154『彼女の吐息は更に熱くなる・・しかし突然、男が現れ───』
≪ォ"オ"オ"ォ"オ"ォ"・・!≫
「くっ・・!?
私等はコレ、ちゃんと吸えてんのかいッ!?
向こう側の田坂はちゃんとやってるんだろうね・・!?」
「はい、少しずつですけど・・確かに吸えています!
・・向こう側に流れていく魔力も見えるんで、たぶん」
颯太と源太ちゃん、そして【アジ・タハーカ】との間に渦巻く魔力に少しずつ流れが出来てる。
( ちょっと俺のも吸われている。)
てか、アイツはまだ居たのか。
何してたんだ?
まあいいや。
居たんなら精々こき使ってやろう。
≪オ"オ"オ"ォ"ォ"・・・!≫
【アジ・タハーカ】が俺からパクった高速遠距離型魔法で山柄さんのビルを、街を焼き払おうとした瞬間・・を狙って颯太と源太ちゃんが【アジ・タハーカ】をひっくり返し、魔法を真上に吐きださす。
「くっ・・颯太と源太ちゃんは物理攻撃が効かないなりに頑張っているのに・・!」
真上に吐きだされた馬鹿ビームは余りに巨大ゆえ、広範囲に火の粉が降りかかる。
「「「熱っ・・熱っ・・・!」」」
「自動追───っとと」
咄嗟に追尾型の火球で火の粉を払おうとするけど、コレが【アジ・タハーカ】にパクられたらヤバい。
「防爆衣魔法!」
「おお・・!
これだけの炎の雨をまるで火の粉でもフリ払うかのように・・!」
「しかし・・コレはハァ・・!?」
「どうしました!?」
【アジ・タハーカ】が魔法を放った勢いからか、皆の魔力吸収率が上がったみたい。
・・ソレと共に───回りから 「 ハァハァ 」 聞こえてくる。
オッさんのハァハァ。
オバさんのハァハァ。
山柄さんのハァハァ。
「何だか、切ないよ・・」
・・俺も切ないよ。
無力感による苦悩だとか、颯太と源太ちゃんのシリアス感とか、色々台無し。
・・ん?
向こう側の【人土】チームから一本、とてつもなく長い 「 ハァハァ 」 が伸びてきた。
パスってこんな気色悪い繋がり方しねえよ。
ゾゾ気が立っちゃったよ。
向こうでココまで強い魔力っつったら田坂のか・・って、俺の方に来ているっ!?
シッシッ!
そりゃ俺とパスを繋げておいたらイザという時、便利かもしれんけど・・キモ過ぎる。
そっ・・と、山柄さんの後ろに隠れる。
あ、山柄さんとパスが繋がった。
ソレを切っ掛けに山柄さんからも田坂へとパスが繋がった。
わあハートフル♡
・・山柄さん、ゴメンナサイ。
◆◆◆
「幹太さん、向こうから・・!」
少し皆のハァハァが落ちついてきた頃、【人土】サラリーマンの一人が遠くに何やら長蛇の列を見つける。
「んん・・?
戦車とかトラックとか・・自衛隊、かなあ?」
「そのようです」
≪ォ"ォ"・・・?≫
【アジ・タハーカ】の悪意が高まる。
敵がジワジワ集まるこの状況に、イラ立ったっぽいな。
悪意が高まると共に魔力が濃くなる。
魔法を撃つつもり・・ってヤバい!
アレは指向性面制圧魔法!?
【アジ・タハーカ】のアレは、この場の全員を守りきれな───
っと、颯太と源太ちゃんが再び【アジ・タハーカ】を綺麗にひっくり返した!
流石だぜ!
・・でも、何だ?
颯太から・・イラ立ち?
焦りみたいなのを感じる。
どうしたんだ?
確かに倒す手段は無くて不安になるのは分かるけど───
普段、滅多に怒らない颯太にしては、戦いに関しては俺よか遥かに冷静な颯太にしては不自然だな・・?
「幹太さん、戦車が───」
「防壁魔法!
