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165『始めてのキャッチボール。』


山柄さんの元・本拠地。

【アジ・タハーカ】にほぼ破壊されたビルと、周辺の土地・工場。


元々、人気ひとけが無かった広大な土地が【アジ・タハーカ】事件によって更に人が離れたそうだ。


なので、安くなった土地と建物を大人買い ( 本部の金で ) して、今や一帯は【人土じんど】の村と化していた。


この村に関係者のほぼ全てが集まっている。




「コンビニエンスストア【JINDO】・・」


「向こうに、もう二号店があったんだけどアンタのブロマイドとか写真集とか売ってたわよ」


「え"っ!?

聞いてないんだけど!??」


「フィギュア付き初回限定版、100部即日完売したんですって」


「超聞いてないんだけど!???」


『ワタクシ、買いましたわ!』




ソレでこの前、通帳を見たら知らない入金があったのか・・。




「ボクのプロデュースです」


「変なことすんなよ、オッサン!?」


「上司に買い逃したって報告したら滅茶苦茶に怒られたよ」


「何やってんの、自衛隊!?」




特番を作ったディレクターと自衛隊員の崖下さん。


最近この二人と行動することが多いが・・そういや 「 特番用 」 っつって写真を撮られた記憶が・・。




「水着無しでこの売上は脅威的です」


「っさい!」




・・もういい。

忘れよう。


広大な土地の端っこに、TVクルー用の建物と自衛隊用の建物がある。


自衛隊は【アジ・タハーカ】襲来時に警察が通せん坊していた、この辺唯一の出入口に戦車をおいてある。


空には戦闘機や戦闘ヘリ。


周辺もマシンガン?

を装備した人が警備していた。


表向きは【アジ・タハーカ】調査の為と言って、立入禁止にしてある。

なので、




「入れろ」


「情報の隠蔽、許すまじ」




といった抗議デモとかがウルサイ。


主だった構成員は被害者達だが、そのバックで思想操作しているのは ( ココに入っているTV局以外の ) マスコミ・警察・野党 ( 一部与党も ) ・アメリカ ( というかいろんな国 ) 等々だろうとの事。




「───幹太、そろそろ始るぞ。

『【空の口】の脅威』特番。

皆も、ぞくぞく帰ってきている」


「ん、分かったよ。

父さん」




颯太・・帰ってくるのかな・・。



◆◆◆



『あらあら』


『お・・御姉様と学園長が 「 てれび 」 の中で喋って・・わっ!?

ワタクシの顔が・・曇っていますの!』


「コレがモザイクってヤツだ」


「ぎゃあ!?

今のシーン、なんでヨレヨレのスエット姿のアタシが写ってんの!?

無し、今のナシでっ!」


「ほぼ【人土じんど村】でのオールロケだからだろ・・。

彩佳、最近ずっとこっちに居るしさ」




ネグレクト気味だった彩佳は再構成されてからこっち、【人土じんど村】で家を借りて一人暮しを始めた。


学校もやめ、山柄さんの会社で魔力・異世界関連の部署で働いている。


家族の縁を切ったワケじゃあ無いみたいだけど。


あの両親が五月蝿く言ってこないのは奈々の助力があったらしい。

ソレ以上は言わないので聞かない。




「うっわ、颯太とビタが揃ってインタビュー受けてるシーン・・ネットの反響凄すぎ。

さすがHE・N・TA・I☆国家」


「よし。

全方位に向けて極大爆発魔法(バンカーバスター)を撃とう」


「父さん、今回は目をつぶるぞ」


「止めなさい、二人とも」


『・・どんな評価なのですか?』




まあ冗談はともかく ( ほんのちょっとだけ )、ネットやTV局にくる電話などあまり良い反応とは言えない。




「特撮をもっと勉強しろ、ってのがあるわ」


「正常性バイアスって奴なのかな」




番組の内容は───


『俺が妹 ( 女体化は語らず ) と共にワケも分からず異世界へ転移した』


『魔物に襲われるも魔法を会得する』


『仲間と出逢い、強大な魔物を協力して戦う』


『再び日本へ』


『ソコで異世界の魔王の存在を知る』


『と、同時に異世界から魔王の手先が現れ始める』


───といった内容だ。

そして・・【アジ・タハーカ】の来襲。




「こんな事、起きる訳がない!」

「ヤラセだ!」

「政府が陰謀を隠している!」




・・といった意見が多い。




「恐ろしい映像を、公共の電波で流すな!」




・・という意見もある。

放っておけばTVの映像だけでなく日本全て・・いや、地球上の全てで現実になるんだけどなあ・・。




「俺が悪い!」

「俺が魔物を日本へ連れこんだ!」




・・っていう意見も少なくない。

まあ正直、予想通りだ。




「【巫女】様!

