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プロローグ
いつか見た夢。森の中、少女が湖の周辺を歩いている。薄着で、どこか色気があって、こちらを見て微笑む。そのうち辺りは暗くなり、その少女の顔は崩れ落ちて魔の者へと変貌した。少女だけではなかった。森全体が、世界全体が狂っていく。
瞬間、目が覚めた。手足が上手く動かず骨をギシリと鳴らし無理やり矯正する。起き上がり、バキバキと肩や背中の骨を鳴らす。普段よりもずっと体が重く感じた。目は微睡み、再び暗黒の世界へと投じられるかのように思えたが、顔を振り目をしっかりと開けた。
「また……あの夢」
最初に観たのはいつだっただろう。いつかは忘れてしまったが夢の内容はよく憶えている。だが、いつの間にか忘れてしまう。夢とは儚いものだ。
少年はベッドから降り、寝ぼけながらもドアノブに手を当てた。
ーー決して忘れてはいけない。
脳裏にその言葉が焼き付く。何故、誰が、何のために。少年にはわからない。ただこの夢に、何か重大な事があるのだけはわかった。
そして、新たな伝説の幕開けでもあった。