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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第2章 準備
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獣人

 今日は私付きのメイドを購入するために執事のヨハンと一緒にお出かけです。

 ハルから、貴族だけでなく、私の手足として動いてくれるものを見つけるておくように言われたので、メイドを専門に紹介している商会に向かっているところです。


 これまでは、特に親戚筋とか、知り合いの貴族の紹介でメイドを雇っていたのですが、急な話で適当な者が見つかりませんでした。

 かといって三年間しかないので、早い時期に見つけて教育なりしておかないといろいろ面倒なことになりそうです。


 そこで、とりあえず1名だけでも確保しておいて、あとで、誰かから紹介してもらえる人がいれば、その者も私付きとして雇うということになりました。


 正式なお出かけなので、我が家の家紋の入った馬車に乗ってのおでかけです。御者の脇には、護衛として普段守衛をしてもらっているアーノルドがついております。


 当初はお母様もご一緒に行くはずだったのですが、急きょご友人の方からお呼ばれが入ってしまい行けなくなってしまいました。

 そのため、特別に私一人で選んで良いといわれたので、うれしくてたまりません。


 これから魔法学園にも一緒に行ってもらうことになる私の味方、どんな人を選んだら良いのか考えただけでワクワクしてきます。

 

 年は私と同じ位が良いのか、でも守ってもらうには少し位上の方が良いか、どんな技能を持っている者を選ぶのか、いろいろな考えが頭をよぎって全然考えがまとまりません。


 そんなことを考えていると、ギーという大きな音をだして、馬車に急に止まりました。思わず体が前に投げ出されます。

 ヨハンは何事かと私をかばいながら前を見ます。


 どうやら、誰かが馬車の前に飛び出た様子です。「もし引いてしまったら・・・」顔が青くなっていくのが自分でもわかります。

 ヨハンの静止もきかず、おもわず馬車から出てしまいました。


 すると、そこには私と同じくらいの女の子が転がって鞭で打たれておりました。

 「なんてひどいことを」と思うと同時にその女の子から異臭が漂ってきました。

 そこで気が付いたのですが、どうやらその子は獣人の様です。


 獣人は基本的に辺境に住んでおります。確かに体力的には人間より優れているのですが、基本的に魔法が使えないことがあり、人間より一段下に見られております(ま、人間でも使えない人の方が多いのですが)。

 また、一目でわかる人間と違う容姿に差別の対象となりがちですが、最大の理由はその獣臭とでもいうべき、その独特の体臭にありました。


 私は貴族のたしなみとして、獣人も差別してはいけないと教えられておりましたが、この臭いにはやはりおもわず顔をしかめてしまいました。


 「奴隷ですね。」ヨハンが横から声をかけてきました。

 「おそらく、逃げてきたところを捕まったのでしょう。」

 

 アーノルドが急に止まったことを詫びながら、幸いぶつからなかったことを報告してくれました。

 奴隷商人らしき人が、その子を殴りながら、こちらが貴族だとわかったので、頭を下げてきます。

 

 その子と目があいます。

 手を顔の前に持ってきて、何か、言っているようです。何を言っているのかわかりませんが、どうやら助けてくれと頼んでいるようです。


 確かに今、お金はあります。しかしこれはメイドを雇うためのお金です。

 それに魔法の使えない獣人を魔法学園に連れていけば、それだけで、いろいろ問題になりそうです。


 「さ、お嬢様参りましょう。」

 ヨハンに言われて馬車に乗り込みます。


 馬車が走りだします。

 その時、心の中で、「私には仕方のないこと、私には関係のないこと、私にはどうしようもないこと。」という言葉をずっと繰り返しておりました。


 しかし、その時、「貴族の矜持」という言葉が頭をかすめました。

 どう考えてもあの子はこれからひどい目にあうでしょう。

 今あの子を見捨てることが私にとってすべきことなのでしょうか。私は今彼女を助けることができる。その能力も機会もある。


 確かに彼女だけを助けてどうなるというのでしょう。

 ほかにも奴隷はたくさんいます。もっとひどいことをされている人もいるでしょう。


 しかし、そういった人たちを私は助ける力はない。これは私にはどうしようもないこと。

 しかし、彼女は違う、彼女だけなら、私は助けることができる。

 

 そうしたら、思わず大きな声で「止まって!」と叫んでおりました。

 そして、驚くヨハンに「先ほどの奴隷の獣人を買います。馬車を戻して。」と言っておりました。

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