133『何人か、【タンク】という言葉にイヤラしさを感じる性癖の人が居ました。』
「数が多いな・・頂上で待っている父さん達を何時までも放っておけないし、援軍が異世界から転移されたら厄介だ。
真っ先に【歪み】を潰そう!」
「ああ、同感だね」
つまり全員で【歪み】の元へ行き、全員で【歪み】を封印する山柄さんを援護。
ビタの【花の核】はまだ回復しておらず、源太ちゃんの【狼の核】は何時補給出来るか分からないんで今回は、山柄さんが自力で封印するとの事。
颯太と源太ちゃんは遊撃。
「ええいっ!」
「ふんっ!」
「「「あっ、あのクワガタを一度で数匹・・!?
・・成る程、魔力で身体の動きを補佐して・・」」」
リャター夫人は超速の剣技を、ザレは剣技と土魔法を組合せた戦技を繰り出し山柄さんを直接援護。
『あらあら～、大変ね～』
『御姉様、こちらは問題有りません!』
「「「おお・・っ、此方も一匹一匹確実に・・っ!」」」
「お前等、呆けてんなよっ?
もうこの際、アンタ等も戦力だからな!」
「こ、小娘・・誰に命令を───」
「「「はいっ、了解しました!」」」
「お、お前達!?」
俺はどうせ、この数のクワガタを相手するだけの魔力はない。
爆炎魔法ならヤれない事もないけど・・酸素だ何だを考えると、皆の魔力タンクになった方が良い。
「魔力譲渡・改!
拡散放射タイプっ!」
「───!?
す、凄いねえ・・こりゃ」
「い・・いくら魔法を使っても、魔力切れにならない・・!?」
田坂の部下達も戦える奴は、小さい風魔法や土魔法で戦う。
戦えない田坂の部下は、彩佳やビタと一緒に水分補給や栄養補給 ( ビタが途中で採取した野イチゴなど ) でフォロー。
「小娘・・貴様、一体っ!??」
魔力自慢だった田坂が皆を・・俺を見て絶句する。
いいから、さっさと手を動かせ!
「大量のクワガタだの巨大コブラだの出てきた穴だからか、なのか・・重たいねッ!?
田坂・・手伝いな!!」
「何故ボクが貴様を───」
「手柄ならアンタにくれてやるよ!」
「舐め───『ガキかぁ!!』・・んがッ!?」
魔力譲渡の片手間に田坂に掌底をカマす。
「こっ、小娘・・っ!」
「お前の『ツン』なんかに、興味無いんだよ!
お前の部下も死ぬかもしれないんだぞ!?」
実際、俺達と一緒にいて死ぬこたナイと思うけど山柄さんの封印が何時終わるか分からない以上・・可能性は無いとは言えない。
「くっ・・っ!」
仕方無しといった感じで山柄さんを手伝う、田坂。
「しょうが無く、しょうが無くだッ!」 とう、まだ渋っている。
だからお前の『デレ』にも興味無えよ。
『山柄さんの器用さ』と『田坂のパワー』が合わさり、一気に【歪み】が封印されてゆく。
「───よし。
封印完了だよ!」
「源太ちゃん!」
「うむ」
「みんな、源太ちゃんが開けてくれた通路に。
颯太、殿を頼む!」
「分かった!」
『私も後ろに付くわ～』
皆が広間へ入ってきた通路に移動したのを確認し───
「パンツァァァァーーファウストォォォォォォーーーーーっっ!!!」
俺達を追ってきたクワガタをまとめて吹きとばすッ!
「アレだけ魔力を放射した後に・・!」
「何て出鱈目なんだい・・」
「まだまだ、幹太姉ちゃんのチカラはこんなモンじゃないよ?
僕達にいろんな魔法をかけてるもん!」
「は?」
「更に言えば、貴方達のいう『世界の何某』に魔力を失い続けいるわ」
「はあ??」
「その儂等が苦戦したんが・・『城破級【空の口】』の下、『街破級』じゃよ。
・・ちなみに【なぁが】は『街破級』の更に下、『村破級』よ」
「はあぁぁっ!??」
この辺で、俺の意識は飛びかかっており皆の結界魔法を維持するのに精一杯だった。
だから───
「じゃから、『此方から【歪み】を封印するだけの対処療法』では無く、儂等を異世界へと連れてゆく『【空の口】を倒す、根治療法』を目指すべきじゃと思うがのう・・」
という、源太ちゃんの交渉は・・ほぼほぼ耳に入っていなかった。
