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008 2-01 ID Interval Days. 姫君と従者

新キャラ登場です!…しかし、短いです。それと22世紀の日常とやらを書きそびれました!(汗)

「へへへ、こりゃ上玉だ。」


 男たちはツイていた。ここしばらく獲物と呼べる相手もおらず、飢えていた。

 しかし、今日の獲物は最高だ。

 一人は少女で、亜麻色の髪を肩にかかる程度の長さに揃え、整った顔立ちをしている。

 青色のレースをあしらった白のシルクのワンピースを着こなすその身なりと自然と溢れる気品から、どこぞの企業の令嬢の可能性が高い。

 もう一人は黒の上等なスーツを身に纏い、その身のこなしからおそらく少女の護衛だろう。手に傘を提げているのは解せないが。

 傍らに立つ少女より長い黒髪をうなじ辺りで無造作に縛り、その顔はどこか中性的な印象を与える。少年と呼ぶには大人びていて、青年と呼ぶには少し幼い。

 この二人が並ぶ姿はなかなか絵になった。ただし場所がパーティ会場ならばの話だが。

 ここD地区でその格好は笑ってしまうほど浮いている。

 二人とも身ぐるみ剥いでどこぞのマフィアか人体売買業者にでも売り付ければいい金になる。無論その前に散々楽しむが。少女はもちろんのこと、少年の方も悪くない。

 男たちは自らの皮算用に狂喜した。


「まあ、久しぶりの“カツアゲ”ですね、護人(マモル)?」


 少女はツイていた。久しぶりに来た、ここD地区で早速“カツアゲ”されているのだ。それに最近、となりにいる護衛である護人の頑張りのせいで、こうやって話し掛けられることもめっきり減った。


「喜んでいる場合ではありません、望美(ノゾム)お嬢様。」


 少年、護人はツイていなかった。自らの主人たる少女のお忍びに付き添ってここへ来るようになって2ヵ月になる。最初はこうやって話し掛けられることも多かったが、そのたびに退け、いつしかちょっかいをかけられることが無くなった。

 主人としては大変つまらなさそうだったが、護衛としては万々歳だ。

 今日も今日とて安全無事に“彼ら”のもとに行く予定だったのだが…。


「やれやれ……。」


 少年は頭を振りつつ自らの主人の前に出、持っていた傘の柄を掴んだ。


「おいおい、そんなモンでどーするつもりなんだい?」


 男たちは嘲り笑いながら各々の手に持つ拳銃を構えた。


「こっちには銃があるんだぜ?」


 護人はこの不埒者たちを心底哀れんだ。たかだか銃を持ったぐらいで勝利を確信したことを。護人という死神に会ってしまったことを。

 そして何より、彼、と言うよりその背後にいる少女――望美に銃を向けてしまったことを。


「護人。懲らしめてあげなさい。」

「仰せのままに。」


 望美の言葉に、護人が持つ傘――に仕込んだ刀が答えた。

 抜き放たれた刀は一閃のもとに眼前の男の腕を斬り落とした。


「へ……?」


 あまりにも鮮やかな斬れ味に男は最初、何をされたかわからなかった。

――だが、次の瞬間


「ぎゃああああ!?」


斬られた自分の右腕を押さえ、どうしようもない悲鳴を上げた。


「喚くな。医者に看せればまだくっつくぞ。或いはこれを機に義肢に取り替えてはどうだ?」


 加害者である少年はとくに悪びれた様子もなく、そう言い放った。

 手にした細身の直刀には血が一滴も付いておらず、また斬れ味が落ちている風でもない。

 仕込み刀にこんな斬れ味と強度があるものかと、刀を知る者は思うやも知れぬが、それは一世紀以上も前の話だ。

「テ単合金」なる物を用いて作られた、近代名工の技術の結晶たるこの『ミカド・グループ』製

「レイザー・エッジ」ならばこの程度のことは造作もない。


「さて、少し痛い目を見てもらおう。」


 刀を手に提げ、歩み近づく漆黒の護衛を見て、男たちはようやく気付いた。


 ――自分たちはツイていなかったことに。


次回更新は、やっぱり来週の火曜日を予定してます。次回こそ22世紀の日常を書きます!

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