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007 1-07 SR Sun Rise again.

『SR』編やっとこ完結!本来はもっと短くする予定だったんですけどね(苦笑)


 ポーーン。


 5階 エレベーターホール。

 間抜けな音を上げ、エレベーターの扉が開いた。

 そこから周囲を警戒しながら一人の少年が顔を出した。――進である。

 その後を少女が続く。――歩である。


 「異常無し、だな。」

 「そうみたいだねー。」


 進の言葉に歩も同意する。

 事実、静かであった。――否、二人の発達した聴覚がこことは別の場所で銃撃戦が行われている音を聞き取っていた。


 おそらく、標的を無差別に設定されたドローンが警備員と戦闘を行っているのだろう。

 どうやら見事に時間を稼げているようだ。


 「よし、急ぐか。」

 「ん、そだね。」


 進の言葉に、やはり歩も同意した。


 エレベーターホールを抜け、廊下をひた走る。

 やがて二人はその突き当たりにある、窓を発見。それに向かって歩は疾走しつつ、『紅風・改』の残弾…合計9発全て撃ち放った。

 防弾の強化ガラスとはいえ、一点集中で撃ち込まれてはどうしようもない。ガラスは甲高い音を立てて砕け散る――かに思えた。


 「あ、あり?」


 ガラスには罅が入り今にも割れそうだが、割れてはいない。

 「げー。」

 「任せろ。」

 最終的には銃を投げ付けようか考えていた歩を進が遮る。

 進はナイフを抜き柄のスイッチを押すと、窓に向かって投げ付けた。

 それは歩が撃ち込んだ場所と寸分違わずに刺さり、次の瞬間には


 ガシャン!


と音を立てて、今度こそ砕け散った。


 そして二人はその開いた、五階の窓から飛び降りた。



 人通りの少ない、深夜のオフィス街。薄暗い道に二つの人影が舞い降りた。

 進は着地の瞬間、転がって衝撃を上手く吸収する。多少の痛みがあるが、まあ問題はないだろう。

 一方、歩は両脚だけでなく両手も使って着地。義肢を駆動させ、衝撃を緩和する。


 「………。」


 進は、歩の足元にできてしまったクレーターを見て、なにやら複雑な顔をした。


 歩の名誉のために言っておくが、これは仕方のないことである。身体の大半を義体にしていて標準より重い彼女が、五階の高さから飛び降りたのだ。当然と言えば当然である。

 「お、あったあった。」

 着地の際落とした自分の銃と、ついでに進のナイフを見つけた歩が嬉しそうに近寄ってきた。

 ――進の不躾な視線には気付かなかったようだ。


 歩が進にナイフを渡したところで、目の前の通りに一台のバンが急停止した。

 そして後部座席のドアが自動で開いたのを見て、二人は急いで中に乗り込む。


 「お客さん、駆け込み乗車はお止め下さい。」


 運転席に座っている少年が冗談めかしてそう言った。

 優しそうなぱっちりとした黒い瞳に同じ色の髪を中途半端な長さにしている。

 二人の弟、駆である。


 「えー、良いじゃん、駆ゥ。」

 「ケチ言うな、駆。」


 自分たちの弟に冗談っぽい文句を言いつつ、二人はゴーグルを外す。

 久々の外気にさらされた目元は、兄弟、それも三つ子と言うだけあって、なるほどよく似ている。


 「えーと、首尾は?」

 車を走らせつつ、駆は兄姉に問い掛けた。

 「駆の遅効性ウィルスは、バックアップデータにちゃんと流しといたよ。」

 「ん、これでデータの復元は不可能と。」

 歩は駆の言葉を聞きつつ、座席に体重を預けた。

 一方、進は

 「まあまあ。」

と、言いつつ懐にしまっていたデータディスクを渡す。――二枚とも。

 「よし、後はこれを依頼者(クライアント)に渡すだけ――て、ちょっと待って!?」

 「あ、やべ。」

 「ねえ、何で二枚あるの!?なに余計な物まで持ってきてるの!?」

 「いやー、ちょっと小遣い稼ぎをしようかと――」

 「あー!私には万引きするなとか言ってたくせにー!」

 「まあ、待て――」

 「警報が鳴ったのは、もしかして……」

 「それは絶対関係ない。」

 「いやいや、ひょっとしたら…」

 「駆、適当なことを言うな!?あと歩!空っぽの拳銃を持って何する気だ!?」

 「そう…。今日私の服がボロボロになったのも、エアダクトを延々上り続けたのも、私の身体(主に胸元)が成長しないのも…、」

 「待て、歩!?後ろ二つは明らかに関係無いぞ!?それにお前の胸がペッタンコなのは――」

 「キル・オア・ダァァァイッ!!」

 「ぎゃぁぁぁぁっ!?生存ルート無ッシングゥゥゥ!?」

 後部座席ではしゃぐ(暴れる)兄姉を尻目に駆は車を一路、依頼者に指定された場所に向けた。


 「………。」


 警報が鳴ったのは、実は自分がよそ見した際、眠らせた警備員を他の警備員によって発見されたから、ということは生涯の秘密にしようとおこうと心に誓う駆であった。


 ――見れば、朝日がゆっくりと昇り始めていた。


 ***

             『はぁ〜い、みんなグッモ〜ニング。ウィリアム・斉藤のウェブ・ラジオの時間ヨ。

六月四日もイイ一日になるかしら?

そーそー、聞いた?なーんかC地区で銃声がしたんだって。

テロかしら、恐いわねぇ。

ワタシみたいなか弱いオ・ト・メは夜中出歩いちゃダメよ?それじゃ早速最初のお手紙(メール)紹介するわね。

ラジオネーム『Joyful Joker』さん。もう常連サンね。えーと、『今日初めてデカイ仕事を任されました。失敗しないか緊張でドキドキしてます。なので自分に勇気が湧くように『FF』のセカンドシングルの『Sun Rise again』をリクエストします。』だって。わかるわ、その気持ち…。

 ヨッシャァ、任せろォ!!勇気だけじゃなくて元気とかも一緒に湧きなさぁい!それじゃあ『FF』で』



 『Sun Rise again』




次のお話は、22世紀の日常というか、事件と事件の間みたいのを書きます。ご意見・御感想お待ちしてます。――次回は来週の火曜日あたりを目指してます。

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