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伯爵令嬢は精霊の加護を受けることができるか?  作者: 江川 凛
第1章 出会い
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邂逅

 私の名はミシェル・フォン・アダムズ・グーテンベルグ、今年8歳になります。

 お父様のグーテンベルグ伯爵はとてもお優しくて、お母様はとてもお綺麗な方で、2人いる兄も私を大切にしてくれております。


 皆領民からも慕われているだけでなく、かなり見事が運営を行っているようです。

 おかげで悪い噂を全くきかないだけでなく、自分で言うのもなんですが、かなり豊かな生活を送らせてもらっております。

 

 蝶よ花よとそだてられ、毎日好きなものを好きなだけ食べた結果、すこし体は丸みをおびておりますが、家族はそんな私に「とても可愛い。」と毎日声をかけてくれます。

 私はとても幸せでした。


 そして、これからもこの幸せな生活はずっと続くものだと思っておりました。あの日、あの精霊に会うまでは。

 私たちの国では精霊様はとても尊いものだとみなされております。

 それは精霊には不思議な力があるからであり、精霊の加護を得たものは一生幸せに暮らすことができると信じられておりました。


 ところが、あの精霊は私のそうした思い違いを根底からいろいろ覆してくださいました。

 あの日、私はいつものように朝食を食べ終えると、そのまま庭にでて花を愛でておりました。

 正確にはお母さまの花となるわけですが、とても美しい花々を毎朝見ることが私の楽しみの一つでした。


 その日も、いつものように花を見ていると、「誰か助けて~」というか細い声が聞こえてまいりました。

 誰かが入りこめるようなところではありません。

 それに全く聞いたこともない声です。

 これが噂に聞く「不審者」というものかと、あたりを警戒すると、大きい虫のようなものが蜘蛛の巣にからまっておりました。


 ところが不思議です。どうもこの虫らしきものが半透明というか、背景が透き通って見えるのです。

 それにどうやら先ほどの声を発していたのもこの虫らしきものの様子。

 「これはいったいなんなのでしょう。」と思いながら、それを見ていると、いきなり「僕が見えるのかい、だったら助けてくれよ。」といきなり話かけられました。


 「あなたは誰?」と聞くと「僕は精霊のハル。僕が見えるのなら早く僕を助けてと言ってきます。」

 精霊は尊いと聞いていた私はこんな蜘蛛の巣にひっかるドジな精霊がいるのかというのが本当の気持ちです。

 だからどうもいまいち信用できませんでした。


 そこで思いついたのが、本当の精霊なら精霊の加護を与えることができるはずということです。

 そこで、「だったら私に精霊の加護を頂戴。そうしたら助けてあげる。」と取引を申し込んでおりました。

 ハルはしばらく考えていましたが、蜘蛛が近寄ってくるのを見ると、真っ青は顔をして、「あげる~。精霊の加護でもなんでもあげるから、早く僕を助けて~。」と叫びました。


 少しかわいそうになったので、蜘蛛の巣からハルを助けてあげました。

 するとハルはいかにもひどい目にあったという感じで、羽から蜘蛛の巣をとりはらっています。

 愚痴とも独り言ともつかない中でハルが言っていたのは、どうも精霊は羽を使って魔法をつかうということでした。


 ところが、今回羽が真っ先に蜘蛛の巣に絡まってしまったので、何もできなくなってしまったとぼやいておりました。

 私は彼が身づくろいをする様子を面白そうに見ているのに気が付いたのか、急にとってつけたように、私の方を向くと、腰に手を当てて恰好をつけ始めました。


 そして、「そもそも、君は精霊の加護がどんなものか知っているのかい?」と聞いてきました。

 私は「私を幸福にしてくれるものでしょう。」とさも当然のように答えると、ハルは頭を抱えて、「完全に誤解している。精霊の加護はそれだけの人徳というか徳のある人に与えるものであって、誰にでも与えられるものではない。」と断言します。


 「しかし、くれるといったよね。」と言うと、ハルは本当に困ったような顔をして、「精霊が約束を守らないということはあり得ない。だから加護はあげる。しかし、そのためには、まず君にそれにふさわしい人になってもらわないと困る。」と言ってきました。

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