141『ちなみに、『俺が彩佳のことが好き』という事は彩佳にバレて無いと思っています。』
「あ、あら?
皆さん帰られたのでは・・?」
「ソレが・・・・」
理太郎君に頼まれ、彼の家へと戻ってきていた。
理太郎君が一歩、前に出る。
意を決した表情 ( お、おぉう・・不意だとクルな ) で、お母さんに告げる。
「母ちゃん、オレ・・クワガタを手離すよ!」
「ええッ!?
ホン・・ええっ!?」
理太郎君の家に帰り、開口一番。
理太郎君のお母さんが、息子と俺達を交互に見る。
信じられないモノを見る目で。
どんな説得をしたのか、という目で。
「僕のお色気でぇ───ムググッ!?」
「アホっ!?
変な事言うなッ!?
かっ・・金だよ、コイツ等がお金くれるって!」
颯太のクチを塞ぐ理太郎君。
まあソレはさておき、真意は分からない。
けど半グレ連中相手に力不足を感じた理太郎君は、自分に危険生物を飼育する資格ナシとしたのかもしれない。
・・だけど葛藤する最後、颯太の 「 ダメぇ? 」 という上目遣いで決断した以上、颯太の色気が決め手っぽい気がするが。
( 彩佳がポソッと 「 エロガキが 」 と言っていた。)
「私達が、ではなく知り合いが、ですけど。
あっ・・中間マージンとか取って無いですよ!?」
「・・・・・・ハア。
颯太君の親戚だし、信頼するわ。
でも・・良く説得してくれたのね」
「・・母ちゃん、オレもっと強くなるから!」
「???」
以前山柄さんから、クワガタ代として貰ったのと同額を渡し───
「そろそろホントに帰るかあ・・のよー」
「・・え?
そ・・そうなんだ・・・ですか。
な・・なあ颯子、明日も遊ぼうぜ!
颯太が居なくて暇なんだ」
「うん♡
遊ぼ、遊ぼっ!」
「あー・・ソレ無理かもなあ・・」
「ええっ!?
何でさ、幹太姉ちゃん!??」
心底心外な感じで、颯太に問詰められる。
・・俺に対して、初めて見せる表情だ。
「何で・・って、颯子が一番『異世界』へ行きたがっていただろ?」
「あ───」
「山柄さんとリャター夫人、何か進展させたかもしれないし・・クワガタも生きているウチに渡したいし───颯子・・?」
「そ、そっかあー。
颯子・・水臭いぜ!?
颯太もそうだけど、言ってくれりゃあ───」
心外そうな顔のまま止まっていた颯太の表情が・・急に破顔し、ポロポロと大粒の涙を溢しだす。
「ぼ・・僕───」
「そ、颯・・っ!?」
「颯子!?」
「異世界に行くの・・・恐いよう・・!」
「・・・・っ!」
「父さんが言いたかった事・・『コレ』だったんだ・・!
父さん・・父さん・・ゴメン・・・!
父さんゴメンなさぁーい!」
「颯子、アンタ───」
『ソウコ様───』
ど、どど、どうしよう・・どうしよう・・!?
颯太がパニックを起こして・・!??
『御姉様がパニックを起こしてもしようが有りませんわ』
「落ち着きなさいって・・」
彩佳とザレが顔を見合せ、頷きあう。
何だ・・?
二人は確信しているっぽいけど・・!?
泣く颯太と、意味も分からず颯太を慰める理太郎君の二人から引き離され・・やや離れた場所に連れて行かれる。
「アンタ達・・『呪い』で、善意ある男には無条件でなつくんでしょ?」
「あ、ああ・・」
『御姉様は・・大人ですので『そういう』感情になって・・ソウタ様は『憧れ』に、なっていた』
「う、うん・・・・・・ん?」
え?
・・あ?
・・んん・・!?
「これ・・颯太自身、気付いてんのか知んないけど───颯太の『初恋』じゃない?」
は・・初恋・・・・!?
ファーストなラブ・・・!??
え?
ソレって俺が彩佳にしたアレ───って、御免なさいザレさん、ココでチラっと彩佳を見たのは意味深かもしれないけど睨まないで。
恐い、恐い、マジで恐いから。
「ふん、そうね♡
今は幹太の初恋は関係無いわね♡
今は颯太よ、ザレ!?」
『ぐっ・・!
と、とにかく・・『そう』いう事ですわ!』
俺と父さんと比べ───
颯太と源太ちゃんは日本にいる大事な人が父さんだけ、だったんだ・・。
父さんは一人立ちしている上、日本に居るけど異世界の皆は違うから───理屈だけで異世界の安全を選んでいた。
けど・・家族以外に好きな人が出来て・・理屈じゃなくなった・・・・。
( 源太ちゃんの場合、婆ちゃんも死んで長いし・・向こうに恋人の仇が居るから。)
・・・颯太の気持ちは分かる。
俺だって未だ彩佳と父さんのいる『コッチ』と、ザレ達の故郷の『アッチ』を決めかねているんだ。
だけどコレは───
≪ピリリリリリッ≫
「───んっ!?
父さんから電話・・!?
どうしたんだろ」
「あれ、アタシも奈々から電話だわ」
「もしもし?
父さ───」
〔かっ・・幹太・・御義父さんが大変・・・・きょ、巨大な魔物が───『街破級』が───〕




