14『チートコード・ヒロインの好感度いきなりMAX』
・・やたら惚れっぽくなった、この身体。
仮説として、この女の身体は転移してきた瞬間に再構成された・・言うなればこの見た目で、0歳児の肉体なのだ。
赤ちゃんは自分に利する人間には誰にでも懐く。
───けど魂は16歳。
異性に懐く・・って事はまあ、そーゆー感情にされてしまう訳で。
「・・『呪い』で、男を見た経験を潰されたせいで・・善い人=良い人、になっちゃったんですよね~・・♡」
「呪い・・ねぇ」
更に。
嘘をつくと魔力の流れが乱れるのは、『魔力』と『感情』が密接な関係に有るからな訳で・・例えば『悪意と善意』を直接見えれば、ゲームの索敵レーダーっぽくならないか?
「と、思ってレーダー魔法を作ったら・・ココの人はまあ善い人達ばかりで・・♡」
「レーダーとやらは分からンがよ・・」
本来、時間をかけて分かる筈の善意が出会った瞬間分かってしまい、一瞬で懐き・・惚れてしまう訳だ。
「いやぁ、エロい目で見てくる事も逞しさに見えちゃって・・・テヘッ♪
一言でエロい目といっても、相手を愛でる目と・・濁った性犯罪者の目とがあってですね!?」
「・・ナニ語ってんだとか言わネェぞ」
颯太にも安全の為に教え( て、しまっ )たが・・あの年頃だと懐いても尊敬や憧れになって、恋心にはならないんだろう。
ただ・・元々、武術一筋なのもあり家族や彩佳以外の人間に人見知りしてたのに、異様に人懐っこくなっている。
「オッサン連中はまだ良いさ。
街に帰りゃあ嫁さんが居るしな。
・・問題は若けえ連中さ、その腕を気遣うウチに・・ってトコか。
( イキナリ乳を見たっつうのもデケェんだろうが )」
母さんは美人だった。
その母さんにそっくりらしい俺は、自分で言うのもなんだが美人のハズ。
そんな美人が、ラブラブ光線打ちまくってくれば ( 自覚、めっちゃアリ。) そりゃ男の心理として気にもなるだろう。
( 初対面で胸まで見せちゃったし。)
「幸いつーか、何つーか・・。
御姉チャンを奪いあう処か、気持ち悪ィ位仲良くなってて仕事の効率は上がってらァ」
「俺も困ってはいる・・んですけどねぇ。
・・はあ♡」
「困ってる顔に見えねェよ。
ヨダレを拭け」
男心と女心が移ろう恋愛モノかと思ったら、男に会った瞬間に無理矢理発情させられる媚薬モノだったよ。
「 あ~炎魔法は暑いな~ 」っつって、胸元のボタンを一つ開けてみたり。
ラブだかビッチだか。
「世間知らずなのが原因だって分かってるんで、色んな男を見たら直る・・とは思うんですよね~」
肉体が魂と釣り合う年齢になるまで待つ・・なんて無理な以上、悪い男を見慣れればマシになる( ハズ )。
「旅と戦闘の技術もそれなりに叩き込んだし、介護付きとはいえ生活出来てる。
──ソッチは心配してねェが・・色んな男、か」
・・ん?
変な間だな・・。
まさか荒くれ者の集まる犯罪都市に行く・・って訳じゃあなさそうだけど。
「御姉チャン達のいたニホンって国ァ、男女差別ってのは在ったのかい?」
「まあ・・無いとは言えませんが、俺の周りの女は基本好き勝手してましたよ」
無論、男の立場から見て言ってるだけだし真実は分からんが。
「───なら、御姉チャンの国からは誘拐強姦にしか見えないような男の一方的な恋愛観もこの国じゃあ当たり前だぜ?」
「・・えっ!?」
「仕事にしてもそうだ。
『妻・娘が働くなんて、主が稼げねぇみたいで( 実際、稼ぎが悪くとも )体裁が悪ィ。
一歩も家から出ず、男の帰りを待ってろ』
ってェのが一般的だ」
昔の日本みたいな男尊女卑がまかり通るのか。
さっきの話で出た『オッサン世代の嫁』ってのも、クズ男から助け出した女性との恋愛結婚だそうだ。
「そうだなァ、確かにそういう『呪い』だとその男好きは直るかもなァ」
「お、男好きじゃないですよ!?
