140『い・・一体、正体は誰なんだ・・・!? 作者ですら予想がつかないよ! part.2』
「ヒューゥ♪
スゲエ美人に美少女二人だな」
「小っこい方もツラは、良い」
「ひゃっはっはっ、オマエ変態かよ!」
「バァーカ、金にするに決まってんだろ・・。
けどこんだけ良いのが揃ってんだ、デザートもいくか?」
「「「ハアッハハハハッ」」」
・・・・・・。
なんだコイツ等。
着崩したスーツ姿の男、間違えたラッパーみたいな男、身体中のタトゥーをこれ見よがしに見せびらかす男・・。
年齢層も、20前半位から30後半位までバラバラだ。
ただガタイの悪い奴は居ない。
如何にも会話は全部、暴力でってタイプばかりだな。
明らかに学校のヤンキー連中の・・目立ちたいからケンカする、ってのとは違う───『暴力』と『他人の人生』と『金』が同義だと、イヤラシ気な目が語っている。
溢れる程の『悪意』。
デロスが『狂気の悪意』ならコイツ等は『純然たる悪意』。
見ているだけで吐き気がする。
そんな連中が七人。
ファミレスへの近道になる裏通りに、たむろしていた。
「一昨日は変な手品で逃げやがって・・。
今度は逃がさないぜ?」
七人の内の一人。
パーカーを着たスキンヘッドにニット帽の男が・・逃げられたことによる怒りと、コレから起こる事を想像し───口角を上げながらコチラに歩いてくる。
「か・・幹太・・・!?
や、やま、山柄さんに連絡・・!」
「お、お姉───」
しかし俺と颯太は。
「颯・・子、さんは元の道からファミレスに行く道を知ってるのよー?」
「うん、信号を二つ渡るのですわ」
「・・・・あ"ん?」
信号二つ、か。
異世界だと『ちょっと隣』が、丸一日歩くって距離もある。
彩佳や理太郎君に合わせて近道を選んだけど、そう遠くも無い。
・・・戻るか、と引き返す。
「おーい、ジュース買ってきたぞ。
全く、人をパシリに使いやがっ───誰だ、この女達?」
「オイっ・・その女達を逃がすな。
へっ、感謝しろよ・・パシリをしたお陰でイイ女で遊べるんだぜ?」
「ふーん、よく分かんねぇけど・・楽しめそうだな♡」
・・・・・・。
「・・・・ハァ、のよー」
「・・・・ハァ、のですわ」
『・・・・ハァ───
あの、タメ息に変な言葉を付けないで下さいまし?』
「・・あ? 何言ってんだ、コイツ等?」
「恐怖でオカシくなったんじゃね?」
「ハハハ・・!
ああ、随分簡単に諦めたんだな・・」
まあ『諦めた』っちゃあ・・諦めた、か。
「・・俺が諦めたのは『平穏』に済 「 颯子達に手ェ出すなあああああッ!? 」」
「あん?
ガキが邪魔すん───」
・・え?
あ───理太郎君が、いきなり飛びだし・・・・。
「エア・マインッ!!」
「───じゃねえよっ!?」
「カタパルトっ!」
ジムかなんかで鍛えているであろう190cmを超える半グレ男が、小三の理太郎君の顔面を蹴りとばそうとし。
咄嗟に非殺傷型・爆風壁魔法を、理太郎君と半グレの間に展開させ。
微かに弾かれた理太郎君を、超速歩魔法で一瞬にして近付いた颯太が受け止め。
「理太郎君!?
だ、だいじょーぶ!??」
「───颯・・太・・・」
理太郎君が意識を失った・・。
けど、緊張によるショックっぽいな。
普通に寝息を立てている。
───まあァ・・。
目ぇ瞑っててくれて、ちょおど良いかもしれないなあァ・・・。
「何・・だ、今の突風!?
このオレが弾き飛ばされ・・・んだぁ!?
何でガキが女達の所に・・!?」
「わ、ワープ・・!
あの小娘が一瞬でお前の所へ走って・・一瞬で元の場所へ・・パッと───」
「おい」
「ああッ!?
なんっ・・何なんだ・・・!?
何なんだ、オマエ等はっ!!?」
半グレ共が・・ザワめき始める。
気付いたか?
やっと?
今頃?
