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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第1章 出会い
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四肢

 ハルは何とも言えない笑みを浮かべて、私に「次は左足だよ。」といって来ました。

 私は片足だけでもあれだけ痛かったのに、両足などとても無理と思ったので、「無理、無理、絶対無理!」とハルに向けて手を振りながら、半分叫んでおりました。


 するとハルは、急に顔から表情を消し、何を口ずさみはじめました。

 両目が怪しく光ったかと思うと、私は意識を失いかけました。

 これは、と思った瞬間「待って!待って!」と今度は大声で叫んでおりました。


 既にハルの目は光っておりませんでしたが、ハルは明らかに私が何かを言うのを待っている感じだったので、少し考えて、「ここでは駄目という意味だったのよ。」と言いました。


 「ここで、動けなくなると困るので、私の部屋でお願いします。」

 

 私は口調まで変えてしまいました。

 それを聞いて、ハルはやっといつも笑顔を見せてくれました。

 内心はドキドキです。


 恐らく、ハルはあのとき私が出来ないと言えば、私を見捨てるつもりだったのでしょう。

 間違いなく、私は記憶を消され、未来視で見た様に虐められるだけの未来が待っていたに違いありません。


 痛い右足を引きずって、何とか、自分の部屋につくと、私はベットに横になりました。

 そして「お願いします。」と小さく言うと、左足に激痛が走りました。

 「痛い!痛い!痛い!」我慢できず、声が漏れます。


 涙も出てきました。

 そしてどうやら私は泣きながら、意識を失ってしまったようです。


 気が付くと、又しても家族とお医者様が周りにいました。

 昼食の時間になってメイドが呼びに来ても返事がなかったので、中に入ると、私がまたしても意識をなくしていたからお医者様が呼ばれたというわけです。


 やってしまいました。仕方がないので、「お父様、お母様、心配をおかけして申し訳ありません。」と謝ります。

 

 お父様は、「一体どうしたんだい?2度も倒れるなんて、何か心当たりはないのかい?」と優しく聞いてきます。


 その言葉を受けて、お母様が「もしかして、ここ2,3日花壇の周りで運動していたようだけど、そのせいでは?」と言ってきます。


 「ミシェル、まずは体が第一だから、無理はしてはいけないよ。体が安定するまで運動は禁止だ。いいね。」


 やはり、お父様は私のことを気にしてくださっている、それがわかってすごく嬉しいのですが、ハルが何と言うかです。

 気が付くと、ハルはベットの上にいて、頷いています。


 これを見て、「わかりました。心配をおかけして申し訳ありません。」と再度謝ります。

 食事はどうするかと聞かれましたが、ハルの表情を見ていると、とても食べる気になれなかったので、「申し訳ありませんが、このまま眠らせていただきます。」と言って、水だけいただきました。


 私がそれなりに元気になったのを確認して、皆は「ゆっくりお休み。」と声をかけながら部屋を出ていきました。


 さて残ったのはハルと私の2人だけです。

 ハルは当然のように、「次は両手だけとどうする?」と聞いてきます。

 もはや私に断るという選択肢は存在しません。


 右手にマナを注入してもらうと、これまた、痛くて痛くてたまりません。

 やっと終わったかと思うと、「次は左手だよ。」と同じことを言ってきます。

 本当に勘弁してもらいたかったのですが、仕方がありません。


 泣きながら左手を出します。

 マナが入ってくると、もう痛みで何も考えられません。

 終わっても、涙がとまらず、ロクに動くこともできません。


 ハルが「今日はこれくらいにしておこう。痛かったかい?」と聞いてきます。

 私は泣きながら頷くと、「でも、これでマナは手と足の中は十分動くようになったはずだから、落ち着いたら自分で確かめて御覧。」と言ってきます。


 ただ、その時の私は両手が痛いだけで、ほかのことを何も考えることができなかったので、頷くとまた意識をなくしておりました。

 次に目を覚ますと、夜でした。


 どうも熱を出していたようで、頭には濡れたタオルがおかれており、お医者様が脈をとっておられました。


 「気分はどうかね?」


 そう聞かれたので、私が軽く頷きながら「大丈夫です。」と答えました。


 「食事はどうしますか?」聞かれたのですが、あまり食欲はなかったので、スープだけベットの上でいただきました。


 私が食べ終わると、お医者様は「疲れているようだからが、ゆっくりお休み。」と言ってくれました。

 それを聞いて私は「今度は本当にゆっくり休めそうだわ。」と思いながら、目を閉じました。

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