11『男の本心は分かります。』
「き、気持ちイイよ~!」
「御兄さん、俺・・恐いから・・。
もっとゆっくり動いて・・?」
───ギュッ!!
「うっ!?」
「そんな・・もっと速く・・!
あっ、あっ、ああっ!?
こんな激しく・・だ、駄目ェっ!?」
「何やってンでい、おめぇ等・・」
馬で移動開始。
乗馬経験なんて無いので、大学生ぐらいの御兄さんの後ろに乗せて貰う。
颯太は楽しめて何よりだが・・俺はどうにも駄目で、恐怖のあまり御兄さんの背中に強く抱きついた途端───暴走された。
「・・ご、ごめんね?」
「・・・・・・。
颯太は大変気持ち良かったそうで。
今度は貴方( の操る馬 )に、姉妹で乗せて貰ってイイですか?」
「そ、そんな!
今度はきっと君を満足させてみせるから!?」
「何やってンでい、おめぇ等・・」
◆◆◆
彼等が今日野営する予定だった地で、改めて自己紹介。
「俺ァ、ディッポ。
こいつ等ディッポファミリー傭兵団の頭だ」
「傭兵団・・。
だから、あの戦闘力と統率力だったんだ・・」
「幹太───姉ちゃん、傭兵って?」
「俺の知っている傭兵は、お金を貰って雇い主の敵をやっつける仕事・・かな?」
「大体間違ってねェゼ?
護衛中に襲ってくる奴を殺る。
指名手配された奴を殺る。
敵国の兵士を殺る。
丁度この国は戦争が終わったんで、今は行商をやってるがな!」
そして、ガッハッハッと笑い───目が鋭くなる。
さて・・俺達の事情はどう話すべきか。
「御姉チャンが『アキハラ カンタ』、
御嬢チャンが『アキハラ ソウタ』・・だったか。
『アキハラ』は家名か?
家名持ちの女二人が何でこんな所に?」
「・・え、え~っと・・。
・・家の・・家の修業? で?
7つの玉を・・あ、集め・・?」
・・よく考えたら、今まで人を騙すなんてした事無い人生だった。
( 彩佳に下心無いとか言ってた? 何のこと?? )
「玉───だァ・・??」
「ほ・・ほんとだよっ!?」
「・・じゃあ、何て名前の国に住んでた?」
「に、日本という島国です」
「ニホン・・聞かねェな・・。
で? コレからどうすンだ?」
コレから・・か。
魔物に襲われた。
俺の失態で颯太に迷惑をかけた。
襲ってきたとはいえ、生き物を殺した。
トラウマに成りそうな出来事の連続で、異世界に来て不安に思う自分と───
・・ナンだカンだ言って武術一家の末裔なのか、血が騒いでいる自分がいる。
生き物を殺した事も、心の負担になってない。
( 当然、俺も颯太も生き物を殺して喜ぶ趣味は無いからな? )
颯太を見れば・・俺の顔を見てニコッと笑う。
同じ考え、か。
「確かに御察しの通り、詳しく言えない事情があって旅に出る事になりました。
・・ですが、楽しくも有ります」
「うん! 僕も!」
「なので故郷へ帰る術は・・もう暫く旅を楽しみながら探そうかと・・!」
我ながら・・コチラを疑ってる初対面の相手にする話じゃないのは解ってる。
・・けど、この今の大怪我をしてでも『楽しい』って気持ちに嘘はつけない。 つきたくない。
「そうか・・。
・・・・・・。
どうでィ、一緒に来ねぇか?」
「えっ・・でも俺達、無一文で」
何で今の話の流れで・・と言いかけて、バッと胸元を隠してエロ親父達の方を見る。
──まさか身体で払えと!?
男だもん、下心があるに決まってる!




