
今パパが出掛ける準備してるから」
「分かったわ・・。
有難う・・奈々」
今、彩佳が両親と合うのは面倒にしかならなさそうだ。
「幹太バイバイ、ビタちゃんによろしくね」
「ああ。
ビタも奈々が好きだったっぽいし、色々世話になった」
「ん」
・・本当は、奈々も異世界へ行きたがっていた・・らしい。
でも色々あって残ると決めたそうだ。
◆◆◆
コッソリと我が家の道場へ。
道場の角、いろんな本で円陣が組まれている。
図書館の本は【人土】の人が同じ新しい本を寄付したそうだ。
「───俺達が初めて異世界へ行ったこの場所・・ココからもう一度、異世界へ行く!」




