143『何故か『ハマチ』キュー、に見えて仕方ありません。』
皆を逃がそうとするとリャター夫人から止められた。
『逃げる前に、このキカイの動く絵だけ見てって~!?』
「ああ、源太殿が跳びだした後にあの地震で・・慌てて屋上カメラの映像を確認したんだけどね」
そう言って、山柄さんが一台のパソコンを操作する。
映っていた魔物は・・二つ合わさった青黒い鉤手甲、だろうか?
『鉤』が上下の牙になっていた。
「横幅はおそらく20m。
全長は分からないけど、横幅以上だね」
「この映像を見たリャターさんが日本語で『マチハキュー』『マチハキュー』と言うもんでな。
慌てて幹太に電話したんだ」
この短期間に単語とはいえ、イザという時必要となる ( かもしれない ) 単語を覚えてくれていたのか・・ホント助かる。
『浮遊する頭だけの蛇・・私の心当たりにあるのは───
『街破級【アジ・タハーカ】』よ』
「【アジ・タハーカ】・・何か伝承のようなモノは在るんですか?」
『例えば・・【ファフニール】は100m、【ニーズホッグ】は800mの巨体が最大の武器だけど───
【アジ・タハーカ】の最大の武器は・・カンタさん、貴女と同じよ』
「俺と同じ武器・・魔法ですか?」
『伝承には、千の魔法を莫大な魔力で操ると有るわあ。
おそらくは・・貴女以上の使い手よ~』
「俺も颯太も、源太ちゃんからのパスが変に感じられたんですけど・・ソレも【アジ・タハーカ】の魔法でしょうか」
リャター夫人や山柄さんにビタ・・あと微かに奈々からのパスも、こんなギリギリまで近付かないと正常に届かない。
魔力の根本に近いパスに異変が有るせいか・・さっきから色々と魔力的感覚に違和感を感じる。
『私は貴女達 ( チート級 ) ほどパスを感じとることは出来無いのだけど~・・伝承に、魔法使い達の異変といった記述は無いわ~』
「そう・・です、か」
同個体じゃないんだし、別の魔法を持ってたって不思議じゃあ無いか。
『たぶん、デロスの【ファフニール】とは何もかも違うわあ』
知能は・・現時点で分かんないけど、【ファフニール】みたく『弱点属性:魔力』なんてのは無いか。
「分かりました!
山柄さん、避難に的した場所と【アジ・タハーカ】を追い込むのに的した場所は在りますか!?」
「この地図を見て下さい」
山柄さんの部下が地図をパソコンに出す。
「ココの我々が管理する自然公園は、地下は治水設備の体をとったシェルターになっています。
ココが避難場所に最適かと」
都市伝説でよく聞く○○の遊歩道は飛行機の離発着場になる、だとか○○の地下駅はシェルターにもなるだとかいう、アレか。
「戦場ですが・・候補はニ箇所、『海』と『潰れたゴルフ場』が在ります。
近いのは海ですが───」
「【アジ・タハーカ】が、飛べるなら海上は不利かもしれないなあ。」
「ええ。
ソレに下手したら津波が起きかねません」
「分かりました。
しばらく颯太と源太ちゃんにはビルを守ってもらい、俺は自然公園への安全な道を作ります」
社内放送により先ず、各部署に点呼をしてもらい行方不明者・行動不能者の居ない部署から一階ロビーに。
動けない者には救護班を送る。
その間俺は寄生虫探査魔法にて ( 皆には生命反応探査魔法と説明 ) 一人二人で動かない人間を探して、救護班のフォロー。
すでに手遅れだった人以外を集める。




