147『「あー、君の報告書の・・魔法少女とはなんだね?」「やっぱダメ?」』
「異世界転移に魔法に魔物・・ね」
撃墜された戦闘機のパイロット、
『崖下 赤人』さん。
パイロットなのに崖下・・って。
30代後半、軽薄そうな喋りのオッサンだ。
「まあ信じ難いけど、証拠は目の前にあるしな。
・・オレが信じたからって、どうもならないけどさ」
「たぶん組織として、自衛隊だとか警察とか国は信じてくれませんよね?」
「だろうな・・。
例えばさっき一緒にいたもう一機のパイロットなんか、代々家族全員自衛隊って一家で・・悪い奴では無いんだが漫画とか大嫌いなんだよな」
「はあ・・やっぱ、国が敵ってみなすぐらいじゃないとなあ」
「おいおい」
「別にテロリストになる訳じゃないですよ。
国が国会? だとか、超法規的措置? だとかで【アジ・タハーカ】や【空の口】を対処するのは何時?
・・って話ですよ」
政治的なのは分かんないけど、仮に首都にゴジ○が出ても『ヨトーガー』だ『ヤトーガー』だとか、言ってそうな気がする。
ましてや、こんな地方都市だ。
一日・・いや、一時間対処が遅れただけでも取り返しがつかない。
だから今この瞬間にも襲ってきかねない三匹目の【アジ・タハーカ】は俺達だけで対処しないと・・。
「君達の事は報告してイイんだろ?」
「ええ」
「一応、上が悪感情を持たないように報告はするよ。
さっき言ったもう一人のパイロットも、君達がオレを庇うよう魔法を使うトコを見たんだ。
唯の一般人が銃や爆弾を持っているのとは事情が丸っきり違うと分かる・・と、良いんだけどな」
・・そう言って、崖下さんは帰っていった。
始終嘘らしい嘘はつかず、俺達に善意も悪意も抱かずに冷静に目の前の事実だけを集めていた。
崖下さんはともかく、自衛隊は
『もう一体化物がいる』
『残りは最強』
という
『限りなく怪しい情報筋』から手にした言葉をどうするんだろう?
戦闘機の残骸はもちろん、倒した【アジ・タハーカ】の回収とかにココへ来るんだろうけど。
「取敢ず簡単に隠れとくしか無いじゃろ。
魔力は大丈夫かの?」
「問題無いよ」
「ソレよか幹太姉ちゃん、僕達三人でやっと倒せた【アジ・タハーカ】を何であんな銃だけで倒せたのかな?」
「うーん・・。
俺達の魔法をコピーすると同時に・・魔力を吸いとってたのかも」
【スライム】ほど強力な魔力吸収じゃあないけど、そう考えると魔法使いの攻撃は威力が落ちて戦闘機の攻撃力が落ちなかった理由には説明がつく。
「つまり三匹目は」
「一匹目二匹目に使った魔法だけじゃなく・・使った魔力も得ているかもね」
だとしたら・・俺達だけだとキツいかもしれないな。
よーし、こうなったら・・!
◆◆◆
「助けて~、彩佳えもん~!?」
〔しょうがないなあ、幹太君は。
・・・・・・。
・・ほん・・っとに、しょうがないわよね?〕
「御免なさい」
彩佳に助言を求めて電話。
さっき蔑ろにした事にご立腹らしい。
( ザレ、ビタ、奈々、含め全員シェルターに居るとのこと。)
〔まあいいわ、事情が事情だし。
たぶん、一匹目二匹目はサイコ○ュのファン○ルね〕
「つまり三匹目がモビ───本体か」
〔しかもフルアー○ーだって考えるべきね〕
ポンポンと何かのコードに引っ掛かりそうな言葉を・・。
だけど全く選択肢のない状態から朧気にでも進路を出してくれるのは有り難い。
〔【アジ・タハーカ】本体には複数の頭を同時制御するための核? みたいなんが納められた胴体とか着いてるかも〕
「核か・・。
【ファフニール】にも在ったし【ニーズホッグ】にも在ったらしい」
源太ちゃんが【ニーズホッグ】の核の話に、微かに複雑そうな表情になる。
でも落ち込んだ感じではなく、気を引き締めたっぽいな。
〔フ○ンネルだけでヤれなかった今、たぶん集めた情報や魔法魔力を精査して準備してる最中よ。
ド本命の必殺技をイキナリ撃ってくるかもしれないから───〕
「───あ、済まん・・切る」
〔は!? ちょ〕
・・コレが、リャター夫人が言っていた、
『千の魔法を莫大な魔力で操る』
・・か。
「・・勘弁して欲しいのう」
「【デロスファフニール】って、ホント弱かったんだねぇ」
「そだな」
もはや俺の「ブイツーロケット」の面影は見当たらない。
・・何処のハイパー・メガ粒○砲?
街破級の名に恥じず───
『街』を『破壊』しながら一条の巨大流星がビルへ・・俺達へ迫ってきた。
「防爆衣っ!」
あの半グレ共に見せたゴミ箱のみを焼き、周囲の炎や熱を完全にシャットアウトする魔法をかける。




