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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第1章 出会い
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未来視

 とりあえず痩せるために努力することに異存はなかったので、ハルに何をするのか聞いてみました。


 「とりあえず、運動、体を動かすこと。」


 ハルは簡単に言ってくれました。

 しかし、これが難しいのです。私は基本的に走ることができません。足が体を支えきれないのか何だかわかりませんが、本当に膝が痛くなるのです。


 そういうと、ハルは「だったら、歩け!」と言ってきました。

 「ま、歩くことなら私にもできます。」と思って歩き始めて、花壇の周りを1周して帰ってきました。

 

 「いい汗をかいたわ~。」と言って私が腰を下ろそうとすると、ハルがいきなり「もう1週。」と言ってきました。


 とりあえず、もう一周すると、「もう1週。」という声がかかりました。

 花壇とは言っても仮にも伯爵家の花壇だから、それなりの大きさはあります。それを2週もしたのです。


 「ちょっと待って。」息を上がってきて、膝だけでなく、腰も痛くなってきました。

 「お願いだから休ませて~。」私は息もたえだえでハルに頼み込みました。


 するとハルは仕方がないなという感じで、羽を動かすと、足が軽くなったような気がしました。


 「何をしたの?」


 そう聞くと、ハルは「風の魔法を足にかけたのさ。」と言ってきました。

 足がすいすい動きます。これは便利です。こんなに早く歩いたのは生まれて初めてです。

 かなり最後はボロボロでしたが、何とかもう5周もできました。


 ハルも「最初はこんなものか。」という感じを私を見ています。

 いろいろ言い返したいことがあったが、息をするのもやっとで、何もいうことができません。


 そんなことをしているうちに、食事の時間になったので、食堂に行くことにすると、ハルが「食事はほどほどにしろよ。」と言ってきます。


 食事の時に「今日精霊を助けましたの。」と話をしてみたのですが、誰も信じてくれません。

 

 「それは蝶か何かを見間違えたのでしょう。精霊様は見ることができないといわれていますから。」とお母さまにも言われてしまいました。


 こう言われてしまえば、私は何も言うことができません。


 午後は本当はマナーのレッスンを受ける予定だったのですが、午前中の過度な運動のせいで、疲れきっておりましたので、ベットに入って横になっておりました。


 疲れていたせいか、どうもそのまま眠ってしまったようです。

 おそらく3時位だと思われたので、起きようとしますが、どうも体痛くて動きません。


 「これは何、もしかしてこれがハルの言っていた病気」と声を出したところで、後ろから「そんなわけないだろう。それは筋肉痛。」とハルが声をかけてきました。


 そして「いつまで寝てるの、午後も運動」と言ってきました。


 それを聞いてこんなに体痛いのに、運動などできるわけがないと思った私は首を横にふりました。


 すると「だったら精霊の加護はあげられないけどそれでも良いの?」と言ってきました。


 「それでも良い。だって、私が心臓の病気で死ぬといった時のハルの態度がおかしかった。どうも信用できない。」


 おそらく、体が痛くてやけになっていたのでしょう。最初情けない恰好を見ていたので、言葉遣いは結構ぞんざいでしたが、精霊が国王より偉いということは、誰もが知っていることで、本来精霊様に対してこのような不遜ないい方はできるはずもありません。


 「しまった。言い過ぎた。」と思っていると、ハルは悲しそうな顔をして、「今回だけは特別だよ。」と言って、私のこめかみ辺りに自分の顔を寄せます。


 「目を閉じて」と言われて目を閉じると、何かが頭に入ってくるのがわかります。


 とても多くの映像が見えます。私は混乱していると、「もうすぐだから。」というハルの声が聞こえます。

 目を凝らしていると、確かに今の私をそのまま大きくしたようなかなり太目の女性が見えてきました。


 「あれが、14歳の君」ハルが教えてくれます。

 制服を着ているので、どうやら貴族が12歳になったら通う「魔法学園」に通っているのでしょう。しかし、見る限り特に体に問題があるようには見えません。


 ところがしばらくすると、ピンク色の髪の毛をした女性が中心になって私を虐めてきます。

 はっきりとは聞こえませんが、「豚、白豚」と言っているようです。

 言葉の暴力だけでなく、モノを隠されたり、時には「グズグズするな!」と背中を小突かれたりしています。


 未来の私は特に反抗する気もないようで、されるがままにしています。

 どうも目がうつろです。

 そんなことを思っていると、未来の私は学園の屋上に来ています。


 悪い予感しかしません。「やめて!やめて!やめて!」力の限り叫びます。

 しかし、私がいくら叫んでも未来の私には何も聞こえないようです。

 結局そのまま、屋上から身を投げてしまいました。


 自分の落ちていく後ろ姿を見つめていると、「私はこうやって死ぬんだ。」という意識が私を支配します。

 あまりの衝撃に、私はそのまま意識をなくしてしまいました。

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