112『今でもこの程度、全てを焼却させるチカラは有りますが小市民には違いありません。』
突然侵入してきたこの御婆さんは、木島さんの話によると昨日 ( 俺達にとっては数ヵ月前 ) ココに来て喚き散らし、警察沙汰寸前だったらしい。
「俺とこの二人は魔法使いですけど・・コッチの人間です」
「そんな馬鹿げた魔力がコッチの人間な訳───
・・う、嘘は言うとらんな」
「御婆さんは?
あちらの人間ではないんですか?」
「先祖はアッチの者じゃがの。
代を重ねて今は立派な地球人よ」
嘘はついてない。
でも、悪意は見えないが警戒心はバリバリだ。
「幹太君、この婆さん魔法使いなのかい?
昨日、この婆さんが何かやった後に源ちゃんが異世界へ行ったらしいんだぜ?
敵なんじゃあ───」
「戯けぇ!
この辺が世界と世界の境界線が薄いんで、向こうから『魔女』の手先が侵入してくるのを防ぐ『結界』を張っとったんじゃ!!」
魔女?
結界?
「・・・・。
木島さん、木島さんの見立てでは颯太と源太ちゃんはどのくらいまで大丈夫ですか?」
「え? あー・・さっき言った一週間くらい?」
「そうですか・・。
じゃあ今日はコレで失礼します。
御婆さん、コレから御時間よろしいですか?」
「・・・・。
よかろう・・。
ワタシもあんたらの話を聞きたいからね・・ちょっと待ってな」
言って、変なオブジェクトが沢山ある場所へ行く御婆さん。
昨日、御婆さんが来た時色々置いてった物らしい。
何かを始めようとして───
「オイ、ココに使ってた【核】はどうしたんだい!?」
「知らないって!?
昨日はアンタを含め、色々あって大変だったんだから!」
「・・ちっ!
貴重な【核】を・・!」
仕方無さそうに懐からなんか出して、何らかの魔法を使う御婆さん。
さっき言ってた結界魔法か?
結界魔法・・憧れはあるな。
魔力の流れは出来るだけ覚えとこう。
「あー・・俺も行きたいけど今日は結構重要な予約が何組かあるからなー」
木島さんがこの後の話し合いに参加したがる。
まあ、オタクなら心は動くだろうね。
「・・ふん、終わったぞ。
もう、ココの物を動かすんじゃ───」
『ぬあああああああああああッ!!?』
ビタが突然叫ぶ。
普段、幼女とは思えぬ冷静さでいる事が多いビタには珍しいな。
『あらあら!?
ビタさん、どうしたの!??』
『こ・・コレっ!?
何故、我が種族の秘宝が!?』
「な・・何じゃい、この小娘は・・!?」
「か、彼女は異世界人の一人で、ビタと言い・・『どうした、ビタ!?』
『お姉さん! コレ、私のです!
なんで人間が・・!?』
ザレが所有権を訴え、御婆さんが懐から出した【ソレ】は・・水晶のペンダントが絡まった木彫りの花。
「ビタが『私のだ』と、主張しているんですけど・・コレ、何ですか?」
「あ?
そんな小娘のモンな訳───
あ・・いや、まさか・・?
ソイツの事、異世界人っつったね。
ちょっと持たせてみな」
ビタが言う【秘宝】をビタに持たせると、ホンノリ光る。
「おお・・まさか【巫───」
「アレ?
水晶・・ペンダント・・木彫り・・。
これ、源太ちゃん持ってなかったっけ。
なんだっけ、花じゃなくて・・狼のやつ」
「あん?」
「颯太と源太爺ちゃんの荷物はあの馬鹿デカイ剣以外は持ってきて・・あ、コレね」
「おお・・【狼の核】!
しかも光って・・!
貴様等、一体何者なんじゃ・・!?」
「ソレは───」
──ぐう~──ぐう~──
・・彩佳とザレが恥ずかしがりながら、お腹を押さえている。
そういや、そろそろお昼か。
「話はどっか、飲食店で・・ああ、でも他人に聞かれたら不味い話も出るかあ」
「ふん、ソレなら良い店を知っとる」
◆◆◆
御婆さんに案内され着いた店はソコソコ大きな中華料理屋だった。
「裏口へまわれ。
流石に、寝よるモンを担いで入っては他の客に注目されよう」
御婆さんの指示を受け、父さんが車を裏にまわす。
独特なゲートを抜けた先は・・高級車ばかりが停車する駐車場だった。
ウチの車は五人家族がどんな目的にでも使えるような、ファミリー用ボックスカーなんでかなり浮く。
あ・・アッチにもボックスカーが在ったあ♡
「黒塗り、スモーク窓、凄い光沢・・何故かしら、『防弾』って言葉が浮かんだんだけど・・」
わ・・わぁー、格好いー・・っ♡
「安心せい。
ヤクザやマフィアは今日、一組しか居らん。
ドンパチは・・たぶん、無い」
わ・・わぁー・・。
顔を青くするコッチ組と違い、意味が分からない異世界組はキョトンとしている。
ええいっ。 ( 泣 )




