表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第1章 出会い
8/41

開通

 翌朝起きると体調は大分良くなっておりました。


 「お早う、今日で、残りの部分、胴体と頭を全部やってしまうから。」


 ハルがこう言ったのを聞いた瞬間、おもいっきり体調が悪くなってしまいました。

 そのまま枕に顔を埋めていると、扉がノックされ、お母様が入って来られました。


 「体調はどう?」

 だいぶ心配をおかけしてしまったようで、心苦しいものがあります。


 「大分良くなりました。」私がそういうと、お母様は私の額に手をあて、熱が下がった事を確認され、安心されているご様子です。


 (今はいいのです。今は)心の中で何度叫んだかわかりません。


 「食事はどうするの?」と聞かれましたが、今後のことを思うととても食べる気になれなかったので、昨日と同じようにスープを運んでもらって、ベットで、それだけいただきました。


 スープを飲み終わり、少し横になっていると、ハルが「そろそろ始めようか?」と言ってきます。

 私に拒否権はありません。

 「お願いします。」と小さい声を出すのがやっとです。


 右わき腹にいきなり激痛が走ります。

 「痛い、痛い、痛い。」最近これしか言っていないような気がしますが、痛くてたまりません。

 次に背中が痛くなったかと思うと、その次は胸です。


 手足に比べ、胴体は面積が広いせいか、かなり時間がかかるようです。

 しかし、私にとっては、激痛に苦しむ時間が長引くだけです。


 やっと、終わったかと思ったのですが、ハルの「とりあえず、右側だけは終わったよ。」という言葉を聞いて、目の前が真っ暗になりそうでした。


 するとハルはそんな私の様子を気にもしない感じで、「これで、右側はマナが流れるようになったはずだから、試してごらん。」といってきます。


 正直痛くて、それどころではなかったのですが、下手に逆らって、見捨てられでもしたら、これまでの苦労が水の泡です。


 「寝たままでよいから、手を上にあげて。」

 「そしたら手を開いて、空気を握るつもりで、思いっきり握ってごらん。」


 最初、何をしているのか、わかりませんでしたが、実際に握ってみると、何かをつかんだ感じがします。

 それだけではなく、それが右の手のひらの中に入ってくるのも実感できます。

 そのまま腕の中を動いてきます。


 私が「えっ、えっ、」と困惑していると、「ハルはそれがマナだよ。きちんと感じて。」と言ってきました。

 確かに丸い何かが体の中を動いている様子がしっかり感じることができます。


 「そのまま足まで持っていって。」


 そう言われて、丸い何かに意識を集中して足先まで持っていきました。

 そこで、気を抜くと丸い物体は形が維持できなくなり、そのまま消えてなくなりました。


 正直私は「すごい!」と感動していました。

 マナを感じることができたなんて、なおかつそれを自分で操って体の中を動かすことができただなんで、本当に夢のようです。

 憧れの魔法使いに一歩近づけた感じです。


 そんな私をハルがじっと見ていることに気が付き、顔が赤くなりました。

 これは熱のせいです。誰が何と言おうと、そうです。浮かれていたわけでも、それをハルに見られて恥ずかしかったわけでもありません。


 「続きはどうする?」

 

 これだけの成果を見せられたら、別の意味で、断るという選択肢はありません。

 「お願いします。」と言うと、左半身に激痛が走ります。

 脇腹、背中、胸の順で痛くなってくるのは、さっきと同じです。


 終わった後で意識をなくすのも慣れたものです。

 ただ、気がつくとお医者様というパターンはあまり慣れたくありません。


 昼食の案内にメイドが来た際に返事がなかったので、部屋に入ると、私が意識を失っていたので、またしてもお医者様が呼ばれたそうです。

 お父様とお母様は本当に心配そうです。


 ハルや魔法のことが言えたらよいのでしょうが、私が自殺する未来など話せるはずもないので、仕方がありません。

 私はもう少しだからと心の中で謝るしかありませんでした。


 結局、昼食もスープだけとなりました。

 さて残すは頭だけですが、どう考えてもタダでは済みそうにありません。

 だたし、ここまで痛い思いをして、途中でやめることはしたくありませんし、ハルに下手なことを言って見捨てられても困ります。


 何としても魔法は覚えなくてはなりません。

 覚悟を決めて「お願いします。」と言うと、これまでとは比べものにならない痛み(頭痛)に襲われます。


 あまりの痛さに「痛い!」と叫ぶこともできません。

 どうやら頭の中は血管がたくさん通っているようで、かなりの時間がかかりました。

 途中、あまりの痛さに意識を失いかけましたが、ハルの「しっかりしろ!」「がんばれ!」との声でかろうじて起きていることができました。


 後で聞いたのですが、途中意識を失うと、いろいろ後遺症がでることがあるそうです。

 私がこれを聞いて「先にいっておいてよ!」と心の中で思いっきり突っ込んだのは、内緒です。


 この後は当然のごとく意識を失い、起きたら夜になっており、スープしか食べなかったのは昨日と全く同じでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