準備が整いました!」


「あ、ハイ。

今行きます」




番組は終盤。

収録部分は【アジ・タハーカ】まで。

ソレが終われば生放送部分・・異世界への扉を開ける儀式だ。


『【歪み】を封印を出来る8人』が『仮面』を被りながら円陣を組み、なんかムニャムニャやっている。


さっきも言ったように 「 俺が悪い 」 という意見が多くくるのは分かってたんで、俺のワガママで、俺の『仲間』にはモザイクか仮面をお願いした。


ザレと【人土じんど】達は 「 俺が言うなら 」 と収録時はモザイク、今は仮面を被っている。


颯太は俺と同じじゃないと嫌だからと。


ビタは【空の口】の敵、【人花じんか】として。


リャター夫人は異世界人の代表として。


───といった理由で三人は素顔で出たが。


源太ちゃんはそもそも出演していない。

というか存在ごと隠している。

若返り・死病の完治・・コレがバレるのはちょっとヤバそう、という判断だ。


人間、あんなに被害が出ているのに【アジ・タハーカ】を信じようとしない───


「都合の悪いことは絶対信じない」


という人間がいる。

その逆、


「都合の良いことは解釈をネジ曲げても信じる」


という人間もいる。

俺・父さん・源太ちゃん・彩佳・奈々で意見が一致し、源太ちゃんには【人土じんど】のフリをしてもらっている。

( 自衛隊は存命中の『秋原 源太』を捜してはいる筈だろうけど。)




「幹太さん、どうですか?」


「8人の間で魔力がグルグルと、パス回ししている感じですかね」




儀式には外にも色々条件があるらしいけど、流石に【人土じんど】数百年の歴史 ( ご先祖の書物を考えると、ソレ以上? ) の最奥ゆえ、一見では真似出来そうにない。


8人の円陣から一周り小さくした直径30mの円、もうすぐ・・この中の『空間』が『扉』となる。




「下がって・・下がってーッ!」




自衛隊員が周囲で観覧している人間を下げる。


コレより規模の小さい実験では100%成功している───が。

やはり不測の事態に警戒はすべきだろう。




「正直・・TVマンとして、下がりたくない想いも有ります・・が」


「あっ・・内円の外側から魔力が逆回転し始めて・・」


『魔力の見えないワタクシにもハッキリ感じますわ・・!』


「アタシはギリ、見える・・かな。

徐々に魔力が中心点へ───」





───幹・・た・・・ねぇ───





「・・!?

颯太ッ!!?」


「幹太?」




今・・颯太からのパスが───




「幹太・・感じたな!?」


「ああ、一瞬颯太から乱れたパスが来て・・今は『普通』のパスが来ている!」




突然、狼狽える俺。

突然、現れた源太ちゃん。

場が騒然となる。

───けど、知ったこっちゃない!




『あらあらぁ!?

突然魔力のパスがオカシくなるって・・』


「【アジ・タハーカ】が襲来してきた時と同じだっ!」




俺の言葉に、場が・・特に自衛隊が騒然となる。

8人も集中が乱れるが・・。




「ひょっとしたら、そのまま【空の口】をブッ飛ばしに行くかもしれん!

儀式は維持!」


「「「【巫女】の御心のままに」」」


「彩佳、颯太のクワガタは!?」


「待ってて・・!

───!?

颯太がいない!

理太郎だけ、○○通りをコッチに走って来てるわ!」




パスは動いて無いぞ!?




「源太ちゃん!」


「うむ」



◆◆◆



「理太郎君!」


「そ・・颯子の姉ちゃん・・!」




デモ隊をかきわけ。

俺と源太ちゃんに、彩佳のクワガタ数匹と自衛隊の車二台が付いてきつつ【人土じんど村】から出て暫く。


必死に走ってくる理太郎君を見つけた。




「颯子が・・颯子が・・!」


「颯子に何があったんだ・・!?」


「そ・・ソレがよく覚えてないんだ・・!

ただ───ナンかに襲われて・・颯子につき飛ばされて・・!」


「危ないっ!」




自衛隊の言葉に、自分の防壁魔力(トーチカ)全力(フル)で周囲へ広げる。


途端に防壁魔力(トーチカ)が何かをはじく。


───ソレは・・とんでもないスピードで飛ばされてきた、直径1mはあるコンクリート片。


コンクリート片そのものは、【アジ・タハーカ】に破壊されたこの街で未だ至るところに落ちている物。


・・けど。


こんな物を、こんなスピードで、投げ飛ばせるのは───




「かアアァァァんンンたァァア姉エちャンンンン・・♡

あァァァそォォォぼオォォォォっ♡♡」


「───颯太・・っ!」


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