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136『初対面でケンカを売った自分は、ハナから可能性すら入れていません。』


俺が、颯太が、御互いに嘘をついている・・そんな事を言う源太ちゃんはなお、話を続ける。




「幹太、御主は異世界の為と言いつつ・・颯太や儂や仁一郎君の、家族や仲間の為に成らんと認ずれば世界など、どうでも良かろう?」




・・否定はしない。




「一番最初の嘘は

『第一目標が元の世界に帰る事。

第二目標が異世界を楽しむ事』

・・じゃな」




異世界に転移し。

魔力に目覚め。

ディッポファミリー傭兵団に助けられ。

・・俺と颯太、二人で誓った言葉───




「颯太も、その言葉を誓った瞬間は嘘では無かったやもしれん。

しかしのう・・。

平和な日本では役にたたん人殺しの術が───異世界では大いに役立った・・ソレがどういう事か分かるか?」




・・そんなの分からない。

颯太は鍛練が好きで・・毎日毎日、小学校へ登校する前に朝練、帰ったらずっと鍛練をしてて・・。




「好きでも、の。

たまに不安になるんじゃよ。

進学の役に立つで無し。

野球だサッカーだのように銭になるで無し。

意味あるんか?

・・とな」




意味とか・・そんなの・・。




「そんなある日、『ちいと』だよりとはいえ・・突然役に立つようなった。

しかも大好きなあねが喜んでくれる」




俺・・?

俺のせい・・!?




「あくまで颯太の心中だけの話じゃしの。

誰のせい・・ゆう話では無いわい」




・・・・・・。




「儂がそうじゃからのう。

特に儂の場合・・若返り、病が治り、充実しとる。

つまり第一目標が

『元の世界へ帰る』

事から

『異世界を楽しむ』

へと変わったのよ。

幹太にも・・自分そうた自身にさえも、バレんウチにな」




たまに、颯太が一瞬だけ別人に感じる事があった。


それがつまり

『元の世界に帰る ( 日本に留まる )』

より

『異世界を楽しむ ( 異世界へ行きたがる )』

───って事なのか。




「御主はまだ異世界を楽しむ心を知っとるし・・異世界の危機を何とかしたいと思おとる。

故に、心の奥底では颯太の変化に気付いとったんに、気付とらん振りしウソをついとったんじゃ。

・・じゃが、な。

仁一郎君は・・のう」






「そんな事を言うものではないッ!!」


「で、でも!?」




───っ!?

颯太と父さんが・・言い争っている!?




「ソレは・・ソレはもう、

『家族同士会えなくなっても良い』

と、言っているようなモノだぞッ!」


「そんな事言ってないっ!

出てって!

僕・・もう寝るっ!!」


「颯───っ・・・・分かった」




父さんが悲しそうな怒ったような・・多分、泣いて・・初めて見る顔で、部屋を出ていく。


源太ちゃんと顔を見合わせ───『任せた』と、アイコンタクトで伝えられた後に源太ちゃんも部屋を出ていく。


任せた・・か。

父さんも、颯太も。

初めて見る顔。


父さんは、母さんが死んだ時だってあんな顔しなかった。


颯太は、今まで本気で怒ったところなんか見たこと無かった。


どうしたらイイんだろう。

俺だって、ついさっきイキナリ・・

『颯太に嘘をつかれていた』

『颯太に嘘をついていた』

・・なんて言われてショックを受けたままなのに・・。


取敢ず、一緒のベッドに入る。




「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・俺は、さ。

颯太も、父さんも、源太ちゃんも、彩佳も、リャター夫人も、ザレも、女学園の皆も、ビタも、ディッポファミリー傭兵団の皆も、みんな・・みんな大好きだ」


「・・うん」


「みんなも多分、俺達の事が大好きだ」


「・・うん」


「・・・・・・無事だと良いな」


「・・そだね」




───自分で・・何を言ってんのかよく分かんないまま、俺達は眠りについた・・・。



◆◆◆



翌朝。

朝食はレストランでとる、との事。




「おっ、お は・・ょ・・ぅ・・・」


「あ・・ああ、おは・・よう・・・」




うーん・・・ぎこちない。

二人とも、親子喧嘩したことなんて無いから ( つうか、普通の喧嘩すらした事ない? ) 御互い次の一手が分かんないっぽいな。


颯太と父さんの様子に気付いた皆が、ソレとなく俺に視線を向け・・ビミョ~な笑顔しか返せない。


そういや俺も喧嘩らしい喧嘩ってした事ないんだよなあ。

( 彩佳と? した事ありませんよ?? )


朝食はバイキング形式。

皆、思い思いの食品 ( 異世界組はチョコフォンデュのアレに興奮したり困惑したりしていた。) をとり・・頂きます。


暫くして、このビルに宿泊していたらしい田坂も朝食を食いにきた。

・・別に、ソレは良い。

人間だもの。

飯ぐらい食うだろうさ。


───ただ・・何で、俺達のテーブルに来て食う!?

何で話しかけてくる!?

俺達の好物だの趣味だの、御前には関係無いだろ!?


颯太か?

颯太狙いか?

囲炉裏なのか!?


炎魔法で軽く追っ払い、颯太と食事を続ける。

・・御馳走様でした。




「コレが【変換機】だよ」




食後、山柄さんが【変換機】を片付いたテーブルの上に並べる。

見た目は、貼る懐炉みたいだな。




「実際、身体のどっかに貼っときゃ効果はあるよ。

特別な操作とか必要は無い。

・・ただ、一応精密機械だからね。

鎧かなんか・・必要なら防弾防刃チョッキを用意するから、その上に着込みな」




俺は普段、全身や樹脂油を入れた水筒を保護する防壁魔法で充分か。

皆の結界魔法を解き、【変換機】を装着。


んん~??


・・・・。

・・・・。

・・・・。

・・おおっ、100%───とはイかないけど、ほぼほぼ魔力の消滅は無くなった。




「『世界と世界の境界線』に『扉』を開ける方法は、私達の知識と・・リャター殿に解読してもらっている異世界の知識の組合わせで、準備は進めているよ」


『私の方は、7割がた解読し終えたわ~』




山柄さんの御先祖様が、【空の口】の最後の一撃でコチラの世界へ来た辺りの知識が役立ちそう・・との事。


山柄さんとリャター夫人は『扉』の準備に。

源太ちゃんはリャター夫人の通訳として。

父さんは源太ちゃんのフォローで。

暫く缶詰めになるらしい。


そして俺達は。




「御主たちには、異世界への準備をしてきて欲しいんじゃ」




源太ちゃんにお使いを頼まれた。

・・事実、準備は必要だろうけど・・今は颯太と父さんを離した方が良いという判断なのかもしれない。


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