・・今まで手ぇ出してきた女と違うって。
恐怖ではなく・・お前達が初めて見る感情を抱かれているって。
「ソコのゴミ箱」
「───!?」
皆が。
半グレ達が。
・・彩佳達が。
一斉に注目した、二つ並んだゴミ箱の片方を・・『消した』。
「「「・・・・・・!?」」」
「な・・ナニを・・・した!?」
「さっきお前が言ってた『手品』だよ。
・・じゃあ、次はゆっくりやるからタネをよーく探せよ?」
腰の水筒 ( 丸めた金属板に魔物の胃袋でコーティングした異世界水筒から換えた、軽くて携帯しやすい軍用品。) から火種 ( 樹脂油ではなく、液体燃料。 水筒もソレ用にコーティングしてある。) をゴミ箱に飛ばし、発火させる。
水筒の中で燃やしても水筒には一切熱が加わっていないように、ゴミ箱の周辺で閉じ籠るよう熱を操作。
『一瞬』でやった最初のゴミ箱と違い・・『徐々に徐々に』炎を強くし、ゴミ箱周辺内の温度をあげていく。
「( ・・誰一人として隙を突こうとはしないなあ。
ワザと俺も颯太も隙だらけなのに )」
ドロリ・・ドロリ・・・・と、焼け熔けるゴミ箱から誰も目を離さない。
熱は一切外へ漏れでていないのに・・男共はスゴい汗だ。
灰すらも残さずゴミ箱が焼けきった処で炎を消す。
下の熱も操作しているので、ゴミ箱が置いてあった道路にも焦げ跡一つ残らない。
男共の・・生唾を飲む音が、聞こえた。
「・・証拠も、残らない」
俺の言葉に『ビクッ』っとする男共。
颯太のクスクス笑う声に『ヒッ』っと悲鳴を上げる男共。
「お・・オレが一声かけりゃあ援軍が───」
「一発で数十人は『消す』自信がある。
・・好きなだけ呼べ」
「や・・ヤクザとも繋がってんだ、一万の───」
「ならさっきの『二つ』のゴミ箱みたいに連射すれば良いだけのこと・・。
一発二発三発・・百発・・千発・・・」
「幹太姉ちゃーん、それじゃあ僕が計算に入ってないよう?」
「はは・・すまんすまん。
じゃあ競争だな。
───どっちが先に一万を『喰い尽くす』か・・の」
「わぁい、楽しみぃー♡」
「て・・てめえ等、頭オカシイんじゃ───」
「───頭オカシイ奴を敵に回したのは・・お前達だよなあ・・?」
「・・・・・・っ!」
「お、俺は関係無えッ!?」
「「「お、俺もだッ!」」」
次々と男共が逃げていく。
最後に残ったのは、イチャモンをつけてきた・・恐らくはリーダー格の男。
ソイツも、つまらない捨て台詞を残し逃げていった。
「・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、勘弁してよもうっ!?」
『ふふん。
この程度でビビってどうするのです、アヤカ』
「・・たぶん挑発してんでしょうけどザレだって、ちょい震えてるわよねっ!?」
まあ『村破級【ケルピー】』や『街破級【ファフニール】』相手に戦ってきたザレならあんな連中、ビビる必要ない。
たぶん俺と颯太の、殺意の乗った魔力に当てられたんだろう。
「ま、イイさ。
さっさとファミレスに行こうか」
◆◆◆
「───あ、理太郎君おきた?
のですわ?」
「あ、アレ・・?
俺・・どうして寝───
ああ、アイツ等は・・!?」
「ヤッつけたのよー。
俺・・私達も秋原甲冑柔術を習っているのだわー」
ファミレスにて。
寝ているだけだから、と店員を安心させ理太郎君をファミレスの席に寝かせていたら無事起きた。
「そんな・・オレ、役に立たなかったんだ」
「違うよ、君が勇気を出してくれたから奴等の隙をつけたんだ・・のよー」
「・・ホントか?」
「まあ、倒してくれたら一番格好良かったのですわ」
「チクショー!
そーゆーグサッと来る一言をケロッと言うあたり颯太ソックリだよな!?」
「ハイハイ、美少女二人に挟まれて泣き言いわない、のよー♡」
「ハイあぁーん♡
のですわ♡」
「あーん♡」
「や、止めろぉー!?」
近くの席のお客がクスクス笑う。
別の席では男子中高生が歯ぎしりしている。
ふははははッ!
美女と役得したけりゃ誠心誠意が大切だよ、君たち♡
「まっ、しょーがない。
理太郎だっけ?
ほら、コッチの野菜も食いなさい」
『じゃあワタクシも。
ワタクシが男にココまでするのですから感謝なさい』
四人の美少女に囲まれ一斉の 「 あーん 」 をされる理太郎君に、更に歯ぎしりの音が大きくなった。
理太郎君は幸せ者だなあ。
◆◆◆
「クソっ、クソっ、クソオオオっっ!
この俺をコケにしやがってぇぇぇ!!」
半グレの男達の拠点。
寂れ、人気の無い商店街の一角。
薄汚れたビル。
その地下の一室で・・男達は怒りに暴れたり、恐怖に震えたりしていた。
「オイっ!
仕返ししようとか、考えんじゃ無えぞっ!?」
「止めてくれ・・ありゃあ本気の目だ!
マジで一万ぐらい消す化物だッ!?」
「ひよってんじゃ無え───」
男達が囲んでいたテーブルが・・『消えた』。
───この光景には見覚えがあるハズだ。
「ひいいィいイイ・・・ッ!!?」
「な・・何でココが・・!?」
男達がおたつく間に、唯一の出入口のドアノブが炎上するのが・・見えたのだろう。
慌ててドアに男達が殺到するも、ドア周辺のコンクリートが『不自然に』変形しておりピクリとも動かない。
「おいッ!?
どうなってんだよ、こりゃあッ!??」
男達は知らない。
自分達に『パス』が繋がっている事を。
悪意と悪意───
『憎悪』とて、人の心の繋がりである以上・・『魔力のパス』はつけられる。
・・だから『俺』はお前達が何処に逃げようと居場所が分かるし、部屋の配置も分かる。
「ぎゃあああッ!?
今度はテレビが・・!!」
「冷蔵庫が・・!??」
『俺』は、人殺しは趣味じゃない。
もう、『部屋の中のモノ』には手を出さないよ。
・・地上部分のビル全てのコンクリートを使って蓋はしたけどな。
「───も、もう悪かった、あやまるっ!
だから・・っ!
だから、出してくれえええ・・ッ!!!」




