142『忍者漫画などで、急いでいるのに木々の枝から枝へ跳び移るシーンがありますがあの脚力があれば地面を走る方が早くないですか?』
「父さん・・!?
父さ───駄目だクソッ、切れた・・!」
「か・・幹太・・・奈々が、奈々が───」
何だ・・?
何がどうなっているんだ!?
巨大な魔物!?
街破級!??
『御姉様ッ!?
どうかなされたのですか・・!?』
「颯子・・オイっ、颯子!
お前の姉ちゃんに、何かあったみたいだぞ・・!?」
「えっ・・グスッ幹太姉ちゃん・・?」
「颯太・・父さんが・・・『街破級』っつって、電話が切れた───」
「ええッ!?」
「すまん、今はツラいだろうけど・・!」
「う───ううん!
大丈夫、行こう・・幹太姉ちゃん!」
・・・・・・。
・・御互い頷きあい、意志を再確認する。
颯太が三階建ての屋根上に、俺が ( 練習中のため ) にブロック塀に一ッ跳びに大ジャンプする。
理太郎君は腰を抜かしそうになりつつ、目を丸くしていた。
「理太郎君・・ゴメンね!
僕・・ちょっと行ってくる!!」
「颯子・・!?」
「彩佳・・すまん、奈々は任しとけ!
ザレ、彩佳を頼むッ!」
「幹太・・奈々を!」
『御姉様ッ、ご無事で!』
◆◆◆
陽炎魔法で正体を隠しつつ、建物も地形も無視し一直線にパスで繋がった源太ちゃんの元へ。
それにしても───
「颯太、源太ちゃんとのパスは繋がっているか!?」
「繋がってるけど・・源太ちゃんからは何の合図も無かったよッ!?」
「俺もだけど・・てかコレ、本当に源太ちゃん戦っているのかッ!??」
異世界にいた時───女学園を襲おうとする賊と勘違いし、源太ちゃんと戦った時・・颯太とは相互に合図を送りあうことで御互いや、敵の位置・状態を正確に感知する事が出来た。
あるいは・・パスを繋いだ相手が複数、狭い部屋にいた場合───相手に魔力を反響させて『反響定位』のように・・例えば机やドアノブが何処にあるかなんてのが分かる。
「仮に源太ちゃんに余裕がなく、合図を送れなかったとしても・・ソレならソレで、送られてくる魔力に異変があるハズ。
なのに・・まるで変化がない・・」
「位置は山柄さんのビルで、合ってるのかなあ!?」
「たぶん移動するのが決まったら事前に電話連絡があるハズだし、位置は間違いないと思うけど・・『コレ』がこの魔物の能力なのか・・!?」
『巨大な魔物』ってのもなあ。
例えば【デロスファフニール】が20階建てビル位か?
山柄さんのビルが確か18階建てだったからソレよりデカイ。
「幹太姉ちゃん、煙っ!
・・山柄さんのビルだよ!?」
「ぐっ・・行こう!」
◆◆◆
山柄さんのビル。
その最上部表面が・・大きく削れていた。
「居た・・源太ちゃんっ!」
「おお、二人とも来てくれたか・・!
急に御主等のパスがオカシイ成ったんで、駆けつけようとビルから出たら───向こうから魔物がビル直撃コースで飛んできてのう・・辛うじて蹴り反らしたんじゃが・・」
「父さん達は!?」
「リャター殿達と一緒の部屋におる。
・・リャター殿と山柄殿 ( 魔力持ち ) からは魔力のパスが来よるから無事のはずじゃ」
「じゃあソッチに───」
「颯太は残っといてくれ。
・・おそらく、あの魔物は死んでおらん」
「分かった!
幹太姉ちゃんが皆を助けだす時間稼ぎだねッ!?」
「うむ」
「待ってて!
すぐに助けてくるから!」
◆◆◆
ビル内部。
源太ちゃんが直撃を避けくれたおかげで、ビル内部に大きなダメージは無い。
といっても、荷物や剥がれ落ちた天板に挟まれた人などはいた。
通り道の人間だけ、視界の端で遠隔にて土 ( コンクリ ) 魔法で助ける。
長時間挟まれていた人を助けたら
『挟まれいた血管部分に溜まっていた有毒物質が全身に回ってショック死』
というのを聞いたことがあるので余裕があるっぽい人は後まわしにしたが。
医者でも救助隊でもない。
今は優先して助けたい人だけを助ける。
そして皆が居るはずの部屋へ。
「父さん・・!?」
「幹太・・無事だったか!
颯太と御義父さんは!?」
「彩佳・・姉さんは!?」
「大丈夫・・!
でもビルを襲った魔物が何時また来るか分からない!
早く脱出しよう!」




