159『どんな業界にでも、人のミスのあげ足取りは好きなのに自分のミスのあげ足取られるのは嫌い、という奴は居る。という話。』
「んん?」「あれ?」
『どうされました?』
いきなりパスが来たんだけど、この不慣れな感じ・・誰だ?
「これ───奈々からのパスかしら?」
「奈々?
奈々って、魔力が無くなって暫く経つんじゃ・・?」
『・・って事は───』
彩佳の携帯に電話。
相手は奈々から。
〔ワタシからのパス、届いた?
彩佳から採取した菌糸を培養し続けて、ついにワタシも【人茸】デビューでェェすッ♡〕
マジか。
ザレに通訳すると、凡そ俺と似た表情。
○"○で純正品メモリーカードを買って家で開封したら、S○NY製ではなく『TA○』という中国製だった時の俺の表情。
怒りとか呆れとか湧きおこる前の、あの一瞬の、何ともいえない表情。
『何を考えているのでしょう・・いえ、チカラが無い者としてチカラを欲するのは分かるのですが』
「俺・・奈々とは繋がり、ウッスイからなあ。
よく分かんない」
「幹太・・アンタねえ・・?」
『御姉様?
乙女がああも告は───まあ御二人の元々の間柄を聞けば仕方ないのかもしれませんが・・』
「・・?」
二人から呆れ8割・怒り1.8割・安心0.2割の感情が送られてきた。
なんなん?
〔幹太は相変わらずっぽいけど、【人茸】の事だけで電話したんじゃなくて。
またコッチにマスコミが来たわよ〕
「あー・・」
【アジ・タハーカ】の時、俺達の正体は隠そうとしてはいたけど・・イレギュラーが多過ぎた。
自衛隊には『公然の秘密』って形でバレている。
一番最初に【アジ・タハーカ】と接触、撃墜されるも俺達に助けられた自衛隊員の『崖下さん』が、ソレなりに上手く俺達を報告してくれたらしいのと・・自衛隊のトップ連中に『ゴ○ラ』とか『異世界からの怪物と、ソレを退治する魔法使い』に理解がある隠れオタだった人が何人かいたそうだ。
・・なので、自衛隊は俺達に悪感情を抱いていないらしい。
( 現場は知らんけど。)
問題は・・世間への『悪役』を造るのが大好きな連中だった。
◆◆◆
───ピンポーン
「はァーい?」
「秋原幹太さん、あの事件で亡くなられた被害者遺族に何か有りますかっ!」
「・・はぁ?」
「とぼけるんですかっ!?
死者は二千人以上、怪我人は八千人もの被害が出ているんですよっ!?」
・・ああ、【アジ・タハーカ】の被害者の話か。
───んん?
ソレと俺達と何の関係があるんだ?
俺達は自衛隊と協力して、出来るだけ周囲に被害が出ないようしていた。
突然、何の脈絡もなく化物に殺された人に同情はするけど、こんな見知らぬ男に怒鳴られる云われはない。
・・ってコイツ、どっかで見た事有る奴かと思ったら───
「ああオマエ、巨大ヘビに向けて女性スタッフを突きとばしていた男か」
「───んな・・なな、なん・・っ!?
か、関係無いだろうがっ、この大量殺人犯如きがっ!」
何だコイツ?
何で俺達が被害者を殺したことになってんだ。
イラッとしつつ・・相手はマスコミだしな。
何処かに、仲間やカメラを隠して撮影しているのかもしれない。
この場は
「知らない」
の、一点張りで追いかえす。
しぶしぶ帰ってゆくマスコミ男がある程度離れたトコロで・・こっそり探っていた服やカバンの中をふくめ、所持していた全てのカメラやボイスレコーダーや携帯スマホのメモリーカード等を外からは見えない内部回路を焼ききっておいた。
◆◆◆
「済まない」
「何ですか、急に?」
マスコミ男が来て数日後、自衛隊の崖下さんがウチへくるなり謝罪してきた。
「君達を政治利用しようとする野党の若手が、君達の存在をマスコミにリークした」
「あー・・一人来ましたよ」
「我々の調査では君達を嗅ぎ回るマスコミはその男一人なんだが・・事件の大きさが大きさだからな。
おそらく、この流れは止められん」
そもそも、野党は───
何故自衛隊を動かした!?
何故自衛隊を動かして被害者が出た!?
・・みたいな感じにしたい、らしい。
その為の人身御供に俺達が選ばれた、らしい。
「自衛隊は、その・・【空の口】を」
「認知している。
あんな化物が・・明らかに人の命令を聞いて動いてたのだから。
人智を超えた魔王以外考えられないよ。
勿論、政治家連中も・・な。
だけど『ソレでも、ソレよりも』らしい」
「うぇ~・・」
「近いウチにマスコミだけじゃなく、ソッチの動きも有るだろう。
そして自衛隊はオレは君達の役に立てん」
「ハァ~~~~~~・・」
俺の長すぎるタメ息に、ますます場を無くす崖下さん。
「よくTVで見る国会に呼びだされるアレですよね?」
「・・・・・・」
何かを察し、無言になってゆく崖下さん。
「【アジ・タハーカ】を倒した人間を呼びだしといて、『オマエが悪い』って言われ続けるんですね?」
「・・そうだな」
「自分は偉いから。
ココは国会だから。
・・とか、思っているんなら」
「・・ふぅー・・ふぅー・・。
勘弁してくれよ。
魔力が分からないオレがヒリヒリしてる」
「・・みんなを守る戦いですからね」
「・・・・・・ああ」
「邪魔する奴も敵ですよね♡」
項垂れる崖下さんが帰り、度々マスコミ男がうろちょろし、更に数日後。
奈々から【人茸】に為ったことと、マスコミが本格的に動きだしたことの報告をうけ───政治家も出演するというTV番組に呼ばれた。
◆◆◆
「幹太・・ホントに出るの?」
「流石に、なあ・・。
みんなに迷惑かけてるし」
彩佳が心配そうに語りかけてくる。
他の人達も、申し訳なさそうにし・・異世界組はそもそもの意味が分からないんで、申し訳ないというより恐怖している。
『御姉様・・』
「心配しなくて良いよ。
【アジ・タハーカ】よか怖くない」
【アジ・タハーカ】と、相対しても居ないのに文句だけ言う奴等側は知らんけど。
フィクション的悪意を纏めた物であり、政治的意図は一切ありません。
○"○のメモリーカード ( PS2用 ) は、本体に突き刺さりませんでした。




