162『「幹っちゃん・・。」 「今更だろ・・。ホントは15話 ( 第120部 ) ぐらいで登場予定だったんだぜ」』
「絶対コレ、文明のブレイクスルーが起こるよなあ・・」
「そういやアッチに魔道具ってあんの?
魔動TVとか魔動ランプとか」
「無いなー」
リャター夫人のトラックを見ながら彩佳とザレとダラーっとしている。
リャター夫人は源太ちゃんと山柄さんの部下とともに一緒に欲しい物を最後の一瞬まで集めている。
あ、タコ焼き用の鉄板?
「絶対にトラックごと転移出来ると、決まっているワケじゃない・・って言い直したんだけどさ」
「タマにリャターさんの物欲が怖い時があるわ」
「リャター夫人って色んな顔があるからなあ。
俺達やザレ達、女生徒の保護者って顔を見る機会が多くて忘れがちだけど。
今はリャター商会会長の顔だ」
『本来、学園長は大商家の娘ですから。
寧ろ本当の戦場ですわ』
「確か女生徒の殆んどがその商会に入るんだって?
まっ、ソレ考えりゃ商会おっきくするチャンスよね」
ビタと奈々は、ともに野山へ。
有りったけの植物や茸を【人土】の猟師やボーイスカウト経験者と共に集めまくっている。
特に狙いは通常の手段で手に入らない・・ゴニョゴニョ・・な、奴だな。
「彩佳は?
黒キノコ以外の茸は操れんとか?」
「アタシは極フリ型なの───って言いたいけど・・。
やっぱ奈々って何ヤらせても凄いのよねえ、あんな沢山のキノコなんて操りきれないわ」
『あの沢山のクワガタは?』
「アレは相互理解っていうか・・ある程度お願いしたら向こうが合わせてくれるのよ」
『・・ふーん』
「・・ふん」
等々、話していると父さんが御茶を持ってきてくれた。
あまり美味くない御茶を飲んで以来、自分が御茶好きだったと気づいたんで意識的に飲んでいる。
「幹太姉ちゃん、父さん、行ってきまーす」
「ああ、気をつけてな」
「暗くなる前に帰るんだぞ」
颯太がおめかしを終え、出かける。
異世界にいた頃は通信手段もなかったし別行動なんて考えられなかったけど、今は携帯はモチロン魔力のパスも御互い完璧だ。
特に問題はない。
『御父様とソウタ様はもう仲直り、なされたのでしたっけ?』
「なんか微妙っぽいんだよな。
御互いが御互いの意見は完全に理解出来てて・・でも、譲れない所もあって」
「わ・・私達の事か・・?
そうだな───だけど、颯太のクチから『離れ離れになりたく無い』と、聞けたんだ。
あとは私の我儘だからな。
颯太の決断にまかすよ」
【アジ・タハーカ】を倒した日の晩、颯太が父さんに謝っていた。
父さんも謝っていた。
家族はどうあっても助ける。
自分の家族さえ無事なら他人がどうなろうと構わない。
───どっちも等しく分かるしな。
「・・で、だ。
颯太は、その・・今日どうなんだ?」
「さあ・・俺はその辺、首つっ込まないつもりだし。
ソレこそ颯太の決断に任すよ」
「し・・しかしだな」
その颯太は・・。
◆◆◆
「楽しいねえ理太郎君!」
「そ・・そうだな、颯子」
「今度はアッチの山に行こうよ♡」
「えっ!? ちょ・・待っ!
お、降ろせええぇぇぇ・・・!?」
「コチラ【アルファ】。
颯太を確認、めっちゃイイ笑顔だわ」
「こ、こちら【ブラボー】。
そうなのかい!?
