129『鈍感系主人公・・意外と書いてて楽しい。』
「な・・奈々ちゃん・・?
一体、何の話をしているんだい?」
「あたしが悪い奴に誘拐されて幹太に助けられたって話よ」
「はあっ!? ゆ、誘拐・・!?
な、何を・・・・」
・・実際、今の奈々は何なんだ?
性格も昼に見たときと違うし、妙に事情通になっている。
まるで───
「何ていうのかしら、生まれ変わったってゆうか・・」
「再構成?」
「ああ、そんな感じ?
記憶と性格はそのままに精神だけ0歳になった気がするわ。
・・んー、記憶がそのままってのは違うか。
【空の口】の記憶がちょい混じってるし」
「【空の口】の記憶?
・・心が混ざったのか!?」
「もしキノコが発芽してたらね。
今のところは【空の口】が言ってた『殺せ』とかを覚えていただけよ」
嘘は言ってない。
・・てか、よく見れば微かに魔力を宿している。
あの黒キノコの魔力か?
しかも、魔力世界の住人ではないのにザレやビタにリャター夫人のように俺から洩れ出る魔力を吸収している。
( 彩佳や彩佳の家族は吸収出来ていない。)
俺達が『女体化』による再構成なら、奈々は『茸化』による再構成ってトコか。
───ってな話をしていたら・・なんだ?
ただっ広い場所にきた。
「ココって・・ひょっとしてヘリポート?」
数機のヘリコプターの前に車が止まる。
俺と彩佳一家が下車すると後続車からまず颯太が駆けよってきて、次いで父さん、異世界組、山柄さん、山柄さんの組織と思わしき人々がよってきた。
リャター夫人はヘリに目を奪われている。
『空飛ぶ乗り物』だと説明したらなんか 「 はわはわ 」 言いだした。
「コレで現場までひとっ飛びして貰うぞ。
ワタシが彼の地の封印担当になったんで、三人は結界をはる間を護ってくれ」
「はい」
「うんっ!」
「・・・・・・」
「・・アレ?
源太ちゃんは?」
源太ちゃんは俺達から少し離れた場所、車から降りたままの場所にいた。
・・汗が凄い。
「三人・・か。
幹太と颯太とリャター殿かの?」
往生際・・。
「いやいやいや、【デロスファフニール】ん時、山を飛んで ( 空中を跳ね蹴って ) 俺達の前にきたんじゃん!?」
『そう言えば、そういう事も有りましたわね』
「じ・・自分で跳ぶんならまだ分かるが、鉄の塊が飛ぶゆうんは意味が分からんじゃろ!?」
・・まあ何となく言わんとする事が分かるのも、すっかり魔法使いになった証拠だなあ。
『私! 私は乗りたいわあ♡』
『ワタクシは御姉様に付いていくのみですの』
『一人で置いてけぼりは嫌です』
「わ、私は父として付いていくぞ」
「ぐぅ・・」( 半泣き。)
確か父さんも飛行機とか苦手だった筈。
その父さんが付いてくると言うので、源太ちゃんも観念したようだ。
実際、警察に被害が出ている【ナーガ】数匹なんて俺達なら一人でもイケるしな。
( 魔力切れが怖いんで源太ちゃんや颯太一人では行かせられないけど。)
「あ・・アタシも・・」
「彩佳・・」
「ちょっと待て彩佳!
お前はまだオレ達家族に迷惑をかけるのか!?」
「ぱ・・パパ」
「早く奈々ちゃんを安静にさせなきゃいけないの!
こんな訳の分からない事を言う一家に、こんな訳の分からない場所に連れてこられて・・さっさと帰るわよ!」
「ママ・・」
俺の家族への悪口にイラッとするも、仕方ないかとも思う。
事情が分からないと、そりゃそうだろうさ。
だから、ソッチはソッチで無視してくれ。
ウチも彩佳以外、ソッチに関わらない。
俺が一家を置いてヘリの方へ行こう・・とすると
「彩佳・・行って。
幹太をお願い・・!」
「・・奈々?」
「パパとママはワタシが説得しとくから。
幹太を助けてあげて」
「「な・・奈々ちゃん?」」
「で・・でもアタシ・・なんかが」
「あら、じゃあワタシが幹太を助けるわよ♡」
「っ・・!?」
「───行って。
【空の口】は異世界だけの問題じゃない」
「・・・・うん。
有難う、奈々!
パパ、ママ、後免なさい・・!」
呆気にとられた彩佳の両親 ( と、俺 ) を置いて、彩佳は皆が乗り込むヘリの方へ・・奈々は乗ってきた車の方へ歩いてゆく。
・・なんなん?
意味も分からず、彩佳とともにヘリコプターに乗り込もうとすると ( 一機目が俺、彩佳、颯太、山柄さん。 二機目が源太ちゃん、父さん、異世界組。) 皆、生温かい目で見てくる。
・・ザレ以外。
・・なんなん??
◆◆◆
○○県○○市上空に到着。
火災が見える。
あそこが例の現場らしい。
さっきTVで【ナーガ】が車の中に逃げた人間を捕まえる為、車を破壊したと言っていた。
そっから、集まったパトカーやTVクルーの車や機材に炎上していった、との事。
「【ナーガ】・・数匹って話だったけど・・コレ数十匹は居るぞ!?」




