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009 2-02 ID Interval Days. ティータイム

 今更ですが、この作品はフィクションで実在する人物、企業、宗教などとは一切関係ありません。…こんなんでいいんですかね?

タテのヒント.6

 2112年9月3日マツシバにて発売された猫型ドローンの名前


 そのヒントを見て、目の前に浮かぶ複数の空白の内、五個にその名前を入力していく駆。

 今、駆がしているのは、いわゆるクロスワードパズルなわけだが、立体映像で表示されているこれは縦横に加えて奥まである。

 最近流行りの立体クロスワードパズルである。


(猫型ロボットねぇ)

 駆は先程の答えについて思案した。

 一世紀前の人たちは未来にこういう希望を持っていたのだろうか。例えば気軽に空を飛んだり、例えば遠くの場所に一瞬で行けたり。

 だが生憎と、このアニメの技術はほとんど実現していない。タケコなんたら然り、どこでもなんたら然り。

 唯一実現しているのはこの猫型ロボットそのものだけではなかろうか。

 マツシバという会社からそのロボットの誕生日に発売された同型のドローンは老若男女問わず結構売れたらしい。

 最も、駆はその時それどころではなかった。

身体を動かすのもやっとだったあの頃は――


「おっと、次次」


 長く物思いにのめり込んでいたようだ。かなりの時間がすぎている。

 ここ、D地区のとある一画、アパート『桃中家荘』の二階の一室。現在の住居であるそこで駆はくつろいでいる。


「ん?」


 室外用のセンサーが音もなく反応したのに気付き、音声でカメラを操作。

 外出している同居人にして兄姉の帰宅かと思ったがそうではなかった。

 右端に『2115/6/5/11:23』と表示されている映像には、少女とそれに付き添う少年の姿が見て取れる。


「望美と、……護人くん?」


 少女の名前は普通に口に出来たのに、少年の名前の時は言い淀んだように感じられたのは気のせいか?


「また、来たんだ」

 その言葉に悪意や敵意は無いことを一応表記しておく。なぜなら駆の顔がわずかにほころんだからだ


「御免下さい」


 鈴の音を転がしたような澄んだ望美の声が駆の耳を震わせる。

 初めて聞いたときは聞き惚れたその声も最近になってようやく聞き慣れたものだ。


「はーい。少し待って」

と言いつつ、クロスワードパズルを中断して扉を開ける。


「こんにちは」

「こんにちは。お邪魔してもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ」


 駆の言葉に頷き、部屋へと入る望美。その後に護人がつづく。


「ま、護人くんもよく来たね」

「お嬢様の付き添いだ」


 護人のやや高いハスキーボイスが駆の言葉に答える。

 わずかに目が合ったかと思ったらすぐに顔を伏せた駆を見て、護人は一つため息を吐く。


(嫌われたものだ…)

 好感を持たれている印象を護人は受けることが出来ない。

 近づけば離れ、話し掛ければ目に見えて動揺する。先程のように目が合えばすぐに視線をそらすなど、とてもではないが好かれているとは思えない護人であった。


 一方、駆は護人と目を合わせられない。


(綺麗だな…)

 望美もなかなかの美人ではあるが、護人の方が綺麗だと、駆はそう思う。

 この評価は二人に対して極めて失礼なことであることは自覚はしている。だがこの美丈夫の顔を見続ければ頬は紅潮し、心臓が高鳴り、物事をまともに考えられなくなるのが現状だ。

 男性に対してこんな感情を持つ自分に嫌気を感じる駆であった。


「駆クン。進と、あとついでに歩は?」

(歩、ついでなんだ…)

 望美の言葉に苦笑する駆。


「二人なら一緒に出かけてて、そろそろ戻って――」

「ふ、二人一緒ですって!?なぜ止めなかったのです!?」

(なぜ止める必要があるんだろう)


 望美の発言に頭を真剣に抱えたくなった。そもそも進と歩は兄妹である。望美が思うようなことにはまずなるまい。


「お嬢様、落ち着いて下さい」

「私は落ち着いています!」

 護人の諫める言葉もあまり効果が無いようだ。


「「ただいまー」」


 タイミングを見計らったかのように進と歩が帰ってきた。そのタイミングが良いか悪いか別として。


「お、おかえり」

 帰宅した兄姉を駆が迎える。頬がわずかに引きつっている気がするが。


「はーい、おみやげのドーナッツ――あれ?望美と護人じゃん。久しぶり」

「お、お久しぶりです。どこに行ってたんですか?」

「ん?どこでもいいジャン」

「よくありません!」

「何怒ってんの?」

「怒ってなんかいません!」

「ねぇー、望美ぅー。何しに来たのー?」

「歩、あなたには関係な――て、なぜ進と腕を組んでるんですか!離れなさい!私だって組みたいのに!」

「く、組みたいのか…」

「えー、イイじゃん。兄妹なんだから。ねぇー、『お兄ちゃん』♪」

「お前、気色悪いこというな」

 事実、進と駆は鳥肌が立っていた。


 いつまでも続くかと思える、この不毛な言い争いを止めたのは望美の従者たる護人の


 ――コホン


咳払い一つだった。

 絶妙なタイミングでなされたソレに三人は会話を止めて護人に視線を向ける。


「進、歩。お邪魔しております。お茶を入れさせていただきたいのですがよろしいですか?」


 恭しく頭を下げ、にこやかな笑みを浮かべる護人に、頷く三人。

 望美は自らの失態を恥じて照れ隠しに咳を一つ、歩は組んでいた腕を離す。

 進は解放された腕をほぐしながら、望美は何を怒っていたのか思案するも2秒で断念。

 それにさっき腕を組みたいとかナントカ言っていたが、聞き間違いか、或いは歩に対する対抗心からか…。こちらは3秒程熟考するもやはり断念。


「あ、護人くん!僕がやるよ」

 キッチンに向かった護人を追って駆もその後に続いた。



勝手に好評?誤変換シリーズ!…○ではあるが、×では有賀…○こというな、×呼というな――それはさて置き、なにやらBL臭が漂ってきてますが、いったいどうなることやら…。

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