138『割とガチで 「 似てるんじゃ・・? 」 と思ってます。』
見知らぬ少年に話しかけられた。
誰だろ?
・・どっかで見たことある、かな?
「颯太ん家の、」っつってんだから颯太の知り合いか?
「あっ、理太郎君!」
理太郎・・理太・・・ああ。
人見知りな颯太が、唯一小学校で会話出来る友達がそんな名前だったような・・?
「ん? オマエ誰だよ?
何でオレの名前知ってんだ?」
「あれ・・っ!?
んーと・・んーと・・・」
「・・・・・・颯太?」
「んぇ!?」
「・・・・」「・・・・」『・・・・』『・・・・』
何かどっかで見たことある展開な気がするなあ。
「( いや、現実逃避してんじゃないわよ!
どうすんの!?
あの理太郎って子にバレて良いの!? )」
「( えっ・・?
ど、どうなんだろう・・ )」
「( 颯太は翻訳チートあるんでしょ!?
ザレ達の前で、
『僕、女に成ったんだ♡』
とか口走ったらどうすんの!? )」
「( ・・・・ヤバいじゃん!? )」
颯太も極たまに、地雷を踏みぬく癖があるからな・・無いとは言えない。
颯太には、颯太なら聞こえるだろう超小声で 「 秘密っ! 」 と伝える。
「あ・・あらあらー。
そ・・颯太は従弟よー・・?
俺───私は颯太の母さんじゃ無いのよー。
母さんの、し・・親戚よー。
貴方の事は颯太に聞いたのだわー」
『御姉様・・?
ソレ───まさか学園長先生のモノ真似ですか?』
似てるだろ?
産まれは名家の御嬢様。
一流女性騎士として国中に名を馳せて。
俺の知る一番気品高い女性だ。
( イキナリ、人の胸を揉む性癖とか無ければ。)
『では報告して宜しいですか?』
御免なさい。
内緒で御願いします。
「??? 颯太じゃない・・?
ま、まあ・・そりゃそうか。
お前・・どう見ても女だもんな」
異世界転移して女体化した直後、颯太の顔はソコまで変わらなかった。
けど今は父さん ( 童顔可愛い系 ) の面影を残しつつ、女顔になっている。
着ている服も、イ○ンで颯太用に買っていた服のうち『アリスファッション』とでも言うのか・・白と水色を基調としたフワフワフリルのドレス。
「そ・・そうだよ・・・ですわ!
僕・・ワタクシ、颯子ですのよッ!?」
「「ぶフっ!」」
『・・ソウタ様?
あと、御姉様・・? 今、何故吹きだしましたか?』
御免なさい。
事情は後で話すから、今は合わせて。
『・・お姉さん、私の真似はしないんですか?』
◆◆◆
「えっ・・?
颯太って今、旅に出てんの!?」
「そ・・そうなのですわ」
何となくまだ理太郎君と一緒に居る。
「帰れ!」も、違うし「帰る!」も、違うし・・。
まあ、父さんと喧嘩して落ち込んでいた颯太から暗い表情が取れているし・・気分転換には良いか。
ただ・・理太郎君?
・・近くないかい?
笑顔が眩しすぎやしないかい?
「理太郎君はなんで病院に居るのですわ?」
「俺?
あー・・颯子は昨日、イ○ンで人喰いクワガタの騒ぎがあったって知ってるか?」
「はいのですわ」
「オレもソイツに襲われて怪我したんだ」
「えっ!?
理太郎君、大丈夫だった!?
・・あ、大丈夫のですわ?」
「おうッ!
逆にやっつけて捕まえてやったゼ!
アイツ等を図鑑にしてやる!」
「わあ、凄い! 見たい!」
「・・やっぱりお前、颯太にしか見えないなあ。
・・イイぜ、家に来るか?」
「行く行くー♡」
「イクイクー・・って。
颯太、ヤラシイわぁ・・。
理太郎ってガキも普通、女の子をヒョイヒョイ家に連れこむぅ!?」
奈々・・下品すぎ。
あと俺、彩佳をヒョイヒョイ家に連れこんでた・・。
( 中一くらいまでですよ? )
でも確かに、そのクワガタは見たい。
「お・・私も見たいのよー。
良いかしらー?」
「ええ・・お、お姉さんも?
まあいっか」
若干警戒しつつも相手に合わしてくれる。
中々出来た子だ。
・・でも、まだ合格はやれん!
「みんなはどうする?
・・のよー?」
『私はこの黒キノコを色々見たいです。
・・この私の特殊保存ケースの中の!』
「私、ビタちゃんと一緒に居てイイ?
一応黒キノコに寄生された身としては気になるのよねぇ」
という事で病院まで乗せてもらってきた山柄さんトコの運転手さんに、二人をビルまで連れ帰ってもらう。
( 奈々には両親にしっかり事情説明させてから。)
・・頭の良いギャルってコミュニケーション能力高いなあ。
黒キノコに寄生される前の奈々は、親や教師連中に取入るのが上手かったらしい。
ジェスチャーが豊富で的確。
ビタと何となくとはいえ、意思疎通している。
「アタシは・・幹太に付いて行くわ」
『ワタクシは御姉様とともに』
という訳で、俺・颯太・彩佳・ザレで理太郎君の家に。
◆◆◆
「ただいまあー」
「はぁーい、お帰りなさい理太───
・・ど、どちら様かしら!?」
理太郎君家にて。
理太郎君を出迎えたお母さんが俺達を見て、一瞬たじろぐも直ぐ笑顔になり応対してくれる。
「コイツ等、颯太の親戚なんだって」
「あら、颯太君の?」
「実は私達も、クワガタの被害者 ( みたいなモン ) でして・・。
理太郎君がクワガタを捕まえたそうで、見させて貰えないでしょうか」
「あらら、そうなの?
まあ、腕───
どうぞどうぞ、遠慮なく上がって!」
なんか勘違いされたっぽいけど、コレ幸いに上がらせてもらう。
( 昨日、腕がこんなん為るまで怪我したら動けなさそうだけど。)
◆◆◆
理太郎君の部屋へ。
漫画に出てくる『元気少年』って感じ。
「コレが・・」
「オレの腕に噛みついてきた所を掴んで床に投げたらピクピクしてたんで、捕まえたんだぜ」
確かに元気が無い。
けどピクピクという程でもなく、ヨタヨタと餌の鶏肉と水飲み場を行ったり来たりしている。
黒キノコは・・一見、見当たらない。
昨日見たヤツは・・暗がりだったり、『万』が高速で動きまわったりで・・転移してきたクワガタ全部を確認してはいない。
けど見たヤツは全部に黒キノコが生えていたハズ。
「真っ黒なキノコ、生えていなかったかしらー?
私達が見たクワガタは皆、キノコが生えていたのよー」
「えぇ・・?
んー、そういえばクワガタを拾う時に黒いこんな形の『ナンか』が落ちてたような・・」
「えっ?
じゃあこのクワガタは『大丈夫』のですわ?」
いや、落ちた黒キノコは表面だけで・・菌糸が脳に絡み付いている。
『【空の口】の手先ではないから大丈夫』とはイかないだろう。
最も・・その場合、ただの人喰い魔物に戻るだけだろうけど。




