144『元ネタを知っていれば、バレバレな隠し球です。』
普段は投稿予約時間である12:00の前、少しの時間サボ・・余裕があるのですが、その時間を使って最後の書き込みをしています。
ですが前話はイキナリその時間が使えなくなってしまい、変な時間に変な量の話を投稿してしまいました。
何故、【アジ・タハーカ】はこのビルへ来たのか。
それは多分───
「山柄さん、この世界と異世界を繋ぐ計画は・・どうなっていますか?」
「感あり・・ってトコだね。
実験の為の実験には成功したよ」
「そのタイミングで、【アジ・タハーカ】が来たって事ですね?」
「・・・・そうだね。
【空の口】へ、攻めいる準備をしとったら【空の口】の手下が攻めこんで来たな」
まあ、そういう事だよな。
「敵の目標は『ビル』であり、俺達やビルの中の『人間』ではない ( はず ) ですから・・やりようは有りますね」
「まあ、アンタ等以外任せたられる人間が居ないんだ。
死んだらソレは弱い私等の責任さ」
・・よくソコまで言えるなあ。
これは山柄さんだけの特徴ではなく、【人土】全体の特徴だ。
田坂の尊大な態度や・・俺にイチャモンをつけてきた『【歪み】を封印出来る8人』の女も、結局は強過ぎる使命感からの行動だろう。
【人花】のビタも、【アルラウネ】に対してはゾッとする雰囲気になるし。
源太ちゃんから聞いた恋人の一族【人狼】も、先祖の過ちを代々命掛けで償っているらしいけど・・。
人ン家に対して、失礼かもしれないが・・先祖が子孫に仕掛けた『呪い』にすら見える。
「・・っと、源太ちゃんからの合図っ!
来たみたいだな・・!」
◆◆◆
俺だけ外に出て、源太ちゃんが居るはずのビル屋上を見上げると・・ある方角を指差しているようだ。
そちらを見やると・・居た。
空にユラユラ浮かぶ黒い点。
あれ、事情を知らない人間が見たらUFOにしか見えないな。
「幹太姉ちゃん!」
「颯太!
アイツは俺以上の魔法使いらしい」
「ええッ!?
そんなの勝てる訳ないじゃん!?」
「大丈夫!
俺より強い家族が横に二人、後ろに一人ついているさ」
「・・う~、ソレちょっとイヤミっぽいよ・・」
「はははっ・・。
・・・。
敵の狙いはビル。
中の人は集まったぞ。
向こうにある自然公園に避難する。
敵はどうだ?」
【アジ・タハーカ】は、ゆっくりと同じ場所を漂っている。
魔力の動きは・・無い。
「最初はビルの回りをグルグル回ってて・・ついさっき、ああやって止まったんだ」
「ふーん・・。
『様子見は終えた、さあてどう料理してやろうか』・・って所かな?」
「僕と源太ちゃんも、そう判断したよ」
───っ!
再び源太ちゃんからの強いパス。
颯太を見れば、颯太にはパスが来ていない。
乗せられた想いは危機感ではなく、戦いの高揚感。
一発かませ、って事か。
「源太ちゃん先に行くってさ」
「分かった!」
「───行くぞ、ブイツーロケットぉ・・っ!!
距離押さえ目、速度マシマシっっ!!!」
源太ちゃんの最初の一蹴りが【アジ・タハーカ】を殺す蹴りではなく、ビルを守る蹴りと見たか───
コチラは守りに徹すると決めつけていたっぽい。
狼狽えて、回避に一瞬遅れる。
そして源太ちゃんはソレを見ぬいていたのか、俺の魔法を避け損ねた【アジ・タハーカ】に追撃を重ねた!
「今だっ!」
ビルの中・・山柄さん、リャター夫人、ビタ、奈々に一斉にパスを送る。
パスを合図に大型車三台に分けて、数十人づつビルから避難させてゆく。
戦闘力が無い部外者の奈々と、奈々と仲良くなったビタも最初の避難者に。
父さんは、山柄さんとリャター夫人が乗る最後の車に乗りたいらしい。
「この辺は人気のない広い土地だから移動はしやすいけどなあ」
「使い勝手悪そうな土地だし、人気もなさそうよね」
自然公園までの道程は、しばらく山柄さんのビルと関連施設しか無い。
なので、出だしは問題なかった。
◆◆◆
「面倒臭いのが来たな・・」
パトカー・・警察だ。
逃げる、他会社の社員や通行人を避難誘導している。
市民を護る義務はある。
しかし情報は無い。
それは仕方ない・・けど。
俺達の乗る車が、件のビルから来たと知った警官の一人が道を塞いできた。
事情説明をしろ、との事。
「今朝ニュースでやってたけど、昨日魔物相手に多数の死傷者を出したからって責任追及がどーのこーの言われてるらしいわ」
「マジでか」
「マジ」
ディッポファミリー傭兵団ですら、ファミリー全員揃ってやっと一匹倒せるんだ。
言っちゃあ悪いが警察如きにどうこう出来る相手じゃなかった。
マスコミだか世間の声だか知らんけど、皺寄せが『コレ』かよ。
「 分からない、巻き込まれただけ 」 と説明したけど、中々納得せず・・やっと解放されたかと思えば───再び別の警官に捕まった。
自然公園とは目と鼻の先なのに。
「コレでアンタの爺さんが戦ってるのがバレたら、何て言われんのかしらね。
魔法って銃刀法違反に為んの?」
「私も子供のころ、不用意に魔法を使ったせいで虐められましたよ」
───とは、奈々の横にいた【人土】のサラリーマン。
狙い通り【アジ・タハーカ】は執拗にビルを狙い、ビルから離れた人間には興味もしめさない。
「ビルが使えない以上、皆様の補佐が出来るのはシェルターだけです」
「ですが課長、こうも足止めされては・・我々はココで降りて自分達の足でシェルターに行きましょう」
「そうですね。
車は、残りの皆が敷地内の移動に使ってください」
「ならワタシは彩佳達と合流するわ。
携帯と・・ビタちゃんがザレとパスで繋がってて方角だけは分かるらしいし、土地勘のなくても多分すぐに会えるでしょ」
『任せるのですっ!』
てな訳で、俺と車は再びビルへ。
日本の道具は便利かもしれないけど、自分の身を自分で守れない───自分の敵と自分で戦えないイライラはある。
◆◆◆
ビルと敷地の出口を往復し、何組かを運び次組が車に乗り込むのを待つ傍ら。
源太ちゃんと【アジ・タハーカ】の戦いを観察。
源太ちゃんは習性を利用し、ハメに近い形で動きを封じている。
一人で。
「・・弱い、よね?」
「ああ・・使っている魔法も浮遊魔法以外は簡単な風攻撃と防壁だけだ」
象サイズ、村破級最大の【ビッグボア】より遥かにデカイ奴がトンでもないスピードで飛びまわる・・。
弱くはない。
村破級を遥かに上回る強さ。
───けど。
街破級を遥かに下回る強さ。
「様子見・・にしては長いなあ」
「アンタ等が強過ぎるんじゃ無いかね?
正直、あの一万のクワガタの時で本気だと思っていたよ」
「いくらナンでも・・【デロスファフニール】より弱いってのは───」
「あっ!
幹太姉ちゃん、アレ!?」
遥か彼方から流星の如き魔力塊が飛んでくる。
慌てて迎撃、辛うじて反らしてビルへの直撃を防ぐ。
この魔法は・・この魔法を撃ったのは───
「あ・・魔法が来た方から新手が・・!?」
現れたのは・・ニ匹目の───
【アジ・タハーカ】だ。




