119『一方、そのころ警視庁捜査第零課・魔法対策班では───とかは無いです。』
「父さん、急に電話切れちゃった」
「どうしたのかしら」
「パソコン使いながらじゃから、変な操作してもうたんじゃないかのう」
そんなトコかな。
暫く玄関で待って・・んー?
一分は軽くたっている。
「ちょい長いなあ?
父さん、何処に車止めてたん───」
「「「キャアーーーッ!?」」」
「!?」
悲鳴!?
しかも一人分じゃあ無い・・?
『何でしょうか、御姉様!?』
「分かんない・・。
事故か、泥棒か・・」
みんなや、周囲のお客さんもザワザワし始める。
───と、ソコへ父さんの車がきた。
「幹太! みんな!
早く・・車に・・!!」
「父さん!?
あの悲鳴は!?」
「分からん・・!
だが、危険に近づく必要はない・・!」
ま・・まあ、そりゃそうか。
未だ颯太は寝てるんだし。
みんなも満足に魔法が使えないんだ。
「急に電話が切れたから焦ったよ。
どうしたの、パソコン使いながらだから失敗した?」
「ん? 幹太が切ったんじゃないのか?
父さんは仕事でよくある事だから、そんなヘマはしないぞ」
「んん~・・そうだっけ?」
「車がちょい遅かったんはなんでじゃ?」
「あの悲鳴から一瞬遅れて、途中の入口から数人客が飛びだしてきたんですよ。
おそらく店内でなにやら在ったんでしょう」
なら交通事故って事はないか・・。
泥棒・・万引きで悲鳴は上がらないだろうから、引ったくり?
火事か・・最悪、通り魔───
『少なくとも、私達がお買い物したトコロは変な事、無かったです』
「悪意ある人間による人災であったなら・・幹太だったら感情れえだあで未然に防げたかもしれんが」
「必要無いですから!
そんなのは警察の仕事です」
「分かった、分かった。
つい・・の。
ちょい前まで荒事ばかりじゃったから」
魔物に盗賊、男尊女卑による下種共のチョッカイ・・トラブルは向こうからやってきた。
こういう時のコツは
「 ヤられる前にヤる 」。
時として、危険を感じたら自ら危険に飛びこむ必要があった。
「此処は日本だ。
事故も事件も一般人が係わる事じゃないんだ、幹太」
「うん」
◆◆◆
家に到着。
彩佳はこのまま帰るとのこと。
親に何と言って学校を休んだかは知らないが、ソレなりに怒られる嘘だそうだ。
「俺も・・」
「イイわ。
アタシが正直に言わなかったのが悪いんだもの。
ちゃんと謝るわ」
彩佳は・・両親とあまり関係が良くないらしい。
俺達が子供の頃は仲良くしていた。
・・が、妹の奈々の成績が上がるたび両親は奈々だけ可愛がり、彩佳への愛情を薄めていったそうだ。
彩佳がウチの家族とガッチリ付き合うのは・・そうゆうのもあるっぽい。
彩佳の家の門まで送り、俺も帰宅する。
「・・父さん」
「ん?」
「本当は店から出た時、言うつもりだったんだけど・・」
「あ、ああ・・あんな事があったら言いたかった事も言えなかったろう。
父さんも何時も以上に安全運転に集中していたしな」
俺が彩佳を送っている間に皆はウチに入り、父さんは車を車庫に入れていた。
車を入れ終え、車から降りてくる父さんの死角から話しかける。
「俺・・女体化以外にもう一つ、体に変化があるんだ」
「な・・何だね?」
「・・俺自身に問題無いってのは・・理解してね?」
◆◆◆
「痛みはないし、吸着魔法とやらで日常生活は問題無く送れるし、いずれ再生するんだな・・?」
「・・う、うん」
父さんは包帯が巻かれた腕を、どう見ても不自然なシルエットの腕を見て・・絶句する。
絶句し・・暫くして、大きく息を吐く。
・・ゆっくり・・ゆっくりと息を整え、ナニかを耐える顔で、
「 問題無いという理由は? 」
と、問うてきたので、この腕の事情と現状を説明した。
「そうか。
───・・頑張った、な」
嘘。
昨日の事もあってか、心の底からの本心じゃない。
けど・・善意で満ちていた。
父さんと一緒に家に入るとみんなが待っていて、俺の顔を見たとたん『にまぁ~♡』と、笑われる。
はいはい、どうせ単純ですよ。
◆◆◆
「「ほぁ~・・」」
「( 板の中に人が・・とは言わないか )」
ザレとビタがTVにかじりつく。
昨日は転移初日で・・女生徒達が居なくなるわ、颯太と源太ちゃんが気絶するわで、ほぼ何もしてないらしい。
リャター夫人も興味はあるようだけど、山柄さんから貰った異世界の本を調べる方を優先したようだ。
「何か有益な情報は有りましたか?」
『う~ん・・本の量が多いから、なんとも言えないけど・・引っ掛かるモノは幾つかねぇ』
みんなが居る居間に颯太を寝かせ、頭を軽く撫でながらリャター夫人の様子を伺う。
この本の情報次第でみんなは異世界に帰れるかもしれないんだ。
いざという時、いろんな動きが出来るザレにはフリーでいてもらった。
俺とビタは読めない文字が多い。
全ての本の文字を読めるリャター夫人には悪いけど、頑張ってもらうしかない。
( ザレがフリーの理由は、どうにも機械操作が苦手で俺の携帯を巧く使えなかった・・というのもある。)
「───うっ・・ううん・・」
「んんっ!?」
「・・ふぁあ~・・あ、幹太姉ちゃんオハヨー」
「そっ、颯太あ・・!?」
頭を撫でていた颯太が目覚めた・・!
痛いトコないか、気持ち悪くないか、お腹減ってないか、暑くないか、寒くないか、痒いトコないか・・!?
『も~御姉様、ソウタ様が困ってますわ!』
〔ソレでは次のニュースです。
本日未明、○○県○○市で新種のクワガタによる怪我人が出ました。
目撃者の証言によりますと、
『突然表れた。
たまたま怪我した、とかじゃなく明らかに人間を襲った』
との事で、同時に周囲では謎の電波障害もおきており───〕




