114『ガチ勢とエンジョイ勢みたいな。』
やや、バツの悪そうな感じで朱に染まった頬をかく源太ちゃん。
「まだ頭がフラフラするし、たぶんそのウチにまた寝よろうがの。
木島ン家に居ったんは何となく分かる」
「お、御義父さん・・!
わ、私が分かりますか!?」
「源太爺ちゃん・・!」
「おうおう分かるよ。
仁一郎君、彩佳ちゃん」
父さんと源太ちゃんが泣いている。
周辺の火球を退かすと抱きあった。
俺も泣いていると・・山柄さんが引いてる。
ナゼに。
「いや、アタシもたまに引いてるわよ」
マジ?
『御姉様の家族は・・その、唯一無二ですわ!?』
ならその引きつった笑顔なに?
まあ、とにかく目出度い。
後は颯太だけだな。
言っても、魔力の流れに異常はない。
直に目覚めるだろう。
◆◆◆
「───という訳で、幹太に申し訳無い事をしつつ・・大凡の話は聞きました」
「はっはっはっ・・仁一郎君は頭が固いトコがあるからのう」
「最後の話は──トンでもナイ爆弾でしたが・・」
「じゃからっ!?」
真っ赤になった源太ちゃんに、はたかれた。
痛い。
「・・って、ちょっと待ってよ。
体だけじゃなくて心まで女なの!?」
「・・・・・・ぷいっ」
「ぷいっ、じゃない!」
彩佳に両手でガッシリ頭を掴まれ、正面に向かわされる。
うー・・。
精神の再構成のせいか──転移時から、自分でも不思議な程に自分の女体化をスンナリ受け入れていたんで、その辺の異常性を忘れてた。
女体化主人公達の心の葛藤みたいなんって、俺と颯太には、ほぼほぼ無かったからなあ・・。
「未だ生後数ヵ月でね?」
「訳分かんない事を言ってんじゃナイわよ!」
この辺、異世界組には詳しく言えないしな・・。
みんなの視線が俺と彩佳に集まる。
源太ちゃんからは 「お調子者め」 といった視線を。
父さんからは 「最初の失言もあるし自分がどうこう言えない」 といった視線を。
リャター夫人からは 「面白そうな事が始まったわぁ♡」 といった視線を。
ビタからは 「うぅ~」 といった視線を。
ザレからは・・乙女のカンとやらなのか 「私も聞きたい」 といった視線を。
「・・正直、自分でもよく分からん」
「・・・・」
「善人には、片っ端から・・ってトコはあるなあ」
ザレには・・女学園女生徒達がお風呂だナンだで、顔を赤くする俺をからかうシーンを見られているし、 ( てか、ザレが率先している気がするが ) ディッポファミリー傭兵団やウエスト傭兵団、その他の傭兵団に顔を赤くするシーンを見られている。
でも、ガチの告白をした事は・・ない。
とある女生徒には
「カンタ先生って純情なの? ビッチなの?」
とまで言われた。 ( ?? )
「・・何よ、ソレ」
「済まん」
男の時は彩佳一筋だった。
彩佳もソレは知っている筈。
──パンッパンッ!──
「十代男女の色恋もヒマな時には良いがな」
「山柄さん・・」
「事は、アッチで言う・・何だったか?
・・そうそう、『城破級』の話よ」
◆◆◆
「『城破級』」
そう呟いた俺に源太ちゃんと異世界組は険しい顔に、彩佳と父さんは 「?」 となる。
「『城破級』の一段下、『街破級』が、=『ゴ○ラ級』かな。
以前退治したのはハメが通用する上にデカい弱点属性がある『街破級』ほぼ最弱クラスだったんだけど、ソレですらそうとうに苦労したなあ」
「最弱とはいえ、ゴ○ラ級を退治ってどんだけなのよ・・」
「ぞ・・象より大きいのか?」
「象よりデカいってだけなら『村破級【ビッグボア】』が居るけど、颯太はソイツを御手玉みたいに投げ飛ばすよ」
「・・・・」「・・・・」
「【人花】の嬢ちゃんは自分の使命を知ってんのかい」
山柄さんの言葉を訳するとビタは当然とばかりに頷く。
『魔女に連なる者、【アルラウネ】を皆殺しにする事です!』
「ソレは本当の使命の前段階に過ぎん。
真の使命は『城破級【空の口】』討伐にある」
「【人狼】も、かのう?」
「・・と、御先祖様の本には書いてあるけどね。
【人花】と【人狼】には【空の口】によって、自分等の遺伝子を都合のイイように改造された種族が居るらしい」
「【レッサーハウンド】・・」
俺と颯太が転移してすぐ襲われた魔物、犬ゴリラだな。
『私にとっては【アルラウネ】・・?』
『みたいだな』
聞くところには、ビタの住む村に、突然人間の騎士団が来るようになったらしい。
族長と難しい話の末、ある日の晩の就寝中に荷物だけ渡され【アルラウネ】退治を命令されたそうだ。
「私ら【人土】は順番が逆で、【空の口】の手下たる【スライム】から生まれたが・・【空の口】討伐を使命としとる」
・・スゲえ、ファンタジーみたいだ。
勇者召喚まだ?