遮音付きっ!」
世界から音が消えた次の瞬間・・自衛隊による【アジ・タハーカ】への総攻撃っ!
防壁魔力の外側の空気が震える!
「「「やったか!?」」」
【人土】の皆さんの総口撃。
山柄さんまで。
たぶん向こう側の【人土】達も。
果たして【アジ・タハーカ】は生きていた。
腹辺りにヒビが入ったけど、大ダメージと言うには程遠い。
「絶対・・絶対許さないんだからなぁ!
えいやああぁあぁ・・!!!」
颯太・・!?
颯太がヒビの上に飛びのり乱打をかける・・けど、どうした!?
完全に頭に血がのぼっている・・!
俺の位置からも颯太の位置からも【アジ・タハーカ】の様子は伺えないけど・・奴はあの体勢のまま、周辺魔力が濃くなってゆく。
───颯っ・・太ああ・・・!
「全力・防壁魔法・・ッ!!」
≪オ"オ"オ"ン"・・・ッ"ッ"!≫
コカされた【アジ・タハーカ】が自分の真後ろ・・地面に向けて特大の魔法をブッ放つ。
まるで爆弾が爆発したかのような衝撃波が襲ってきた。
何て威力だ・・!?
奴自身の防壁魔法のその上に俺の防壁魔法をかけて、衝撃波が全部【アジ・タハーカ】自身に跳ねかえるようしたってのに!?
颯太や源太ちゃんは・・怪我をしているけど無事だな。
源太ちゃんが 「 快 」 のパスを送ってくる。
源太ちゃんまで頭に血がのぼっているワケじゃないみたいだな。
【人土】の皆や自衛隊も深刻な被害は出てないっぽい。
「まったく・・コレが街破級かい。
【歪み】を封印して世界を守るだ、
【人土】として真のチカラだ、
とかナンとか言っといて───
何も役立つ事が出来無いなんてね・・!」
「でも吸収力そのものは上がっているんですよね・・。
ただ、吸収率が上がって無い」
「・・幹太殿・・?」
「何だろう・・まるで『何か』を『間違えたまま』やっているような、この感じ・・」
「間違えた?」
【スライム】と【人土】・・。
【スライム】と【人土】───
「───そういや・・源太ちゃんの【狼の核】やビタの【花の核】みたいな【人土】の【核】って今、無いんですか?」
「アレは本部に在って・・今は殆んどチカラは残って無いはずだよ」
「【スライム】って【スライムプール】っていうテリトリーに、数十・数百と居るんですけど・・その全部が一匹のように振る舞うんです」
「ほう」
「人間じゃないんだし、そんな複雑な活動なんてしないんだから皆一斉に同じ行動をしているだけ・・かもしれないですけど」
「【核】となる一匹が全体の動きを決めていた・・って可能性もある訳だね?」
「しかし山柄支部長・・本部から【核】を持ってこさせる時間は───」
「なら、山柄さんが【核】に。
皆さんが山柄さんの補助パーツに成る・・という方法も、有ります」
はっきり言って適当だ。
魔力の流れ的に自信はある。
・・だけどこんな土壇場で試すには適当と言わざるをえない。
「やりましょう、山柄支部長!」
「はあ・・仕方ないね。
皆の命を預かるよッ!?」
適当を言ってしまった責任をとるため全力で守───ん?
何だ、アレ?
『颯太ぁぁ・・源太爺ちゃああん・・・!
行っくわよォォォォォッ!!!』
あ、彩佳ァ・・・!??
何で彩佳が空をとんでんの!?
「おわっ!?
オマケに【アジ・タハーカ】がまた魔力を───
・・彩佳あああぁぁぁぁ・・・ッ!!!」
「・・・・む!?
この魔力・・!?
スマン、苦情は後で受付るよ・・!」
へっ?
急に山柄さんが俺の脇腹辺りに魔力を込め───
「ひああぁぁぁああッ!??」
「皆の者!
【核】は幹太殿じゃ!
幹太殿の【スライム細胞】にチカラを送りこめよ!」
「「「はいッ!」」」
「ひゃああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああ・・ッ!?」




