116『『大』を生かす為に『小』を殺す───様々なフィクションで破られてきた前フリです。』
「俺の中の【スライム細胞】を───
取るか・・俺が使う、か・・!?」
「ちょ・・ちょっと、待って下さい!
ソレって・・幹太を【人土】とやらにして、『三者』の使命だとかで【空の口】とやらとの戦いに巻き込むつもりですかっ!?」
父さんが慌てて話に割り込む。
異世界だ女体化だ云々は受け入れられても・・戦いどうこうって話だとさすがにキャパオーバーだよな。
我が子が徴兵されるかどうか、って話みたいなモンだし。
「流石に部外者へ、使命を押しつけるなんて無茶は言わんよ」
山柄さんが心外な、という顔をする。
「先に言ったとおり、コチラに出来る事は少ないんでな。
『コチラ』と『アチラ』の薄くなった壁を修復する手伝ってもらうぐらいさ。
バイト代も出るぞ」
『・・え?』
源太ちゃんの翻訳を聞いた異世界組が反応する。
『───だ、そうじゃ』
『・・やっぱりねぇ』
『ん~・・ん!?』
『そ・・ソレって───
わ、ワタクシ達は・・!?
【銀星王国】に・・女学園に帰れないんですの・・!!?』
源太ちゃんの声には極々僅かに怒気が孕んでいる。
リャター夫人は薄々気付いていたっぽい。
そりゃリャター夫人ほど理知的な人なら、イキナリ見た事もない文明や法則に囲まれたら、『他国に来た』では説明出来ない事ぐらい分かるだろう。
ビタは・・思考停止しているようだ。
【人花】だ、真の使命だ、と言われ軽くパニック中だったのもあるか。
そしてザレは───
・・形容し難い表情。
泣いて微笑んで怒って・・小刻みに震えている。
「『魔王』『城破級』『魔女』たる【空の口】に・・チカラを失いつつある【人土】に出来る事といえば───選択肢を奪う事、盾を奪う事ぐらいさね」
「盾?」
「【空の口】が、魔力を無効化したという記述は御先祖様の本に出てくる。
恐らく、『コチラの何某』を利用出来るみたいだね」
「だから・・」と、一呼吸置いて───
「アンタ達の為だけに、両世界を危険に晒す訳にはいかないんだよ」
───山柄さんは・・三人に、言い放った。
◆◆◆
我が家へ。
『・・・・』
『・・・・』
『・・・・』
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
車内は重苦しい空気に包まれている。
【スライム細胞】の件は保留にした。
リャター夫人は山柄さんから書籍データが入った電子パッドを貰い、ずっと研究している。
車内でそんなん見ていたら酔うんじゃと問うと、
『もっと揺れる馬車で書類を見なきゃいけない時もあるのよぉ』
とのこと。
「・・・・ひょっとしたら・・さ」
『はい・・?』
「俺のせいかもしれないんだ。
みんなが日本に来たのって」
『えっ?』
「何故か俺と颯太が日本から銀星王国へ転移して・・帰る時、たまたま近くにいた君達を巻き込んでしまった・・としたら」
『御姉様、ソレは違いますわっ!』
「幹太!?
アンタ何、バカな事いってんの!?」
彩佳とザレがハモる。
御互い、顔を見合わせ・・赤くし、またハモる。
「アンタも被害者でしょーがっ!!」
『御姉様も被害者なのですよっ!!』
「───・・・・」
俺達のやり取りを静かに聞いていたリャター夫人がポソリ。
『カンタさ~ん。
腕の時の悪い癖が出てるわよぉ』
『お姉さん・・』
「そうじゃな、事がデカすぎる。
全部自分が悪い・・なんちゅうのは、全部自分のおかげ───っちゅうくらい恥ずべき考えじゃて」
「・・幹太、少し頭を冷やそう」
みんなが、やや責める感じで・・慰めてくれる。
そうか・・そうだな・・。
「あ・・なら父さん、服屋に寄ってよ。
当座の彼女達と・・ほら、俺の家の服もほぼ全滅だからさ」
「そ、そうか・・そうだな・・!
イ○ンでいいか!?」
「そだね、ついでに色々いるし・・」




