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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第2章 準備
21/41

匂い

 それからは大変でした。

 戸惑うヨハンにかなり無理を言って、先ほどの場所にもどり、奴隷商人を探し、獣人の女の子を買う手続きをしました。

 

 最初提示された代金はとても高かったのですが、ヨハンが交渉をしてくれた結果、なんと最初の半分程度になり、手持ちのお金で買えるようになりました。

 そのあとは、奴隷の継承の手続きです。


 見たことない機械に血かマナを入れるようにいわれ、迷うことなくマナを注入したわけですが、私の様な子供がマナを使えることに驚かれたりいろいろありました。


 獣人の女の子の名前はサリーと言いました。歳は私と同じ8歳ということでした。

 何でも、元々はそれなりのところのお嬢様だったらしいのですが、政争にまけてどうのこうのと言っておりました。


 獣人は確かに差別されておりますが、中には貴族の位をもっておれれる方もおられます。

 これは、獣人が辺境で生活することが多いがゆえに、国の防衛という観点からその土地の有力者に男爵なり、子爵の位を与え、取り込むという意味があったためと聞いたことがあります。


 あと、臭いがかなりひどかったので、馬車に乗せるかどうか正直迷いましたが、乗せなければ連れて帰ることはできません。

 いくら奴隷に対してでも、くさいからと顔をそむけるようなことはしたくありません。

 仕方がないので、窓だけは全開にして急いで家につれて帰りました。

 

 サリーを家に連れて帰ると、メイド長が思いっきり顔をしかめております。

 そのまま風呂場に連行されていきました。


 私が帰った時に、お母様は既に帰っていらっしゃいました。

 メイドを雇いに行ったはずなのに、奴隷を買ってきたことについてかなり驚かれております。

 

 そして、「これはどういうことですか?」と聞かれたので、私は、サリーが馬車の前に飛び出してきて、引かれそうになったことや、鞭で打たれていてかわいそうだったことなどを話ました。

 そして、「困っている者を助けることこそが貴族のすべきこと。貴族の矜持だと思いました。」と胸を張って答えました。


 それを聞いたお母様は「確かに良いことをしたのでしょう。ですが、そのためにヨハンにかなり無理をささせたことについてどう思いますか?」と聞いてきました。

 どうやら私がかなりヨハンに無理を言ったことをは既にお耳に入っているようです。


 「でも、サリーがあまりに・・・」と言うと、では、「メイドを雇うといって、お金をもらって奴隷を買ってきたのはどう思いますか?結果的に嘘をついたことになりませんか?それは貴族としてどうなのですか?」と聞かれてました。


 これを聞いて、私は自分のしたことの意味を初めて理解し、自分でも顔が青くなっていくのがわかりました。

 そして、かろうじて「お母様、申し訳ありませんでした。」と小さい声で謝ることができました。


 それを見て、お母様を私を抱きしめると、「今回のことを全面的に非難しているわけではありません。ただ、あまりにやり方が稚拙でした。」とおっしゃいました。

 

 そして、「もし先ほどの獣人に同情したのなら、その場で買わずとも私たちに相談してからという方法もあったはずです。」と続けます。


 「それに、ヨハンともその方向で話をすれば、彼は悪いようにはしなかったはずです。」

 「売約済にするなど、奴隷商人といろいろなやりあってくれたことでしょう。そうすれば、とりあえずあの獣人がひどいことをされることはなかったでしょう。」


 「ミシェルわかりますか?あなたは『貴族の矜持』という言葉を簡単に使いましたが、それほど簡単なものではないのです。」


 そう言われて私は泣きながらお母様に謝っておりました。

 そうしているとサリーが身体中を洗われて、新しい服を着せられ、やってきました。

 さっきまでサリーには恰好良いところだけを見せていたので、泣き顔は見せたくありません。


 かなり念入りに洗ってもらったのでしょうが、長いこと不潔な環境におかれていたせいか、完全にきれいになることはできなかったようで、まだ少し独特の臭いがします。

 しかし、我慢できないほどではありません。


 するとお母様は、すこし席を外され、何かをもってきました。

 そして、「これを」とサリーの前に差し出しました。

 金木犀のポプリでした。


 丁度咲き終わったばかりの金木犀を使ってお母様がおつくりになったポプリです。金木犀の独特のにおいが漂います。


 「うちに来られるお客様の中には、獣人独特の臭いをあまり好まない方もおられます。清潔にするのはもちろんですが、これを身に着けておきなさい。そしてこの匂いをあなたの目印としてください。」


 「これから、あなたはミシェルに仕えるわけですが、これを身に着けていれば、ミシェルにもあなたがどこにいるかわかるでしょう。しっかり頑張ってください。」

 

 サリーは臭いのことを言われてせいか、少し顔を赤くしておりましたが、ポプリをもらったのがうれしかったのか、顔を輝かせながら「はい。」と元気に答えておりました。

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