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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第2章 準備
32/41

 ブランデンブルグ侯爵家を辞し、お母様と一緒に馬車に乗って帰ります。


 「『ミシェルが魔法を使えるようになったことはあまり知らせたくない』と言っていたと思いますが、どうして今日魔法を使ったのですか?」


 途中、お母様からいきなりそう聞かれました。

 私は正直夢中だったし、カノン様が可哀そうだったし、あと・・・そんなことが頭をよぎりましたが、うまく答えることができません。


 「でも、カノン様が・・・」といったきり、言葉をつなぐことができませんでした。


 「確かに今回はうまくいきました。しかし、侯爵家でも言ったように、いつもうまくいくとは限りません。うまくいかなかったとき、あなたに向けられる悪意が怖いのです。」


 「あなたはまだ子供です。それをうまくさばく能力があれば何の問題もありませんが、とてもできるとは思えません。自分のしたことに対処できる能力をもつということが責任をとるということです。それができて初めて何かをすることができるのです。」


 「わかりますか?あなたに目を治す能力があったとしてもそれだけでは足りないのです。目を治した結果起こりうる様々なことに対処できる能力があってはじめてそれをすることができるのです。」


 「それにあなたのような子供が魔法を使えば奇異の目で見られることも事実です。ブランデンブルグ侯爵家の皆様は信頼のおける方なので、約束は守ってくれるでしょうが、これからもこのようにうまくいくとは限りません。」

 

 「だから、お願いだから、せめて魔法学園に入学するまでは、外で魔法を使うのは控えてください。」


 お母様はから真摯な顔をして、そう言われて、私は心の底から反省するとともに、私のことを本当に考えてくれているお母様に感謝しながら、「はい。」ときちんと前を見て返事をすることができました。


 そんな私を見てお母様もほほえみます。そして、「ただ約束を破ったミシェルには罰を与えなくてはなりません。」と言ってこられました。


 何が言われるのか正直不安でなりませんでした。


 「1つ目は、毎日ブランデンブルグ侯爵家に言ってカノン様にマナを注入すること。せっかくモノが見えるようになったのに、それが又見えなくなるということはどんなにつらいことかわかりますね。」


 これはよくわかります。

 見えるようになってあれだけ喜んでいたカノン様が再び元の何も見えない状態になったらどんなにお辛いか。


 最初からダメだったのなら、あきらめもつきます。実際カノン様もあきらめておられたでしょうから。

 しかし、それが可能であることを知ってしまった今、実現できる方法があるのに、それができないとなれば、それは本当に大変な苦しみでしょう。


 「2つ目は、カノン様にマナの使い方をきちんと教えて、できるだけ早く御一人でマナを集めることができるよう導いてあげること。」


 「ミシェルが毎日お邪魔したのでは、向こうも気を遣うでしょうし、カノン様もあなたに負い目を持ったままになってしまいます。本当に相手のことを思うのなら、わかりますね?」


 「はい。」とこれも問題なく返事をすることができました。

 確かにそのとおりです。カノン様とはお友達になるのですから、いつまでも私に負い目をもっていてもらいたくありません。

 お友達とはあくまで対等な関係なのですから。


 「3つ目は、カノン様だけでなく、マリン様ともきちんと向き合うこと。あなたは基本的にカノン様を手助けするために行くわけですが、マリン様がカノン様を如何に大事に思っていらっしゃるかわかりますね。」


 「どうやら、それがもとでいろいろあったようですが、マリン様を避けるようなことをしてはなりません。マリン様はカノン様のことを大事にしておられ、心労がたまっておられたようですから、わかりますね。」


 「はい。」と答えましたが、正直これは今一自信がありません。

 如何せん、最初の印象が悪すぎました。

 ただ、最後にみせてくれた最上級の礼、あれは私に示してくれたということは、大丈夫の様な気がしないでもありません。


 「4つ目ですが、これは全く別のことになります。今度知り合いの方々と孤児院の慰問に行きます。それにミシェルも同行しなさい。」


 どういうことかと説明を求めると、どうやら貴族の奥様方で恵まれない子供たちへの救済策ということで、孤児院の慰問を年に数回行っているということでした。


 今までは我が家からはお母様だけが参加されておられましたが、それに私も参加しなさいということのようです。

 「困っている方のことを考えるのも貴族の大事な仕事です。」


 お母様からそういわれ、今度は何の問題もなく自信をもって「はい。」と答えることができました。


 「それと、やはりあなたを守るための護衛をだれか探しましょう。毎日侯爵家にお邪魔するとなると、誰かつけなくてはなりませんが、数日ならともなく、毎日となると人の都合がつきません。」最後にお母様は独り言をいうようにそうつぶやかれました。

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