変な手の繋ぎ方をしてないかい!?」
「・・ハァ。
こちら、【チャーリー】。
父・・【ブラボー】、心配し過ぎ」
颯太は日本最後になるかもしれない日を理太郎君とのデートに費やしたいそうで、昨晩から彩佳のアドバイスとともにオメカシしていた。
( ドチラかと言えば彩佳って野暮った・・ゴメンなさい。 )
デート如何で、異世界へと旅立つか決めるらしい。
俺としては・・颯太がイイなら誰でもイイ ( 真贋善悪を見ぬける颯太が選んだんだし ) んだけど───デートだと知った父さんが・・スンゲェそわそわしている。
「・・その、まだ男女交際は早くないかい!?」
『「「男女交際て・・」」』
俺達の女体化に未だに慣れてないトコがあった父さん。
俺達が一緒に風呂に入ろうとすると戸惑ってた父さ 「 幹太!? もうオジさんと御風呂はいっちゃ駄目って言ったでしょ!?」
「お、俺は【チャーリー】だ!」
と・・とにかく。
俺達を男として扱うのか、女として扱うのか、迷っていた父さんが・・今は割と颯太を娘として見ている。
( 変な意味でなく。)
男だった時は特に言われた事のない『ナンパに気をつけろ』とか ( 当たり前 ) とかスゲえ言われていたし。
・・で、この出歯亀行為だ。
俺や彩佳やザレがストーカーしても魔力のパスでバレる。
父さんだとイザという時 ( 今みたいに颯太の脚力で走られるとか )、対処出来ないんで彩佳のクワガタを使っている。
・・自衛隊協賛の下、特殊カメラ搭載クワガタで。
「何、やってるんですか・・崖下さん」
「いやあ、颯太ちゃん人気あるんだよ?
・・あ、変な意味でなく。
お父さん、目が怖いですよ」
「誰がお父さんだっ!?」
話が進まないよ・・。
「見目良い救国の英雄で、今時珍しい大人を立てて気遣いの出来る娘だし。
モチロン幹太君もね。
何人かお見合い話もあるほどだ」
「フゴッ!?」
彩佳が豚鼻を鳴らす。
変な誤解をさせたく無くて黙っていたが・・余計な事言うなよ、オッサン!?
彩佳に睨まれる俺に睨まれて慌てて雰囲気を変える。
「真面目な話、救国の英雄の一人だからね・・正体を狙う人間はすごい数なんだよ」
「ソレは俺達三人、感じてましたけど。
颯太と源太ちゃんは耳で、俺は寄生ち・・生命反応探査魔法で逃げたり追っ払ったり」
「自衛隊も何人か排除した。
例のマスコミ男は犯罪まがいの事をし出すし・・プライドを傷つけられたままの警察は刑事ドラマの見すぎか、自衛隊が君タチをつかって国家転覆をはかっているとか言いだすし」
嫌な人気だなあ。
「だから・・まあ、あの理太郎少年がスパイだ──なんて言うつもりは無いけど・・こういう事も必用になるんだ」
「はあ・・」
初恋とかなんとか言っても小学生同士だしなあ。
国家が不安がるって・・。
「・・理太郎ってガキ・・おぶられつつ胸ぇ、触ってない?」
「「なにィっ!?」」
「必死に、しがみついているだけじゃん・・」
『男ってバカばっかですわねぇ』
「彩佳も一括りで話してない?」
◆◆◆
「───あー・・楽しかったぁ・・・」
「・・そうだなぁ」
夕方。
もうすぐ幹太姉ちゃんが出てるTVが始まる。
もう帰らなきゃいけない。
・・ヤだな。
「・・理太───」
「もう帰るのか?」
「う、うん」
「・・旅に行くって言ってたもんな」
「・・うん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あのね、理太郎君・・僕───」
「あのデカい化物を退治したの、颯子なんだろ?」
「・・ううん。
僕は手伝っただけだよ」
「ソレでも・・さ。
颯子のお陰で俺も母ちゃんも助かったんだ。
・・有難う」
「理太郎君───」
何だろう・・世界に僕たちだけしか居ないみたいだ。
さっきまで回りを飛んでたクワガタも気に成らなくなって・・代わりに心臓がすごくウルサ───
≪──あ─ああ─あ──あああ──≫
「えっ?」
≪──はえ─の──くせ─に───≫
【空】が割れ・・!?
≪──思惑─からズレ─るぅ──≫
まるで【空】が【口】を開けたかのように───
「アレが・・【空の口】・・!?」
『再転移編』プロットに無かった、予定外の話。
①リャター・ザレ・ビタの異世界組が日本に来た。
②『世界の何か』のせいで颯太・源太が気絶。
③奈々
④【クワガタ】・【ナーガ】・【アジ・タハーカ】の来襲。
⑤【人土】
⑥自衛隊・TV関係。
⑦その他、諸々。
早い話、前編終了時にやる予定だった話は───
①転移
②彩佳とのアレコレ
③父親との確執
④颯太の初恋
⑤父親との仲直り
⑥【空の口】襲来
───だけだったのです。
思いついた話は全部入れないと気がすまないタチなので・・。