善人限定で惚れっぽいだけです!」
心外な。
◆◆◆
やはり村々では変な目で見られた。
旅する女、仕事する女は異常らしい。
「【首都】に行きゃあ、もっとヒデェぜ?
選民意識ってのが有ンだよ」
・・との事。
まあ『善い男・悪い男』を見慣れる練習・・の、練習にはなるか?
旅を手伝い、行商を手伝い・・色んな知識心得を教えてもらった。
そんな転移して一ヶ月半程経ったある日。
この【銀星王国】と、そのお隣さんの【連合】との国境沿いにある、検問所と交易所を兼ねた村に立ち寄った。
全ての機能が、小さい中にムダ無く凝縮された感じ・・転移前の感覚だと様々な売店がある空港かな?
( 空港に行った事無いけど。)
様々な国の人間がいて、男女差別は全くと言っていい程なかった。
「ちょっとオレ達ゃあ、商工ギルドの御偉いサンとこに行ってくらァ。
数日はココに居る。
御姉チャン達は行商を手伝い終えたら適当に遊んでな」
「「はーい♡」」
異世界の珍品奇品が集まってるからな。
コレぞ、異世界旅行の醍醐味って感じだ。
◆◆◆
「もし・・其処な御仁」
「・・ん? オレの事かァ?
外人の奥サンよぉ」
「うむ、見ればその格好・・旅装だと思うんじゃが、旅人かの?」
「ああ、そうだぜ」
「では『ニッポン』という国を知らんかのう?」
「『ニッポン』~?
いや、悪りィが知らねェな」
「そうか・・いや、手間取らせてすまなんだ。
──・・。
ところで、ソチラは御孫サンかのう?」
「オレッスか?
はい、孫ッスよ」
「うむ、元気があって宜しい。
やはり孫とは可愛いもんじゃなあ・・。
では、失礼する」
「・・ンだあ? ありゃあ?」
「に・・20代位にしか見えなかったッスけど・・孫、居るんスかね?」
「外人はやたら若く見える人種も居るからなァ・・御姉チャン達がイイ例だろ?
御姉チャンは、オメェと同い年ぐれェだと思ってたゼ」
◆◆◆
「あっ、幹太姉ちゃん、コレ可愛いよ!」
「コッチも良いなあ」
「コレはどうですか?」
颯太よりちょっと年下っぽい娘さんを連れた母親がやっている、この国では非常に珍しい女性の出店に、つい立ち寄る。
扱う品も手作りらしく女性っぽい・・やはりこの国だとあまり見ない品々で、女体化後すっかり可愛い物好きになった俺達で買い占める形になった。
御礼にと、娘さんが果実水を持ってきてくれた。
歩きまわった後だったんで有難い。
彼女達は次の俺達の目的地、ディッポファミリー傭兵団の本拠地である【銀星王国首都】の北にある【北の村】から来たらしい。
「正直・・男尊女卑の激しい【銀星王国】だと、女性二人で女性用品を売るってキツいんじゃ・・?」
「そうですね・・この村以外だと・・。
極まれに貴族様の女性が、冷やかしで買われる時も有りますが・・」
いくら可愛いと言っても平民が普通の材料で作る物・・貴族は貴族の女性用品店が有るんだろう。
「じゃあ、役立つか分かりませんけど・・故郷の『ニホン』って国の小物の作り方を教えてあげましょうか?」
「そんな・・良いんですか?」
「簡単な物ぐらいですけどね」
颯太は小学校で作った事があるらしいクッションを、俺は昔、彩佳に作った事がある毛糸の猫ぐるみ ( 向こうが欲しいつったんだからな? ) を、貰った端材で作ると喜んでくれた。
後は着せ替え人形などの概念を教えて最終日。
「私達はココでの商売が終えたので、【北の村】へと帰ります」
「お姉ちゃん達・・美人だし色々助けてくれたし、女神さまみたい♡
アリガトウね、バイバーイ!」
「「バイバーイ!」」
「おう、出るぞ!」
・・さあ、もうすぐ【銀星王国首都】だ。




